日本での販売台数を非公開としていたテスラ。しかしひょんな出来事から、これまでの累計販売台数が明らかになってしまいました。

先駆者として古くからEV世界市場を牽引してきたテスラは、日本でどれくらい売れているのでしょうか。

またそのテスラも、中国BYDの猛追でついに世界シェア2位に転落。目まぐるしく変わるEV事情の今後はどうなるのでしょうか。

テスラは日本でどれくらい売れている?

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テスラは、実用的な電気自動車(EV)を世界に先駆けて市販化したアメリカのEVメーカーです。その創業者でありCEOのイーロン・マスク氏は、火星へのロケット打ち上げやTwitter買収などで話題の人物であり、いまや知らない人はいないでしょう。しかし、そのテスラの車が日本でどれくらい売れているかは、あまり知られていません。

輸入車の販売台数は日本自動車輸入組合によって管理されているものの、テスラは「その他」にまとめて分類されており、これまで正確な販売台数は不明でした。しかし、2022年3月に国土交通省に届け出たシートベルトアラームのリコール改善対策資料から、これまでの累計販売台数が明らかになりました。

■秘密だったテスラの販売台数

2014年7月7日~2022年1月26日までの約7年半の間に、テスラが日本で販売した台数は3車種合計で1万1,425台になります。

車種内訳は、最初の市販車である新車価格1,200万円超のテスラ モデルSが全体の約16%を占める1,826台。テスラ初のSUVであり、後席ドアが上下開閉するファルコンウイングが特徴のモデルXが約12%の1,321台です。

600万円程度に価格を抑えた普及版のモデル3が8,278台でもっとも多く、全体の約72%を占めました。モデルYは2022年1月の時点で日本未発売です。

今やEVのパイオニアであるテスラとはいえ、2014年当初はEV需要やテスラの知名度の低さに加え、高い新車価格により日本での販売は低調気味でした。

モデルXが登場した2017年あたりから徐々に販売が伸び始め、日本でテスラがよく売れ始めたのは廉価版ともいえるモデル3が登場した2019年以降に集中しています。

■7年半で1万1,425台って”売れてる”の?

テスラの日本での販売台数を販売期間で単純に割ると、年間平均販売台数は約1,500台になります。

フェラーリの年間台数は1,000台強で、その次に多いアルファロメオは年間2,000台前後。テスラはこれらイタリア車と同じくらいの販売台数といえるでしょう。ちなみにポルシェは年間約7,000台ほどで、第1位のメルセデス・ベンツは年間約5万台となります。

ちなみに、全世界累計販売台数では、第1位のトヨタが1,049万5,548台であるのに対し、テスラの2021年の世界累計販売台数はわずか93万6,172台です。もちろんEVの販売台数に絞れば、テスラが2021年まで首位独走の世界第1位であったのはいうまでもありません。

2022年上半期の世界シェアで中国BYDに首位を奪われたテスラ

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しかし2022年になってからは、独走状態だったテスラがとうとう世界シェア2位に転落。テスラを追い落としたのは中国の「BYD」という会社です。

2022年上半期のEV世界累計販売台数は、テスラが前年同期比の1.5倍となる56万4,743台だったのにもかかわらず、BYDが64万1,350台と上回り、長らく続いたEV首位の座が奪われてしまいました。

BYDは1955年に創業した中国の携帯電話用バッテリーメーカーです。2003年に自動車製造業へと転身し、いまや中国でトップシェアを獲得する純EVメーカーに上りつめました。

テスラもバッテリーの自社開発を進めているものの、元がバッテリーメーカーであるBYDはEVメーカーとして有利な立場にあり、とくにBYDが開発したブレードバッテリーと呼ばれるリン酸鉄リチウムイオン電池は薄く製造できるうえ、発火・爆発に対する安全性が非常に高いといわれています。

その高いバッテリー技術に対して、アメリカの大投資家ウォーレン・バフェット氏が2億3,000万ドルを出資したことでも注目を浴びました。現在BYDはトヨタとも提携しており、京都や沖縄ではBYD製のEVバスも走行しています。

国内メーカーも徐々にBEV生産に注力、これからどうなる?

世界に対してEV開発が遅れているといわれる日本も、トヨタ bZ4X、スバル ソルテラの発売に続き、日産 サクラ・三菱 eKクロスEVの発売で巻き返しを図ります。とくに日産と三菱が共同開発したサクラおよびeKクロスEVは、発売から1ヵ月足らずで目標を大きく上回る合計1万4,400台を受注している好調ぶりです。

走行距離が短い代わりに格安で購入できる軽EVは、日本のEV市場拡大に大きく貢献するでしょう。しかし今後、日本のユーザーがEVの使い勝手に慣れ、より大型のEVを購入しようとしたときに、国産EVとの比較対象としてテスラやBYDなどの海外製EVが対向馬としてあがってきます。

とくに中国では格安EVが台頭しており、もし日産リーフよりも安価なEVが正規輸入されることになれば日本メーカーは太刀打ちできない恐れがあります。内燃機関が搭載されないEVでは、日本車の信頼性は絶対的な武器にはなりません。

テスラは画期的なアイデアと思い切りの良さでEVの先導者にのし上がりました。中国はコストパフォーマンスの高さで勝負ができます。日本のEVはなにを強みにできるでしょうか。国産EVならではの付加価値を生み出せなければ、世界に対して苦戦は避けられないでしょう。