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Webマーケターが見落としがちな視点への危機感

エルモ 木下社長の著書1冊目『売上最小化、利益最大化の法則』が大変好評だったので、2冊目のオファーはたくさんあったと思います。その中でなぜ『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』を執筆しようと考えたのか、あらためて理由を教えてください。

木下 実は1冊目と2冊目はほぼ同時進行で動いていました。もともとはマーケティングについて書きたかったのですが、エルモさんも何度かツイートしているように「マーケティングの本はあまり売れない」と言われます。それもあって、1冊目はマーケティングを前面に出さずに切り口を変えたら、おかげさまでヒットしました。1冊目が売れたので、2冊目は「売れ行きを考えるのではなく、社員教育用のテキストを作るつもりで書こう」と企画したところ、今回もありがたいことにご好評を頂いています。

北の達人コーポレーションのWebサイト
https://www.kitanotatsujin.com/

なぜマーケティングの話を書きたかったかというと、Webマーケティングに従事している若いマーケターと接する中で、Webマーケティングはマーケティングの一部でしかないのに、まるでWebマーケティングがマーケティングの全てであるかのように勘違いしていたり、単なるデジタルオペレーションをWebマーケティングと思い込んだりしている人が多いと感じて、危機感を覚えていたからです。そのためWebからマーケティングの仕事に入ってきて、これまでWebマーケティングだけしか携わってこなかった人に向けて、マーケティングの全体像におけるWebマーケティングの位置づけを解説することで、キャリア戦略や施策立案に役立ててほしいと考えました。

エルモ 私自身は学生時代にアフィリエイトをしていた経験があり、今は広告代理店で企業のマーケティング全般に携わらせていただいています。日々の仕事で感じるのは、Webのように可視化しやすく、成果の出やすいところに広告主含めてヒト・モノ・カネが集まりやすい構造に業界がなっており、Webマーケティング偏重の解消はなかなか難しいだろうということです。

木下 そもそもGoogleもFacebookも、広告代理店に頼らずとも自分たちで広告を出せる仕組みになっています。私はWeb専業の広告代理店がなかった時代からGoogle AdWords(Google広告)を扱っていて、自分で直接運用できるから便利だと思っていたときに広告代理店が参入してきたから、「自分でできるのに、なぜ広告代理店がやるの?」と驚いたことがあります。広告代理店がWeb広告を運用するようになったことで「マーケティングの部署」と「実際にWeb広告を運用する会社」が別になり、そこからマーケティングがおかしくなってきたと感じています。

エルモ とはいえ、各社に運用の知見・ノウハウが貯まってきてインハウス化が以前より進んでいる部分もあると思います。広告代理店に北の達人さんが運用を含めて、マーケティング支援のお仕事を依頼したことはありますか。

木下 少しだけお願いしていますが、現時点では自社で運用したほうが成果は出ています。そもそもWeb広告の代理店がない時代から我々は運用していて経験値が高いので、後から参入してきた広告代理店で当社よりスキルが高い会社は少ないのが実情です。もちろん、個人レベルで見ると、広告代理店にもスキルの高い人はいます。例えば、大手広告代理店の一担当者であったり、独立している個人の方のスキルが高かったりすることはあります。そういう人に一時的にお願いすることもありましたが、大手広告代理店の一担当者の場合は、人事異動で担当が代わると成果が大きく落ちたり、個人の場合は経営している会社が大きくなって現場から離れ、部下に任せ始めるとスキルが下がっていったりするので、継続してお願いするのを難しく感じる面はあります。

ただ、やはり広告代理店には広告代理店の良さがあります。自社だけで運用していると、視野が狭くなるというマイナス面もあります。なので、幅広い経験値を持った広告代理店とのお付き合いは何らかの形でうまく継続していく必要はあると思っています。

エルモ 木下社長は以前、運用はロジックの世界であり、数%の積み上げしかできない一方で、クリエイティブに関しては「マーケティングジャンプが起こる」という趣旨のツイートをされていました。私も同意で、クリエイティブ次第で結果が大きく変わり、ほかの打ち手の影響は僅差でしかないと感じています。今の話で言うと、代理店に依頼する場合はLPの作成など、クリエイティブのセンスがモノを言う業務が多いのでしょうか。

木下 その時々ですね。昔は運用をお任せしていたこともありましたが、現状では広告代理店が我々より高い成果を出すことは少ないのが実情です。

テクニカルマーケティングが進化した現代では、成功事例を機械的に当てはめていく作業が多くて、大きなヒットは読めなくなっています。その程度の作業なら誰でもできるので、広告代理店に依頼するとすれば、基本的には会社レベルではなく、担当者の個人レベルでスキル判断をして依頼するかしないかを決めています。

エルモ わかります。「これから通販業に参入します」という会社なら突然成果が3倍になったりすることもあるかと思いますが、北の達人さんのようにこれまでPDCAを回し続けたところに、さらに上積みで毎回ジャンプが起きることはなかなかないと思います。代理店も御社のような企業を相手に毎回ジャンプを求められるのは苦しいでしょうね…。

木下 それなのに、キャリアの浅い広告代理店は「僕が担当したら成果が3倍になります」みたいなことを平気で言うんですよ。「そんなことを言ったら、後で苦しむのはあなたですよ」と思います。

求人広告作成で学んだ、相手の価値観を理解する技術

エルモ ありがとうございます。次に、デジタルオペレーターとWebマーケターの違いについて伺います。両者の違いのひとつとして、ご著書では「データから傾向を見て直接配信設定を調整するのはデジタルオペレーター」「データから傾向を見て人間行動の仮説を立てて施策の手を打つのがWebマーケター」とあります。さらにデータから人間の行動パターンを見つけ、そのパターンの背景を理解し、販促につなげることが本当のマーケティングだとして、アメリカのあるショッピングセンターの購買データからわかった「缶ビールを買う人は、一緒におむつを買っている人が多い」という事例を挙げています。私もこのエピソードをかなり面白く感じたのですが、木下社長ご自身はWebの世界でどのように人間の行動観察を行っているのでしょうか。

木下 ビールとおむつの例は有名で、実際には「マーケターが売り場に張りついて観察し、発見した」という話と、「レジの人に聞いたら、すぐわかった」という2つの話があります。後者はレジの人に「ビールとおむつの組み合わせがよく売れているけど、なぜだと思う?」と聞いたら、「週末にお客さまが夫婦でクルマで買い物に来て、普段持てない重い物を夫に持たせてまとめ買いしているからです」のひと言で終わったとのことです。

そんなふうに私は人に聞くことが大事だと考えています。テクニカルが得意なマーケターの中には数字だけしか見なかったり、クリエイティブへの理解が浅かったりする人がいます。ところが、数字上は売れ筋でも、なぜ売れているのかわからない商品はたくさんあります。そのヒントを探すためにも人に聞いていくことが大事です。

我々は女性向け商品を数多く扱っていますが、私は男女の価値観には大きく異なるところがあると感じます。例えば、5万円のスカートと5,000円のスカートがあり、私から見るとそんなに違いはないのですが、妻は全然違うと言います。そこで「なぜ5万円のスカートのほうがいいのか?」と何度も聞いて理由を探っていくと、生地や縫い方、ハンガーに吊るされた状態と着用時のシルエットの違いなど次第に感情の機微がわかってきます。

腹落ちするまで質問を何度も繰り返すうちに抽象的思考力が養われて、他の場合でも「これなら買ってくれる」「こういう商品は買ってもらえない」と仮説を立てる力が身に付いてきます。もしその仮説が違うなら、また相手の好みの機微を理解できるまでずっと聞いていけばいいのです。そんな感じで私は、とにかく人に聞くことをよく行います。

エルモ 一番のヒアリング相手はどなたですか。

木下 社員の女性によく聞きます。その際、自分の好き嫌いの感情を整理して伝えるのが得意でない人も多いので、聞くことにテクニックや経験値が必要です。

エルモ ヒアリングスキルは経験から身に付いたものですか。何か意識していることがあれば教えてください。

木下 リクルート勤務時代に行った求人広告の取材で身に付いたところが大きいですね。求人広告の作成は意外と難しく、価値観を全く理解できない人にも話を聞かなければなりません。例えば、ある会社が求人募集しているとします。ところが、給料は安いし、仕事内容に魅力を感じないので、私はその会社に行きたくありません。しかし、そこの社員はその会社を気に入って働いています。その状態でそこの社員がなぜその会社を良いと思っているかを取材して、魅力的な求人広告の原稿を作るわけです。その際に自分の価値観に置き換えて質問しても理解はできず、良い原稿は書けません。そこの社員の価値観に立って会社の優れたポイントを理解する必要があるのです。自分ではなく、相手の価値観で質問し、良さを理解すること。それさえできれば、相手・業種・商品を問わず話を聞けて、良い求人広告を作成できるようになります。

求人広告の作成スキルについては、もともと持ち合わせたセンスによってすぐ身に付けられる人もいますが、そうでない人は自分の価値観を置き換えにくい異性や子供に聞く練習をするとヒアリング力を上げるトレーニングになると思います。例えば、子供が何かのゲームにハマっているとします。ハマっている理由を明確に言語化できる子供は少ないでしょうから、質問を繰り返していって「次はこういうゲームならやりたいでしょ?」と相手の好きそうなゲームを当てられるところまで掘り下げていくことが大事です。

エルモ 最近、江副浩正さん(リクルート創業者)についての本を読んで、あらためてリクルートはすごい会社だと思いました。木下社長も新卒でリクルートに入社して特に影響を受けたことがあればお伺いしたいです。

木下 やはり求人広告の作り方からクリエイティブについて学びました。クリエイティブの作り方について、著書に書いた『「誰に」×「何を」×「どう」伝えるか』を意識する手法は求人広告の作成から来ています。求人広告は大企業から順番に掲載されますので、普通に作ったのでは中小企業への応募はまず来ません。いかに差別化を図れるかを前提に、「どういう価値観の人に対して」「その会社のどんなことを」「どんなふうに表現すればよく伝わるか」を考えて作る必要があります。それがクリエイティブの基礎です。

スキルだけでは生き抜けないWebマーケターのキャリア戦略

エルモ ありがとうございます。次に、Webマーケターのキャリア形成の話をお聞きします。ご著書に書かれたWebマーケターのキャリアの話を読んで、ショックを受けたり将来に不安を感じたりした人は少なくないと思います。「Webマーケティングに必要な知識などは有能な人であれば1~5年で習得できてしまう」のに対して、「銀行や商社は10~20年目でピークに達する仕事」と指摘されると、Webマーケターは10年後、20年後を見据えたキャリア戦略をどう考えれば良いのかと感じます。「マネジメントに行く」「新しいスキルを常にインプットし続ける」のは王道ですが、皆がマネジメントになりたいわけでも、なれるわけでもないですし、何か良いアドバイスを頂けないでしょうか。

木下 エルモさんが今、中堅社員だとして、40代、50代の人と比べて、スキルに差を感じますか?

エルモ 提案の中身自体は変わらないと思いますが、「誰が言うのか」という部分でいまだにかなわないところがあると感じます。同じ提案をクライアントに行っても、提案者によって動いてくれる人・動いてくれない人がいたりしますので、同じ提案力では上の世代の方に勝てないと最近思います。

木下 例えば、スキルだけを見ると、新卒1~2年目の初心者と30歳前後の中堅社員の差は大きいと思います。ただ、30歳までは差が付いても、40歳、50歳になるとマーケティングのスキル自体にそこまで差は感じません。エルモさんがおっしゃった「誰が言うのか」で相手の受け取り方が違うという話は、人脈・政治力・調整力などスキル以外の差が年齢とともに大きくなることを表していると思います。Webマーケターの中でもテクニカルマーケティングにしか目が向いていない人は、スキルだけで生きていけると勘違いしがちです。しかし実際は30歳を過ぎるとスキルでそこまで差は付かないので、スキルだけで生きていくのは難しくなります。

「誰が言うのか」で結果が変わるような政治力や人間的魅力もある種のマネジメント力と言えます。マーケティングに限らず、仕事は個人の力だけでは限界が来ます。だから、社内の役職として付いていなくても、いかにマネジメント力を付けて複数人で担当し、仕事の枠を広げていけるかが大事なのです。

その際に注意したいのは、1人では10の成果しか出せないからといって、10人集めれば100の成果が出せるかというと、そんなに簡単ではないということです。皆が同様に高いスキルを持っているわけではありません。自分がスキルを高めて、スキルの低い人を活用しながらいかに100の成果を出せるかを模索する必要があります。

例えば、エルモさんが高いスキルを持っているとします。そこで今からマネジメントしようと考えて、自分と同じようにできる人を部下につけようと思っても難しいでしょう。自分と同じようにできる人は、エルモさんの下にはつかないからです。だから自分がマネジメントする人は自分より仕事力の劣る人であることを前提に考える必要があります。その上で、エルモさんの下につく人が自分の3分の1くらいしかできないときに、その人たちができる業務フロー・組織体制を整えて、1人のときより大きな成果を上げることを求められるのです。

ここでプレイヤーとは違う脳みそを使います。つまり、1人のプレイヤーとして成果を出すことにこだわるのではなく、コーチ・監督のような形で、全体でいかに成果が出る仕組みを作れるかが重要です。

エルモ その視点は考えたことがなかったです。

木下 質問の中に「誰もがマネジメント職に就くのは難しいのでは?」とありましたが、大きな組織の中にいるとわかりづらいかもしれません。マネジメントは本来、10人の部下を会社が用意して、「あなたはこの部下の上のポジションに就いてください」と配置するのが本来の姿ではありません。

例えば、あるプレイヤーの人がいて、すごく仕事ができるとします。でも、1人で行う仕事の範囲には限界があります。そこでそのプレイヤーの仕事の中で、事務作業、入稿作業のような比較的簡単な仕事を抜き出してアシスタントに任せれば、浮いた時間をもっと大きな成果を出せる仕事に振り向けられます。その結果、アシスタントの人件費を上回る結果を出せれば良いわけです。

それが段々大きくなると、アシスタントが10人くらいになる人が現れます。それが組織になるのです。さらに、アシスタントが効率よく働けるようにマネジメントできると、組織はどんどん拡大し、必然的に成果も大きくなっていきます。役職としてのマネジメントになる・ならないではなく、マネジメントスキルを身に付けたほうがプレイヤーとしての枠も広がるということです。

売れないのは商品に魅力がないのではなく、魅力を伝えきれていないから

エルモ 主体的に仕事を作れる人になろうというニュアンスですか。

木下 それもありますね。誰かが作った仕事を受けているうちは、社内の下請けでしかなく、自分で仕事を広げていける人でないとこれからの時代は難しいでしょう。私どもでもたまにあるのですが、ある仕事がとても得意でずっと成果を出していたのに、突然その仕事自体が不要になることが現実に起こります。そうなった瞬間、その人は社内失業になってしまうのです。そうならないようにするためには、日頃から主体的に仕事の枠を広げる努力をしておくべきです。テクニカルマーケティングもAIで変わっていくのは確実です。「Webサイトを分析して改善するのが得意」「最適なキーワード選定で、広告運用を…」などと言っている人がいますが、「近い将来、その仕事があるかないか、よく考えたほうがいいよ」と思います。その辺の感覚がわからないまま1人黙々とプレイヤーを続けている人が少なくないですね。

エルモ では、北の達人さんはどんな社員を採用したいですか。ご著書では「採用は未来の自社のため」とあります。

木下 単にマーケティングをやりたい人はあまり必要なくて、マーケティングのスキルを通じて、世の中にポジティブな影響を与えたいと考えられる人を採用したいです。我々は商品を世の中にお届けするのですが、より効率的に・より良く・より適切に届けるための手段としてマーケティングを取り上げているのであって、そこを逆に考えて表面的なマーケティングのテクニックだけを身に付けたいと考えている人は我々の会社には合わないですね。

エルモ IQの高い社員がたくさんいらっしゃるとのことですが、テクニカル、かつスピーディーに仕事を進められる高IQ社員と、PDCAを泥臭く回せる人とでは、どちらを採用したいですか。

木下 どちらかではなく、IQの高い社員が非常に泥臭く取り組んでいます。大事なのはマーケティングを通して商品をお届けするプロセスを、どう真剣に取り組むかです。最近は減りましたが、以前は「商品への理解を深めましょう」と伝えたら、「商品には興味ない」と言って辞めていく人もいました。若い人たちだったので、まだ社会を知らないから仕方ないと思いましたが、今はそういうマーケティングの表面的なテクニックだけを身に付けたいと考える社員はいないですね。

エルモ 結局一番は商品だと思うのですが、全員が商品開発に携われるわけではない中で、どのように社員をアサインしているのですか。

木下 せっかく作った良い商品が売れなかったときに、「売れないのは自分たちのやり方が悪いからだ」と思えるかどうかが重要です。だから、私たちは商品を発売する前に必ず全社員で1カ月間、実際の生活の中で使ってもらいます。そして、商品の良さを実感してもらうのです。広告代理店やコンサルティング会社の社員の中には「この商品、売れないです」と簡単に言う人がいますが、それは思い入れが薄いからだと思います。少なくとも我々は勝手な思い込みではなく、市場調査もモニター調査も行い、一定以上の人に喜んでもらえるのがわかった状態で商品を作っています。だから売れなかったとき私は、「こんなに良い商品を知られていないこと自体が、世間さまに申し訳なく、世の中にとって損失だ」と考えます。そんなふうに全社員が思っていると、工夫の仕方が変わってくるものです。「商品に魅力がないから、あまり売れないです」ではなく、「自分たちが魅力を伝えきれてない」と思えるかどうか。マーケターも自分たちの商品に対して、そこまで愛着を持てるかどうかを重視しています。

編集部 エルモさん、木下社長から広告代理店に少々シビアな発言がありましたので、反論があれば…。

エルモ 反論といいますか、木下社長がおっしゃった部分については、自分としても同意せざるを得ないところはあるかと…。ただし、代理店として外部から関わるからこそ見えることや提供できる価値もあるはずなので、広告主さんにはうまく外の人材や知見も使っていただきながら、事業成長につなげていただければと思っています。

木下 広告代理店が全部ダメなわけではなくて、ダメな広告代理店も多いという話です。例えば、電通さん、博報堂さんにはもっと頑張ってほしいと思います。電通さん、博報堂さんなどの大手広告代理店はもともとしっかりとした上流工程、ファンダメンタルズマーケティングをしていたのですが、マーケティングをデジタルに落とし込むときに、外部の会社に流しました。その後、テクニカルマーケティングだけを手掛ける会社がたくさん現れて、「これがWebマーケティングだ」と言い出したのですが、それはマーケティング全体の一部であって、テクニカルマーケティングだけが必要以上に幅を利かせている現状に疑問を感じたことが出版のきっかけにもなっています。

50年くらい前、広告の多くを電通さんが扱っていた時代に、求人広告に特化したリクルートが現れました。当時、求人は数ある広告の中の一部でしかなかったため、電通さんはあまり力を入れていなかったのです。ところが、時代背景もあって求人広告の市場が大きくなり、メディアと代理店の両方を持つリクルートが、代理店だけの電通さんの利益を抜いてしまいました。昔そういうことがあったにもかかわらず、なぜまたWebマーケティングで同じ失敗をするのだろう、もったいないなと感じます。ファンダメンタルズマーケティングをしっかりやっている大手広告代理店にWebマーケティングでも覇権を取り戻してほしいと考えています。

編集部 最後に木下社長からあらためて本のPRをお願いします。

木下 読者は若い方が多いと思いますが、Webマーケティングを5年、10年とやるつもりなら、絶対に読んでほしいですね。今、目先のテクニックだけでうまくいっている人も、それは一過性のことだと理解したほうがいいと思います。私は20年間、Webマーケティングに携わっていますが、テクニックは2~3年しか通用しません。20年以上やっていくなら、ファンダメンタルズの部分を理解する必要があります。ファンダメンタルズを理解した上でテクニカルをブラッシュアップしていくことが大事なのです。これからWebマーケティングを5~10年やっていくつもりなら、ぜひ手に取ってみてください。読んでも一切役に立たなかったら、5年後に言ってくれたらお金を返しますくらいの強い思いで書きました。

編集部 木下社長、エルモさん、本日はありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

Profile
木下 勝寿(きのした・かつひさ)
株式会社北の達人コーポレーション 代表取締役社長。
1968年、神戸市生まれ。新卒でリクルートに入社。独立後、事業に失敗しフリーターに。その後、日本で最もビジネスが成功する可能性を秘めていると判断した北海道へ移住、北の達人コーポレーションを設立。一代で東証プライム上場企業に押し上げた。紺綬褒章8回受賞。著書は『売上最小化、利益最大化の法則』(ダイヤモンド社)、『ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティング』(実業之日本社)。
Twitter:@kinoppirx78

北の達人コーポレーション
https://www.kitanotatsujin.com/

 

 

 

 

 

 

エルモ
マーケ思考のキュレーター。ビジネス・マーケティングをトピックに扱うニュースレターMarketing Media Labが人気。広告代理店にて、企業のマーケティング支援も行っている。
Twitter:@elmo_marketing
ニュースレター:Marketing Media Lab
ブログメディア:マーケとキャリアの攻略法

 

 

 

 

 

 

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
Twitter:@hayakawaMN
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