「歯並びが悪い」と起こる全身への影響7つをご存知ですか?医師が徹底解説!

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歯並びが悪くなる原因と治療方法・矯正について、Medical DOC監修医が解説します。悪い歯並びで考えられる体への影響や気をつけたい病気も紹介。噛み合わせなど、気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修歯科医師:
関口 一樹 歯科医師(関口歯科医院)

東京歯科大学卒業。2014年に関口歯科医院開院。マイクロスコープを用いた治療を基本とし、かみ合わせも含む総合的な治療を心掛けている。現在では、小児期における不正咬合治療、乳幼児期での発達発育に対しても積極的に取り組んでいる。

「歯並びが悪い」症状で考えられる病気と対処法

近年、歯科医師として診療していると歯並びを気にされる方が以前よりも増えていると感じます。国民が歯医者さんに行くという意識が非常に高くなり、歯周病や虫歯の人が非常に減った一方、歯並びの問題を抱える人は増えているという報告もあります。(厚生労働省「歯科疾患実態調査」)
また、歯並びの問題(歯列不正)とは、単に歯の並びが悪いというだけでなく、かみ合わせの問題(不正咬合)も同時に生じていることがほとんどです。かみ合わせに問題が生じていることで、虫歯になりやすかったり、歯周病が悪化しやすかったりします。最悪の場合、歯を失う可能性も高くなります。80歳以上で20本以上歯が残っているという状態を達成した人を調査した結果、90%が良いかみ合わせの方で、受け口や開口の人がいなかった、という報告もあります。(ライオン歯科衛生研究所)
まずはどんな歯列不正・不正咬合があるのかをお話ししていきます。

歯並びが悪く、出っ歯になっている症状で考えられる原因

歯並びが悪く、見た目に出っ歯(歯科医学用語では、上顎前突)になっていることが特徴です。多くの場合、上の前歯が前方方向に傾斜しており、下の顎が後ろに位置しています。

出っ歯・上顎前突(じょうがくぜんとつ)

このような場合、発育過程で舌を上に位置づけることが習慣にならずいつも下にいることにより、上顎が下方向に発育してしまう、またそれに伴い飲み込みの時に唇が緊張する癖がついてしまうことにより、相対的に出っ歯の様になってしまうことが原因として考えられます。状態によっては上の前歯の下に下唇を巻き込む癖により、より悪化することもあります。遺伝的に生じることもあります。

歯並びが悪く、受け口すきっ歯になっている症状で考えられる原因

歯並びが悪く、見た目が受け口(歯科医学用語では、下顎前突)になっていることが特徴です。

受け口

受け口とは、上顎に対し下顎が前に出ている状態のことです。多くの場合、下顎の成長が著しく、上顎の成長が乏しい状態です。正常咬合の場合、上の前歯に対し下の前歯が後ろにありますが、下顎前突の場合それが逆転しています。遺伝的に生じることもあると言われています。
発育過程で舌を上に位置づけることが習慣にならずいつも下にいることにより、上顎の発育が乏しい状態で下顎が正常な発育をすると相対的に反対咬合になります。また身長が伸びる思春期・成長期に下あごも成長するため、反対咬合(受け口)が促進されてしまうという患者さんも見られます。

歯並びが悪く、開咬になっている症状で考えられる原因

開咬とは、奥歯がかみ合っているのにも関わらず前歯が咬んでいない状態です。

開咬・オープンバイト

発育過程で舌を上に位置づけることが習慣にならず、いつも上下前歯の間に舌を挟み込ませている状態、もしくは飲み込みの時に上下前歯の間に舌を挟み込ませている状態で生じることが多いです。

歯並びが悪く、ガタガタになっている症状で考えられる原因

見た目に前歯がガタガタになっている状態(歯科医学用語では、叢生)です。上記の上顎前突、下顎前突、開口と同時に生じることがあります。

デコボコの歯並び・叢生(そうせい)

発育過程で舌を上に位置づけることが習慣にならずいつも下にいることにより、顎が十分に広がってくれないことにより生じます。また同時に、舌を上手に使うことが出来ず、飲み込みの時に上下の唇に力を入れる習慣も状態を悪化させます。

子供(乳歯)の歯並びが悪い症状で考えられる原因

乳歯の良い歯並びとは、乳歯同士がすきっ歯になっており、上下のかみ合わせが正常である状態です。乳歯なのに隙間が無くきれいに並んでしまっている場合、永久歯が生えてくるとガタガタになってしまう可能性が高いです。また、かみ合わせが正常でない場合、自然に治らないことが多いです。
赤ちゃんの時からの舌や唇の使い方の習慣が顎の発育に大きく影響します。そこに関わる因子として、赤ちゃんの時に鼻が詰まって口呼吸になってしまう、舌の下の筋に問題がある、離乳食の在り方、母乳育児が適切に行えていたかどうかなどが挙げられます。

「歯並びが悪い」場合、すぐに病院へ行くべき?

歯列不正・不正咬合は、直ちに病院に行き治療しないと命に関わるということはありません。ですが、上記の通り、将来歯が残りやすいかどうかにかかってくる大きな問題であると考えられます。反対咬合や開咬の方はどんな年齢でも歯医者さんに行って治療を検討するべきであると思います。

「歯並びが悪い」症状が特徴的な病気・疾患と治療法

ここではMedical DOC監修医が、「歯並びが悪い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

叢生(そうせい)

叢生(ガタガタな歯並び)は、発育過程で舌を上に位置づけることが習慣にならずいつも下にいることにより、顎が十分に広がってくれないことにより生じます。また同時に、舌を上手に使うことが出来ず、飲み込みの時に上下の唇に力を入れる習慣も状態を悪化させます。
成人での叢生の治療は、ブラケットを用いた治療が主となります。診断次第では歯を抜いて治療する場合もあります。同時に、舌の癖を治すエクササイズを行う必要があることが多いです。叢生が気になった場合に、矯正歯科と標榜がある歯科医院で相談してください。

出っ歯

出っ歯(上顎前突)は、発育過程で舌を上に位置づけることが習慣にならずいつも下にいることにより、上顎が下方向に発育してしまう、またそれに伴い飲み込みの時に唇が緊張する癖がついてしまうことにより生じます。状態によっては上の前歯の下に下唇を巻き込む癖により、より悪化することもあります。多くの場合、上野前歯が前方向に傾斜しておりますが、上の前歯が内側に傾斜し、下顎が後ろに引けてしまっており、かむと下の前歯が見えなくなっている「過蓋咬合」というパターンもあります。上顎前突は遺伝的に生じることもあります。
成人での出っ歯の治療は、ブラケットを用いた治療が主となります。診断次第では歯を抜いて治療する場合もあります。見た目の出っ歯が気になった場合に、矯正歯科と標榜がある歯科医院で相談してください。

受け口(下顎前突、反対咬合)

受け口(下顎前突、反対咬合)は、発育過程で舌を上に位置づけることが習慣にならずいつも下にいることにより、また上顎の発育が乏しい状態で下顎が正常な発育をすることにより生じます。思春期に顎の成長に伴って反対咬合が促進されるという症例もあります。遺伝的に生じることもあり、厚生労働省「歯科疾患実態調査」などの統計的にも歯を失いやすいかみ合わせなので、どの年齢でも治療することをお勧めします。
成人での受け口の治療は、ブラケットを用いた治療が主となります。診断次第では歯を抜いて治療する場合もあります。状態によっては顎の外科処置を行って治療しなければならないこともあります。見た目の受け口が気になった場合は、矯正歯科と標榜がある歯科医院で相談してください。

開咬(かいこう)

開咬は、発育過程で舌を上に位置づけることが習慣にならず、いつも上下前歯の間に舌を挟み込ませている状態、もしくは飲み込みの時に上下前歯の間に舌を挟み込ませている状態で生じることが多いです。幼少期に指しゃぶりの癖があった場合、それによって生じた上下前歯の隙間に舌を入れる癖がついてしまうと、開咬になっていきます。統計的に歯を失いやすいかみ合わせなので、どの年齢でも治療することをお勧めします。
成人での開咬の治療は、ブラケットを用いた治療が主となります。診断次第では歯を抜いて治療する場合もあります。同時に、舌の癖を治すエクササイズを行う必要があることが多いです。開咬が気になった場合に矯正歯科と標榜がある歯科医院で相談してください。

「歯並びが悪い」ときの正しい対処法は?

歯が重なっていると歯磨きが難しくなります。デンタルフロスや歯間ブラシなども併用し、汚れをしっかり取れるようにするべきです。歯医者さんに行って、歯磨き指導を受けると良いでしょう。
どのような状態・年齢でも、矯正治療はするべきであると考えております。一度歯医者さんにいって相談すると良いでしょう。
また、歯並びが悪い・かみ合わせが悪い場合、舌の筋肉の機能が衰えていることがあります。舌の筋肉の機能が衰えていると生じることの一つとして、誤嚥があります。

誤嚥(ごえん)

誤嚥とは、食べ物や飲み物が食道ではなく気管に入ってしまうことです。この誤嚥の原因の一つとして、舌の筋肉の衰えがあるのです。老年期に入り誤嚥してしまうと、誤嚥性肺炎を起こしてしまうこともあります。この舌の筋肉を鍛える手段として、「あいうべ体操」を毎日行うと効果があります。

「歯並びが悪くなる」原因や気をつけたいことは?

歯並びが悪くなる原因は、お母さんのお腹の中にいるとき、胎児のときから始まっていると考えられています。母体の栄養状態、生活習慣が胎児の成長に影響を与え、顎の発育に関わってきます。また生後は、母乳育児が適切に行えていたかどうか、乳幼児期の発達に関わる生活習慣が適切であったかどうか、離乳食の在り方、なども顎の発育に大きく影響します。近年、世界各国の伝統の子育てがエビデンスとも符合するようになり、顎の良い発育をするためには近代的な生活をなるべく避けるのがポイントかもしれません。

「歯並びが悪い」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「歯並びが悪い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

歯並びが悪いと全身の健康に影響が出るのは本当でしょうか?

関口 一樹 歯科医師

歯並びが悪いと、同時にかみ合わせも悪くなります。かみ合わせが悪い場合、全身への影響として頭痛、肩こり、腰痛、耳鳴り、めまい、イライラ、消化器への負担などが挙げられます。

1歳の子供の歯並びが悪いのは治療すべきですか?

関口 一樹 歯科医師

1歳の場合、乳歯の歯並びに隙間が無い場合将来永久歯がきれいに並んでくれない可能性があります。赤ちゃんでも使えるマウスピースや、生活習慣を良い状態にするなどの対策をすることが出来ます。

生まれつき歯並びが悪いのは遺伝と関係しているのでしょうか?

関口 一樹 歯科医師

遺伝的な疾患の場合は関係していると言われています。遺伝的な疾患が無い場合、遺伝と関係しているかは現在結論が出ていません。上記の様に、胎児の段階からの問題である可能性もあります。

大人になってから歯並びや噛み合わせが悪くなることはありますか?

関口 一樹 歯科医師

歯並び・かみ合わせが悪くなる原因である、赤ちゃんの時からの、歯の周りにある筋肉の習慣が改善されていない場合、年とともに変化してくることが予測されます。親知らずが後ろから歯を押して歯並びが悪くなるという歯科医師の意見もあります。

まとめ

歯並び・かみ合わせはさまざまな問題と関連します。健康な人生を目指すときに、見た目の面でも健康面でも歯並び・かみ合わせの問題は解決できているべきだと考えております。気になった方はすぐに歯医者さんに行って相談してみましょう!
さまざまな歯列不正・不正咬合のパターンがありましたが、受け口(下顎前突)と開咬は将来歯が残るかどうかに関わることですので、早期に治療することをお勧めします。それ以外の症状でも全身の健康にかかわりますので、まずは歯医者さんに行ってみましょう!
成人してからの歯並びの問題は、歯並びを整え、同時に原因を治療するのがベストです。また、一番良いのは子供時代から歯並びへの対策を考えることです。このことは子どもの全身の発達・発育にも関係します。より良い未来を目指すためにも、大人も子どももお口の状態を良い状態にし、良い状態で日常生活を送っていく事が大変重要だと考えられます。

「歯並びが悪い」で考えられる病気と特徴

「歯並びが悪い」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

歯科の病気

上顎前突

下顎前突

反対咬合

叢生

開咬

顎関節症顎変形症

歯並びの悪さに気になったときは、老若男女問わず矯正歯科で一度相談してみましょう。

「歯並びが悪い」と関連のある症状

「歯並びが悪い」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

歯ぎしり

出っ歯

歯並びがガタガタ

すきっ歯

噛み合わせが悪い

見た目の悪さや生活上での不具合があるなどの場合には、早めに医療機関への受診を検討しましょう。