「『千と千尋の神隠し』の世界観ですね」
「湯婆婆いました?」
「ジブってますね」
「鬼滅の遊郭編で出て来そうですね」
「鬼滅の刃コスプレイヤーに集まって写真撮ってもらいたい」

2022年6月15日にツイッターに投稿されたある写真に、そんな声が寄せられている。

多くの人にアニメ作品を連想させたのは、この1枚だ。

3〜4階建ての木造建築――大きな旅館のようだ。

写真を投稿したのは、ツイッターユーザーのKE-TA(@KE_TA_camper)さん。「大正ロマン溢れてた」というつぶやきを添えたツイートには10万件を超える「いいね」が付けられ、今も拡散している(6月16日現在)。

いったいここはどこなのか? Jタウンネット記者は、投稿者「KE-TA」さんに話を聞いた。

透けて見えるミステリアスな人の影

KE-TAさんは、新潟県在住のフォトグラファー。話題の写真は2021年8月、山形県北東部・尾花沢市にある銀山温泉で撮影したものだ。「銀山温泉はこの時が初めてでした」と語る。

「(宿泊の)予約が取れず、撮影だけのために訪れました。撮影地はやはり有名な場所でもあり、観光客も多く、温泉街もレトロな雰囲気でまるでタイムスリップしたような気分になりました」(KE-TAさん)

今回のツイッター上での大反響については、次のように語った。

「写真を拡大するとわかるんですが、人が透けて見えるんです。
長時間露光で撮影すると起こりうる現象で、シャッターが開いてる状態で人が動くと透けて見えるんですよね。それを見てる人は見てるんだなぁと思いました」(「KE-TA」さん)

見えるようで見えない、あるいは見えないようで見えるミステリアスな人影。その不思議さもこの写真の魅力の一つだが、反響の大きさは、けっしてそのためだけではあるまい。

「やはり大正を思わせるレトロな建物が非現実的で、皆様がすごい反応してくれるんだなと思いました」(KE-TAさん)

最上川の支流・銀山川の両岸に大正末期から昭和初期に建てられた洋風の旅館が軒を連ねる銀山温泉。

川には歴史を感じさせる複数の橋がかかり、夜には石畳の歩道を旅館の明かりとガス灯が照らす。尾花沢市は、1986年に「銀山温泉家並保存条例」を設け、この風景を守っている。

たった15年しかなかった「大正」という時代の雰囲気は、なぜか多くの人々を惹きつけるようだ。