中国・南開大学人工知能学院の研究チームが、世界で初めてAIを使ってクローンブタを全自動で作成する手法を開発したと発表しました。

Chinese scientists produce world’s first pigs cloned entirely by robot | South China Morning Post

https://www.scmp.com/news/china/science/article/3180067/chinese-scientists-produce-worlds-first-pigs-cloned-entirely

Scientists in China have successfully cloned pigs using only AI in a world first

https://interestingengineering.com/cloning-pigs-only-using-ai

香港で発行されている日刊英字紙・South China Morning Postは2022年6月2日に、「南開大学の研究者であるLiu Yaowei氏らの研究チームが、ロボットを使用して完全自動でクローンブタを作成するプロセスを開発しました。この手法により、3月に健康なクローンブタ7頭が人の手を介することなく代理母から生まれました」と報じました。

中国は世界最大の豚肉生産国ですが、それ以上の消費国でもあるため膨大な豚肉を海外から輸入しており、2021年の豚肉輸入量は331万トンに達したとのこと。「アメリカや西洋諸国からの輸入制限に弱い」という懸念が中国内で高まる中、Liu氏らの研究チームは、AIを使った「自動ブタクローン方式」により中国におけるブタの生産量を大幅に増やし、豚肉の完全な自給自足ができるようになると見込んでいます。



豚のクローン自体は新しいものではありませんが、これまでクローンブタの作成にはさまざまな段階で人間が関与する必要がありました。その代表的なプロセスが体細胞核移植です。卵細胞から核を取り出し、そこにクローン用に調整された体細胞の核を移植するこの作業では、人間の操作により繊細な細胞が傷ついたり汚染されたりすることがしばしば発生します。

Liu氏は、「我々のAIを搭載したシステムは、体細胞のゆがみを計算し、ロボットが最小限の力でクローニング作業を完了できるようにするので、手作業による細胞の損傷を減らすことができます。人間の手作業で体細胞核移植をした場合の成功率は10%しかありませんが、AIで制御されたロボットにより作業を自動化することで、クローン胚作成の成功率が過去5年間で21%から27.5%に向上しました」と話しました。



また、今回開発された手法では、体細胞核移植以外のプロセスも自動化されているので、畜産業界へのインパクトは大きいと専門家は考えています。中国のバイオ企業・Chengdu Clonorgan Biotechnologyの創業者で、2005年には中国初のクローンブタ作成に携わった経歴を持つPan Dengke氏は、「ロボットによるクローン技術や細胞のマイクロマニピュレーション技術は、生殖補助や品種改良など幅広い用途に使える可能性があります」と話しました。Dengke氏によると、ゆくゆくは企業や研究機関が購入可能な「クローニングキット」も実現すると考えられるそうです。