※この記事は2021年06月01日にBLOGOSで公開されたものです

同名の漫画作品を原作として2018年にテレビドラマシリーズがスタートした『賭ケグルイ』。2019年にはドラマのSeason2、さらに映画化が実現した。劇場版第2作目となる『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』は緊急事態宣言にともなう2度の延期を経て、2021年6月1日に満を持して公開される。

同作品は、ギャンブルの強さだけで学内のヒエラルキーが決まるという独特な世界観の学園を舞台にしたストーリーで、主演の浜辺美波をはじめ、高杉真宙、森川葵など若手人気キャストがハイテンションな演技を披露して話題を呼び、ファンを増やしてきた。今作は豪華キャストが再び集結し、さらに物語の中心となる悪役にジャニーズWESTの藤井流星が抜擢されている。

公開を前にプロデューサーを務める松下剛氏に話を聞き、同氏が作品について過去に語ってきた「オーバーアクト」「キラキラ青春映画に対するアンチテーゼ」というフレーズをキーワードに、今作の楽しみ方を教えてもらった。【取材:川島透】

よくある学園モノに見えてまったく違う映画にしたかった

――松下さんは、映画1作目公開時のインタビューで、「オーバーアクト」(※大げさな演技のこと)を作品のポイントに挙げていらっしゃいました。初めから狙っていた演出だったのでしょうか。

『賭ケグルイ』はドラマの企画を立ち上げた当初から、映画化を大きな目標として作品を制作していました。当時は“キラキラ青春映画”がブームで、そういう作品を否定するわけではありませんが、流行っているだけにいつか廃れるだろうと。それなら、同じようなルックに見えてまったく違ったタイプの“アンチテーゼ”になるような作品にしたいと考えたんです。

――他とは違う学園モノ、というコンセプトが先にあったんですね。

若い世代の芝居好きな俳優たちがみんな同じような環境で同じような学園モノをやってしまっている中で、せっかくなら芝居の力をピークまで発揮できる作品にしたくて、『賭ケグルイ』を選びました。

俳優さんはどんな演技ができるのかを問われ、お互いに切磋琢磨できるような、そういう場を提供したいなと。

――若い俳優さんたちに力試しをさせるような狙いがあったんですね。

だから、芝居が面白そうな人しかキャスティングしていません。知名度や、SNSのフォロワー数ではなくて、芝居がすごく好きそうで、もっとやりたいことのありそうな人たちを集めています。

そういう過程でオーバーアクティング自体が作品の面白さの根幹になり、売りにもなったのではないかと分析しています。

同じオーバーアクトでも「半沢直樹はすごい」

――確かにオーバーアクトというと、昨年放送されて話題になった『半沢直樹』でも、錚々たる役者陣の激しい芝居が「演技力合戦」などと評されて、演技力として評価されていました。一方で、上手くいかなければ視聴者が引いてしまうようなリスクもあるように思えます。不安はなかったのでしょうか。

最初は、映像化したときに成立するのかという不安はありました。しかしその点は、英勉監督がトンデモ学校という世界観を演出でセットアップしてくれたことでクリアできました。例えば突然カーテンが閉まって真っ暗になって、テーブルの周りだけライトアップされるというような照明の演出も効果的に使われます。

そういう意味では、『半沢直樹』は本当にすごいと思います。普通の職場という世界観で成立させているから。

――若い役者さんたちの演技はどのように引き出されていったんですか。

英監督がひとりひとりの演技にリアクションをしてくれるんです。面白かったら誰よりも笑ってくれる。皆がそれに乗って、「これ、どうですか!」とプレゼンするように演じて、相手もそれに反応する。そうやってアドリブが繰り広げられていきました。

自由でいい雰囲気の現場なのが作品から伝わるようで、出演者の皆さんは他の現場で「私も出たい」なんて言われるそうなんですよ。でも、別の現場で同じことをやろうとしてもなかなかできないような現場だと思います。

作品の軸となる最凶の悪役にジャニーズWEST・藤井流星を抜擢

――今回の作品の大きな目玉のひとつに、ジャニーズWESTの藤井流星さんの抜擢があると思います。原作にはないオリジナルキャラクターということですが、藤井さんの起用とこのキャラクターはどちらが先に決まったのでしょうか。

これはキャラクターが先です。原作の進行具合を鑑み、1作目に続いて今回もオリジナルストーリーでいくことにしました。そういった背景の中、この視鬼神真玄(しきがみまくろ)というキャラクターは2作目のコンセプトとともに考えられたキャラクターです。

まず1作目を観たお客さんから「学内の構造とゲームのルールが難しい」という感想が見られた反省から、より内容をシンプルにしたいと考えていました。さらに映画のパート2というと、『ダークナイト』のジョーカーや『スター・トレック イントゥダークネス』のカーンのように、できあがった世界観を壊しにくるキャラクターが出てくるのが定番です。

そういうわけで、今までこの作品にいなくて、とんでもなく強いキャラクターに対峙するという大筋の構図がまず決まりました。

――藤井さん起用の決め手は何だったんですか。

キャラクターのイメージを先に膨らませてみたものの「そんな人実際にはいないね(笑)」と難航しかけていたのですが、そんな中でふと、以前会っていた藤井さんの顔が浮かんだんです。彼は、さわやかで中性的な今っぽい魅力というよりも、彫りが深くて眼力も強くて身体はガッチリしていて、声も太くて、古き良きかっこよさがある。彼なら普遍性のある強さが出せるのではないかと思ってオファーしました。

――実際に藤井さんが演じている姿をどのようにご覧になりましたか。

生徒会長の交代式という場面があるんですけど、あれは藤井さんでなければできなかったと思います。台本には「異様に踊り舞う視鬼神」くらいしか書いていなくて、監督以外はイメージもできていないシーンでした。

彼はダンスや身体を使ったパフォーマンスの素養があるので、「めちゃくちゃに暴れてほしい」と言われて対応してくれたんです。視鬼神というキャラクターが乗っかった上でのダンスだったと思いますが、みんな驚いたし、彼じゃなきゃできない場面でした。

――歌手でもあるからか、声の出し方も独特で印象的でした。

実は、藤井さんは最初“ドスの効いた声”を用意してきていたんです。でも監督から、「声のトーンや、しゃべるスピードが安定していない不穏な感じ」という注文を受けたらピンときたようでした。

声の上げ下げだったり、スピードが一定じゃない気持ち悪さ、突然笑い出すことであったり、自分なりに工夫してやっていましたね。

スポ魂とは違うギャンブルという勝負の世界 実は共感しやすい?

――松下さんは過去の取材で、『賭ケグルイ』を選んだ理由として「オーバーアクト」しやすいこと以外に、「高校生同士がガチンコで勝負」する物語であることも挙げていました。高校生の勝負モノといえば、スポ魂のようにイメージしやすいものもあると思いますが、あえてギャンブルというテーマに手を出したことには理由があったんでしょうか。

スポ魂はあまり意識していませんでしたが、「対決する」のイメージが異なる気がします。例えば部活であれば、3年間練習した成果が試合で結果として出る、という内容ですよね。努力と才能のかけ合わせということになる。

それはもちろん健全なテーマではあるんだけど、『賭ケグルイ』の世界で行われているギャンブルやゲームバトルって実はより身近なものではないかと思うんです。つまり、練習しようのない勝負に、何か大切なものを賭けなければならない場面が唐突にやってくる。『賭ケグルイ』はファンタジーコーティングされていて異世界に見えますが、シンプルに「ここが勝負だ」っていう場面は実は世の中にたくさんあると思うんです。

――唐突に選択を迫られる“ギャンブル”は、誰しもが日常の中で経験しているということですね。

そして原作の第1巻で主人公の蛇喰夢子が、勝負をしにいく人生の方が楽しいし、「それが私の存在理由」みたいなことを言っているんです。

この価値観が、「勝負のタイミングにあなたは戦いますか?戦えますか?」、さらには「戦っちゃってもいいんじゃない?」というメッセージとして伝わっているのかもしれません。それで観た人にスカッとしてもらえているのかな。

――奇抜な世界のようでいて、実は共感できるところのある作品になっているんですね。

僕たちが明日、あの席に座るかもしれないヒリヒリ感ですね。大学生なら大学生の、社会人なら社会人の「私にとっての百花王学園」を考えられるのが、この作品の面白さなのかなと思います。

【プロフィール】
松下剛
1977年生まれ。東京都出身。『劇場版タイムスクープハンター』(2013)、『味園ユニバース』(2015)、『海よりもまだ深く』(2016)、『アイネクライネナハトムジーク』(2019)、『きみの瞳が問いかけている』(2020)他の制作プロデュース、『第9地区』(2010)、『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』(2011)他の宣伝プロデュース、『万引き家族』(2018)の宣伝統括を務めた。実写『賭ケグルイ』シリーズでは3年半にわたり、ドラマ3シリーズ、映画2本の企画・プロデュースを務めている。

【作品概要】
出演:浜辺美波、高杉真宙、藤井流星(ジャニーズWEST)、松田るか、岡本夏美、柳美稀、松村沙友理(乃木坂46)、小野寺晃良、池田エライザ、中村ゆりか、三戸なつめ、矢本悠馬/森川葵
監督:英勉
脚本:高野水登 英勉
主題歌:milet「checkmate」(SME Records)
配給:ギャガ
2021年6月1日(火)全国公開
公式サイト:https://kakegurui.jp/
(C)河本ほむら・尚村透/SQUARE ENIX
(C)2021 「映画賭ケグルイ2」製作委員会

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2021年6月1日(火)~6月3日(木)

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