諸悪の根源はNHK!? 元TOKIO山口達也「強制わいせつ」事件 - 渡邉裕二

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※この記事は2018年05月14日にBLOGOSで公開されたものです

TOKIOのメンバーだった山口達也(46)による女子高生への「強制わいせつ」事件は、被害者の女子校生との間で示談も成立したことから予定通り「不起訴(起訴猶予)」となり、同時に山口が責任をとってTOKIOを脱退、ジャニーズからも離れることで一件落着となった。が、どうも全てが〝想定内〟だったんじゃないかという流れ…。

その〝想定内〟ということでは、東日本大震災と原発事故で被害を受けた福島で復興活動に携わってきたTOKIOだったが、山口の事件でポスターを外したり何やらで、一度は活動継続が後退しかけたけたものの、ここにきて「引き続き(山口を除いた)4人に力を貸していただきたい」と、今後もグループを起用していくことで決まった。

それだけではない。東京都も20年東京五輪(オリンピック)&パラリンピックのフラッグツアーでのスペシャルアンバサダーを〝続投〟させるという。当初、小池百合子知事は「これまでTOKIOの皆さんには、大会の機運醸成に大きな役割を果たしていただいただけに残念だ」なんて言っていた。ところが、ここにきて「都としては、引き続き(4人に)頑張ってもらうことにした」。

確かに、今回は山口が個人的に起こした事件であって、TOKIOとは関係がないと言っちゃそれまでだが、だったら事件発覚以来、連日、メンバーそれぞれが出演する番組内でコメントし、謝罪し続けてきたのは何なのだ。

それだけではない。それほど意味のないような〝謝罪〟の記者会見まで開いたりもした。

何で? それは、今回は「山口の個人的な事件」であってもグループとしては、やはり〝連帯責任〟があるとメンバー全員が感じていたからではなかったのか。それとも、ここはビジネスライクに来年の25周年を見据えて〝仲良しグループ〟だったってことを世間に改めてアピールでもしたかったのだろうか?正直言って理解に苦しむ。

いずれにしても、4人で活動していくことに対しても、会見で長瀬智也は「TOKIOの楽曲は彼の演奏する(ベースの)音がないと形にならない」と言い切り、しかも、今後の音楽活動については〝白紙〟だと明言していた。

えっ!〝白紙〟ということは「活動を停止する」ということだろう?ここで揚げ足を取るわけでではないが、彼らは「断腸の思い」としながらも「被害者の方、ご家族への謝罪の思いや、いまはそんなことを言っていられません」とまで言っていたではないか。 にもかかわらず…。

だけど、(山口は)もうジャニーズも辞めちゃったし、いつまでも、そんなことをグダグダ言っていても仕方がないってことだろうか? でも、私の頭の中でいうなら、TOKIOというのはロックバンドで、〝音楽活動〟がメインのグループだと認識していたのだが…。ところが、その〝音楽活動〟を全て〝白紙〟にしておいて、これからは4人でTOKIOをやっていきますってのも、「何だかなぁ…」と思ってしまう。

福島の復興活動に関しては、素晴らしいことだし、誰にでも出来る事ではない。だったら「これからはTOKIOとしてではなく、僕たち4人のライフワークとして頑張っていきたい」とでも言った方が気骨があってカッコよかったのに。

それと、東京五輪のフラッグツアーでのスペシャルアンバサダー。正直言って、この立ち位置というのが何なのか、ちょっと分かりにくいのだが…。それでも、ジャニーズ事務所としては、都から求められれば、それは当然「お受けしたい」ということになるだろう。だけど、これまで山口の事件では、メンバーが矢面に立ち続けてきたことを考えると、ここはメンバーの意志として「ありがたいお話ですが…」と、逆に断っちゃった方がイメージ的には良かったように思う。そうでなければ、何か二枚舌っぽく見えてならない。ここは一歩引くのも必要だろうと私は思うのだが…。

山口達也の不起訴処分は納得行かない

それにしても、山口の不起訴処分ということについては、前回も、ここで記したが、いまでも納得できない。

結局のところ17歳の女子高生に「強制わいせつ」しておきながら、金(示談金)で無罪放免ってことだろう。事件についても所轄の「麻布警察署」は被害届を受理しただけで、捜査は本庁捜査1課が動いたという。ってことは「強制わいせつ」でも凶悪犯に近かったのではないか?それが「不起訴」になるっていうのが意味が分からない。いくら示談しても、それは被害者との間のことで、法治国家としての日本では事件は事件、犯罪は犯罪だ。自分の犯した罪は、ちゃんと罰せられ償わなくてはならない。

そういえば思い出すことがある。

「わいせつ事件」ではないが、2年前のことである。グラビアアイドルの高部あいがコカインの所持で逮捕されたことがあった。ところが、東京地検は「起訴猶予処分」するという、実に不可思議な出来事があった。

「所持料が微量で社会的制裁を受けた」と言うのが理由だったが、全く理解出来ない。だいたい(自宅で)コカインを所持していて、尿検査も陽性反応。何より本人も認めていた。要は「真っ黒」な犯罪である。「覚醒剤は厳罰に処する」が「コカインだったら…」なんてあり得ないだろう。これが「起訴猶予」っていうんだったら、それこそ酒井法子は完全に「起訴猶予」だっただろう。

東京スポーツはこの事件について「検察は捜査段階から甘かった」とし、担当検事は高部を「あいちゃん」なんて呼んでいたなんて報じた。耳を疑うことである。もちろん、彼女が「妊娠していた」ことも考慮したのかもしれない。だけど、この「起訴猶予処分」には警視庁の捜査員でさえ疑問を抱いたという。

いずれにしても、こんな処分ばかりしているから、芸能人は犯罪に対して認識が甘く、ルーズになるだろう。結果「犯罪に対して芸能界は甘い」なんて言われるようになる。検察は襟を正して欲しいものである。

NHKには事件の責任がある

ところで、山口の「強制わいせつ」事件を考える時、まさに伏魔殿となっているのがNHKの態度だろう。…と言うより、私は事件をウヤムヤにしようとしている。さらに言うなら〝諸悪の根源〟というのは実はNHKなんじゃないかとも思っている。

そもそも、山口と被害者の女子高生の接点というのは、言うまでもなくNHKの教育チャンネルEテレのバラエティ番組「Rの法則」にあった。つまり、番組が〝出会いの場〟だった。

この番組は、10代の出演者が、ファッションだったりグルメだったり、もちろん恋愛も含めて自由に語り合うもだ。出演者たちは基本的にプロダクションから派遣されてくる、いわば〝タレントの卵〟だった。ところが、週刊文春によれば、
「出演者同士が何組もカップルになっていて、(業界では)〝合コン番組〟として揶揄されてきた」 「(プロダクションにとっては)タレントを出演させたくない番組」
でもあったという。

つまり、Eテレの番組なんてのは名ばかり。表向きは青少年の〝健全な番組〟と言いつつ、実は、いわく付きの〝要注意番組〟だったわけだ。おそらく、現場の制作スタッフも、そう思っていたに違いない。

しかも、番組のレギュラー出演者は〝R’S〟と名付けていた。そのメンバーは全て10代が条件で「原則20歳を迎えると〝OG〟〝OB〟扱いになった」という。まるで、民放テレビ局が深夜にでも放送するような番組設定である。

山口の事件で、被害者になった女子高生も、この〝R’S〟の1人で、被害者の女子高校生と山口との連絡先交換では、番組のスタッフが絡んでいたとも報じられている。

だとしたら今回の事件の発端が、そもそも「連絡先の交換」にあったことは明確なわけで、当然、NHKの管理責任者が問われるはずなのだが、NHKは他人事のように、

「スタッフや出演者など可能な限りの調査をした結果、報道されているような事実はありません」。

どんな調査をしたのか分からないが、何とも事務的な見解である。

今回の事件。山口の責任については前述した通りだが、ジャニーズ事務所にしても「管理責任」が問われるのは当たり前である。しかし、当事者はいずれも番組出演者である。

にもかかわらず、NHKは、何と番組を打ち切ることを発表すると同時に「番組の顔である山口が問題を起こし、番組のブランドイメージを大きく傷つけた」とし、山口本人かジャニーズ事務所に対して「損害賠償請求」を検討するとも言い出した。「じぇじぇじぇ」である。

受信料で番組を作っているなんてことは誰だって知っている。昨年は、やはり17歳の女性への〝わいせつ、淫行行為〟が発覚したことで主演ドラマの放送が中止となったことから、損害を俳優・小出恵介の所属事務所に請求したことがあったが、今回は、それとは全く事情が違う。NHKは他人ズラなんてしていられない。大なり小なり責任がある。

と言うより、そもそも真相がハッキリしないのに「損害賠償請求」と騒ぐNHKの神経を疑う。そもそも「〝合コン番組〟として揶揄されてきた」番組のブランドイメージは何だっていうのか?

「Rの法則」レギュラー2名がジャニーズを突然退所

「Rの法則」への疑惑は他にもある。

3月31日付で、レギュラー出演していたジャニーズJr.のメンバー2人が突然にジャニーズ事務所を退所した。NHKでは「Rの法則」を〝卒業〟したと説明しているが、一体…?

2人については、6月にもデビューする予定のグループのメンバーの候補にもなっていたと言われるが、このタイミングで〝退所〟というのは、もしかしたら山口の事件に何らかの関わりがあったのか?と疑ってしまう。

今回の件に、上田良一NHK会長が「遺憾です」というのは当然だろう。だったら、ここは番組の担当プロデューサーはもちろんだが、放送現場の総責任者である放送総局長の専務理事が堂々と出てきて視聴者に説明すべきではないか。何と言っても、Eテレが誇るブランド番組が「関与した」と言われるのである。

「示談となった案件」とか「不起訴になった案件」とか言って、局内での責任をウヤムヤしていたら…。おそらく今のNHKだったら、これからも同じことを繰り返すに違いない。だからこそ、番組の責任者は、今回のことを曖昧にしてしまうことなく、ネガティブな噂は払拭しておかなければ、放送史上でも前代未聞の事件ということになりかねないだろう。

まさに総放送局長としての資質や能力が試される時である。そういった意味からも「説明責任」を果たすべきだと思う。願わくば国会の答弁を真似ることなく「皆様のNHK」らしい見解を望みたいが…。