「サイ・ヤング賞に最も近い日本人かもしれない」「何よりもその投げ姿が美しい」とお股ニキ氏も大絶賛

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「サイ・ヤング賞に最も近い日本人かもしれない」「何よりもその投げ姿が美しい」とお股ニキ氏も大絶賛

今季初実戦では自己最速タイの163キロをマークし、続く登板では3回を投げて7奪三振のパーフェクトピッチを披露。"令和の怪物"・佐々木朗希はいったいどこまで化けるんだ!? 3月19日(土)発売『週刊プレイボーイ14号』では、佐々木朗希本人のインタビューも掲載!

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■プロの中でも別格。3年目の本領発揮!

プロ3年目を迎えた"令和の怪物"ロッテの佐々木朗希がついに本領を発揮しつつある。

今季初実戦となった2月19日の登板では自己最速タイの163キロを記録。続く2月26日の登板では3回を投げて7奪三振パーフェクトの快投と、まさに手がつけられない状況だ。

このままいけば今季どんな結果を残すのか? あの大谷翔平(エンゼルス)が投手3冠を獲得した日本ハム時代の高卒3年目(2015年)と比較してどうなのか?

そこで、入団前から「潜在能力はメジャー最強投手のジャスティン・バーランダー(アストロズ)クラス」と断言してきた野球評論家のお股ニキ氏に、佐々木朗希の何がすごいのかを解説いただこう......と思ったところ、「『何がすごいか』という表現はよくないですね」という回答がまず返ってきた。

「ただ球が速いとか、フォークがすごいとか、何かひとつだけがすごいのではなく、すべてが超一級品。3年前はバーランダーとも比較しましたが、昨季後半の投球内容であれば、2年連続サイ・ヤング賞投手のジェイコブ・デグロム(メッツ)と比較しても遜色ありません。何よりもその投げ姿が美しいんです」

昨季の佐々木といえば、11試合登板で3勝2敗。むしろ、この数字のせいで佐々木のすごみがイマイチ認知されていないところがある気がする、とお股ニキ氏は語る。

「3勝止まりとはいえ、中継ぎに勝ちを消された試合も3、4度ありました。また、前半戦が1勝2敗で防御率3.76だったのに対し、後半戦は2勝0敗で防御率1.22、奪三振率は10.70。四球も少なく、シーズン通算での防御率は2.27と安定感がありました。それがひと冬越えてさらにすごみを増した結果、超人集団のプロ野球選手の中でも頭ひとつ抜けた、別格の存在になっています」

■どの球種も進化。捕球音も桁違い!

続いて、具体的な球種や投球内容から、佐々木の現在地を探っていこう。

情報メディア「SPAIA」によれば、昨季の「球種別被打率」を見比べると、フォークが.101、スライダーが.088とほぼ無双状態なのに対して、ストレートは.308。いくら速くても課題があるということか?

「昨季の後半からストレートも変わりました。端的にわかるのが平均球速。『SPAIA』によれば、昨季前半では平均151キロだったのが後半では154キロ、ポストシーズンでは155キロ。球速が上がるにつれて縦変化量も増したようで、右上に食い込みながら浮き上がるようになりました」

2月26日の練習試合では平均156.2キロとさらに球速を上げているだけに、ストレートの被打率も今季はグッと下がりそうだ。

「常時安定して150キロ台後半を計測する日本人投手はまずいません。キャンプでのブルペン動画が公開されていますが、捕手の『ズドーン!』という捕球音がもう桁違いで、まるで爆発音です。

また、佐々木は変化球も超一級品のため、打者はタイミングを合わせてストレートを狙うしかない。ややシュート回転するストレートだけ被打率が高かった理由でもあります」

では、その超一級品の変化球も深掘りしたい。キャンプでのブルペン動画やここまでの練習試合を見る限り、スライダーやフォークはもはやプロの打者でも手がつけられないレベルに感じてしまう。

「佐々木のフォークは、サイドスピンがかかりながら大谷のスプリットより少しシュートしつつ落ちるイメージです。さらに、決め球としてややスライド気味に落としたり、落差を大きくしたり、小さくしたりするなど、数種類のフォークを投げ分けています。

その上で、スライダーは私が『スラット』と呼ぶ軌道で、途中で見えない壁に当たって曲がったような急激な変化をします。この球もジャイロ回転しているため、フォークと見まがうことも。実況や解説も判別できないほど優れています。正直、バットに当てることすら困難です」

■サイ・ヤング賞も視野に。「背番号17」最強論!

冒頭でも触れた「プロ3年目の大谷翔平」との比較も見ていこう。共に東北出身で190cm台の高身長、160キロのストレートを操り、鋭く落ちる球を武器とする共通点がある一方で、どんな違いがあるのか? そして佐々木が上回っている点は?

「スピードとフォークは同格以上。佐々木のスライダーは縦のスラット型なのに対し、大谷は横スライダー型です。これはどちらが上ということではなく、タイプの違い。佐々木のほうが上かなと思うのは制球力や再現性、安定感です。

大谷にしても、同じ高身長のダルビッシュ有(パドレス)にしても、コントロールがビタビタというわけではなく、抜けや引っかけもあります。でも、佐々木はそれがなく、制球力が抜群。あれはもう才能です」

そんな佐々木に、もはや課題はないのか?

「ゴロの処理やクイック、走者を置いてから球速が下がる点など、細かな課題はいくつかありますがそれも徐々に改善しています。ロッテ球団の過保護すぎと思われた指導方法が功を奏したともいえます。

心配なのは靱帯(じんたい)系のケガですが、その点は高校時代にも大切に守られて登板過多になっていないので、不安視しすぎなくていいかもしれません」

ちなみに、高卒3年目の大谷は15勝で最多勝。さらに防御率と最高勝率のタイトルを獲得。この成績と比較したくなるが、どこまで目指せるか?

「7回10奪三振1失点といった試合を年間20試合はやりそうなイメージ。ただ、白星がつくかは対戦相手や抑え次第の部分も。

その点、開幕投手ではないと決まったことは、数字的な意味では好材料。試合巧者のエース級との投げ合いは減るわけですから。いずれにせよ、一年間ローテを守ることができれば、おのずと数字もついてくるはず」

気は早いが、1年後にはWBCも開催予定。その先のメジャー挑戦も含め、対外国人選手への対応はどうか?

「中止になった今月の侍ジャパン代表戦にも、栗山英樹監督は招集予定だったと明言。それほど期待している証拠です。

また、スラット・スプリット型の投球スタイルは対外国人相手に有効で、メジャーでも確実に通用します。大谷が投手に専念しないのなら、サイ・ヤング賞に最も近い日本人は佐々木かもしれない。もう大谷と佐々木、『背番号17』が最強の時代ですよ」

"平成の怪物"松坂大輔が昨季限りで引退し、時代が移り変わろうとする今、"令和の怪物"の成長度合いが楽しみでならない。

文/オグマナオト 写真/共同通信社