ルーツは砂漠の戦場!?
1980年代ダカール・ラリーでBMWが
新しいカテゴリーを生んだ

最近Newモデル情報で見かけることの多いアドベンチャー・ツアラー。今までのツアラーとは異なり無骨で逞しい。砂漠や大自然の中を駆けるサバイバルなイメージが、どうして旅バイクとオーバーラップするのか。

まずアドベンチャー・ツアラーというカテゴリーを知る上で、なくてはならないのがBMWのR80G/Sというルーツ。
フランスの冒険好きたちが四駆やオフロードバイクでチャレンジをはじめたダカール・ラリーだが、ここに意外な挑戦者が現れた。ほとんどがアメリカなど過酷なデザートラリーで活躍してきたビッグシングルだった中に、当時ツーリングバイク専業に思われていたジェントルの代表格で水平対向ボクサーのBMWが参加してきたのだ。

しかしBMWは既に勝算があった。第二次大戦の戦車が主役のアフリカ戦線で、BMWの軍用バイクは砂漠地帯の偵察任務で高い機動性を誇り、ドイツ軍に大きなアドバンテージをもたらしていた。アメリカ軍はハーレーに水平対向の軍用バイクをつくらせたほど、不整地を高速でカッ飛んでいくサバイバルさに圧倒されていたからだ。そう、ボクサーはもともと砂漠に強かったのである。
そのノウハウを基に開発されたパリダカ専用のG/Sは、不整地から護るためエンジン位置を高めに設定、クランクより上に機能パーツがない低重心だったメリットと、そもそも高速で突っ走る縦置き水平対向2気筒の特性が重なり、一見重く大きそうなG/Sがみるみる砂漠の彼方へ消えていく姿を人々は唖然と見送ったという。こうして第2回ダカール・ラリーに優勝、BMWのイメージを一変させてしまった。

BMW R1250GS

こうしたサバイバルなシーンが大好きなアメリカで、G/Sは大容量のツアーケースを装備したり、それぞれで工夫をした大柄なスクリーンを装着するなど、独自のカルチャーが築かれ瞬く間に人気となり、以来BMWではカテゴリー別の生産台数では常にGSがトップという王者の存在となっているのだ。

HONDA CDF1100L AFRICA TWIN

そんなG/Sの独壇場が暫く続いたのは、アフリカツインを専用エンジンで開発したホンダは特別で、他メーカーでは対抗できるエンジンがなかったからだ。それがスーパーバイク系エンジンを、ストリートリーガルへ展開させるなど拡がりが出てきたのと、ストリートスクランブラー系など、実際にオフロードを走るのが目的ではないものの、道なき道への可能性を漂わせることで旅への思いが募るイメージも定着してきた相乗効果が、新たな胎動に勢いをつけてきている。
ということで、ほぼすべてのメーカーから様々ニュアンスの違いはあれど、アドベンチャー系をベースにしたツアラーがランナップされるようになったのだ。

HUSQVARNA NORDEN 901

北欧ハスクバーナから発売されたノーデン901。KTM傘下となり鍛え抜かれた走破性と北の大地イメージにモダンな北欧デザインの融合で、冒険心をくすぐる新時代のアドベンチャー・ツアラーとして期待大だ

そんなサバイバルな走行シーンのためのカテゴリーだと、オフロード未経験では扱い切れないと思いがちだが、実は跨ってみるとアドベンチャー ・ツアラーは意外なほどスリムで軽快性もあり、見た目ほどスパルタンではない。重心の高さからくる旋回性の良さ、視野の広さ、高速走行時の安定性も加わり、乗り手に征服欲を満たしてくれるラフなスロットル操作を楽しませる醍醐味や、大きなバイクの優越感と安心感も与えてくれるのだ。
最高速度が300km/hを超える頂点バイクより、マッチョでサバイバルな冒険(アドベンチャー)をイメージさせるビッグオフローダー人気は、まだまだ高まる機運にある。
高そうに見えるシート高も、アジャスト機能でかなり低くすることも可能だ。これまでになかった新鮮味に溢れるアドベンチャー・ツアラーに、これからのバイクライフを託してみようと思うライダーが増えていきそうだ。

DUCATI DESERT X

間もなく発売されるドゥカティ・デザートXは、過去のダカール・ラリーをインスパイアしたデザインで、勇猛なスーパースポーツエンジンとのコンビネーションは、乗り手をワクワクさせる要素を多分に散りばめられたアドベンチャーの新顔

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