わが家にアウトドアリビングを。狭小でもアリ、プランの極意を解説
自宅にアウトドアリビングをつくって、バーベキューやキャンプ気分を満喫しましょう。「調理場、水道、電気のある外空間にすれば、これほど楽しく、ぜいたくな場所はない」。そう話すのは、一級建築士の守谷昌紀さん。自身が設計した、条件の異なる5つの事例をもとに、アウトドアリビングのつくり方を解説してくれました。新築はもちろん、リノベーションでも活用できるアイデアも!
事例1. 高台の眺望とバーベキューを楽しむアウトドアリビング
こちらの家は、南に面した傾斜地に建っています。東側は4mほど下がっており、とくに南東への眺望がすばらしい敷地でした。
周辺から視線を気にしなくてもよいように、2階バルコニーの壁を2mほど立上げました。そして、南東角にL字の開口部を設けています。
アウトドアの魅力は、自然と一体となり、開放的な気分を味わえること。でも、他人の目があると、そうはいきません。つまり、快適なアウトドアリビングをつくるいちばんのポイントは、「プライバシーの確保」にあります。
そういう意味で、身長より高い2mの壁には、非常に大きな役割があるわけです。
アウトドア料理の醍醐味、炭火でのバーベキューを楽しむ場合には、火の粉についての配慮も必要です。こちらの家は鉄筋コンクリート造なので、床もコンクリートとしました。これなら火の粉も、汚れもすぐに水で流すことができます。
「日よけ」があることもポイント。バーベキューの食材は、海鮮、肉などのように、暑さに弱いものです。
こちらの場合は、1.2mの深い庇(ひさし)を設けました。高い位置にあとで日よけを設けるのは意外と難しく、計画の段階で設計に織り込んでおくことがとても重要なのです。
日よけは、ただ深ければよい訳でもありません。夏の日差しはさえぎり、冬の日差しは一切さえぎらないのが理想です。
それが内部空間とのつながりを、よりよくすることにもつながります。
事例2. 密集地の狭小住宅でも楽しめるアウトドアリビング
こちらは、市街地の20坪ほどの小さな敷地に、プランしたケースです。南側正面にマンションが建っていたので、そのから目線をさえぎれるよう、イタウバという堅木のルーバー(隙間をあけて細長い板を平行に並べたもの)で、アウトドアリビングをおおいました。
2階に18畳のLDKがあり、その南に7畳のアウトドアリビングがつながります。サッシをフルオープンとすれば、「18+7=25」畳が一体の空間となるのです。
3階のバルコニーから見下ろすと、その形状がよくわかります。
アイランドキッチンに連続するダイニングテーブルから、斜めに目線が抜けることで、より広さを感じるようにプランしてあります。
キッチンが近くにあると、文字通り「外食」の準備もラク。
こちらのご家族は、ホットプレートを使っての料理がお気に入り。外空間なら、煙やにおいも気にする必要がありません(もちろん、近隣への配慮は必要です)。
屋外用のコンセントは、どの位置でどのような料理をするかまで考えて、配置しておきたいところです。
イタウバは、フィールドアスレチックの遊具にも使われる強い材料です。そのルーバーで囲われたアウトドアリビングは、子どもにとって格好の遊び場。
雨風に強い材料を選択すること、屋外用コンセントの位置が重要なことを、知識として覚えておきましょう。
事例3.オーニングつきの庭とつながる、L字のアウトドアリビング
市街地としてはかなり大きな庭と、アウトドアリビングが連続する事例です。
南側に2.7mの塀を設けることで、窓を開けてもプライバシーが確保できるよう配慮しました。
25畳ほどあるLDKの南と西にアウトドアリビングがあります。
庭とつながるアウトドアリビングは、L字に連続させることで、より広く多様的な使い方ができるようになっています。
床面をタイルにしておけば、愛犬のブラッシングあとの掃除も簡単です。1.2mの軒があるのですが、さらにオーニングもつけました。
オーニングを伸ばすことで、日差しが強いときも、雨のときも外空間を利用しやすくなります。また、夏の午後の西日対策に有効です。
事例4.リノベーションでもできるアウトドアリビング
こちらは市街地に建つ、北向きの4軒長屋です。中央2軒分をフルリノベーションしました。
2階LDKに面して、アウトドアリビングを配置しています。
風通しと、雨水のフローに配慮し、裏の路地とアウトドアリビングをつなげています。建物の中に配置する際は、大雨対策として、排水をしっかり考えておく必要があります。
南に周辺建物が密集しているため、真上から落ちてくる光と風を、室内に届ける役割も担っています。
屋根上にある月見台、洗濯干しともつながっているので、一粒で3倍おいしい空間といえるでしょう。
4軒長屋の中央にアウトドアリビングを配置することで、外部からは想像できないほど、劇的に明るく居心地のよい空間になりました。
月見台横に物干しエリアをつくったので、アウトドアリビングには、生活感を持ち込まずにすんでいます。
木造長屋の中央にあるので、床の仕上げはやはり慎重に選択しなければなりません。現在では、防水、防火性能の高い仕上げ材があるので、そういった材料をセレクトすることも大切です。
小さい子どもがいる家庭では、プール遊びにも最適です。
家事をしながらも目が届くので、キッチンが横にあるアウトドアリビングは、子育て世代ならより価値があるでしょう。
コンセントと同様、水道をあとで引くのは割高になるので、しっかりつめておきたいポイントです。少し費用はかかりますが、お湯が出ると理想的です。
リノベーションの場合は、設計図もなく行き当たりばったりの工事になりがちです。後悔しないよう、専門家に相談するといいでしょう。
事例5.ハンモックをつけたいときは要注意
最後は事例1と同様に、眺望のよい敷地で、池のほとりに建つ家です。
アウトドアリビングにハンモックをつりたいというのは、よくある要望です。
こちらのケースは2階バルコニーの床がグレーチング(格子状の建造材。鋼材などからなる)だったので、問題なく設置できました。
ハンモックはかなりの荷重がかかるので、事前にどこにどのようなものをつりたいかを明確にしておく必要があります。
家具的なもの、オプションに見えるものは、「あとでまた」となりがちです。でも、ここで要注意。「荷重がかかるもの」の多くは、設計段階でなければ解決できないことがあります。
大事なことは、使い方、設備、素材をしっかり押さえること!
5つの事例を通して、アウトドアリビングがあれば、家にいながらにして、開放的な気分を味わえ、豊かな時間が生まれることを解説しました。
後悔しないアウトドアリビングを実現するには、まず内部空間とのつながりを考え、どんなふうに使いたいかを明確にすること。そして、雨風に強い材料をセレクトすることと、後工事(あとこうじ)が難しい水道やコンセント等の設備を、しっかりと計画して進めることが重要です。
そのポイントさえ押さえておけば、新築はもちろんリノベーションでも、満足度の高いアウトドアリビングがつくれます。
ぜひアウトドアリビングのある、豊かな暮らしを実現してください。