特集です。普段そこにあることが当たり前だと思っている店舗やサービスがふと気づいたらなくなっていたという経験をした人もいらっしゃると思います。

時代の流れや新型コロナウイルスの影響でこのようなケースが一層増えています。14日、長きにわたって愛されてきたそば店が営業を終えました。

多くの人が行き交う鉄道駅。仕事、旅行、里帰り・・・鉄道を使う理由は人それぞれですが醍醐味の一つが駅そば。待合室やホームの一角に構え乗り換えの待ち時間にちょっと一杯。

しかし、時代の流れかホームに建つ立ち食いそば店は少なくなりつつあり、栃木県内でも14日、名店の灯が消えました。

JR小山駅。新幹線と在来線4線が乗り入れる県南の玄関口です。

私たちが取材したのは今月11日。駅の構内にはご覧の長い列。

宇都宮線上りホーム、店の名前は「きそば」。この店は味にとにかくこだわりました。鯖節とウルメ節からだしをとった黒くて甘みのあるつゆに中太のゆでそばが絡み合う昔ながらの素朴な味。

多くの利用者に愛されてきましたが契約期間の満了、コロナ禍で採算が取れなくなり営業終了が決定。12月14日、委託運営する「中沢製麺」がウェブで閉店を発表すると惜しむ声が多数寄せられました。

こうした声に比例するように行列は日に日に伸び普段は3~400杯のところ3連休には過去最高900杯以上を記録しました。

この状況に中澤健太社長は「お客様に申し訳ないというのが第一です。365日休みなく一杯一杯そばを提供していたので、継続してきた30年というのがお客様にご利用いただく状況を生んだ」     

きそばは戦後まもない1950年代から営業を始め、1991年に中沢製麺が業務を引き継ぐと以来30年以上にわたりその味を守り続けてきました。

2007年に新海誠監督のアニメ映画「秒速5センチメートル」に両毛線ホームにあった店舗が描かれ「聖地巡り」に訪れるファンも多数現れました。

その新海監督もツイッターで閉店に言及。移ろいゆく時の流れに想いをはせました。

この日の客も名残惜しそうに食べおさめ。話を聞けば聞くほど地元の人々にとっては思い出に残る味でした。店舗の閉店でこの味はなくなってしまうのでしょうか。

小山駅から店舗はなくなりますがそばやつゆの販売は継続。この日も直売所できそばの麺を買い求める人の姿がありました。

さらに、こんな取り組みも・・・小山市の企業がキッチンカーの営業を申し出、全国各地どこでも慣れ親しんだきそばが食べられるようになるということです。

人生の分岐点の人も旅に心をときめかせた人もみんなの思いをすべて受け入れるかのように出迎えてくれた温かい味。

駅からは姿を消しましたが名店の味はこれからも変わらず続いていきます。

映画のモデルになったほどの名物だったわけですが、施設を管理するJR東日本クロスステーションではニーズはあると見込んでいて今後、活用方法について検討を進めるとしています。

そしてVTRに登場したキッチンカーですが、1月30日に小山市で開かれるマルシェでデビューします。2月も佐野市での出店が決まっていて、運営する企業は依頼があれば全国各地に行くと 話していました。

愛された名店の味、いつまでも続いてほしいですね。