電力会社が「ペットや恋人を抱きしめて暖を取るべき」「おかゆを食べてアルコールを控えて」というメールを顧客に送付したことを謝罪

写真拡大 (全3枚)



イギリス第3位のエネルギー企業であるOVO Energyが、「ペットや恋人と抱き合う」「心のこもったおかゆを食べる」といった暖房費を節約する方法を顧客宛てのメールで紹介したことで、イギリス議会の一部議員から「侮辱的だ」という非難の声が挙がり、謝罪に追い込まれる事態となったことが報じられています。

Cuddle your pet to keep down bills, says energy supplier Ovo | Financial Times

https://www.ft.com/content/d9b37011-b32a-4209-b6e8-f23b9c7ffda2

Energy firm sorry for telling customers to ‘cuddle pets’ to keep warm - STV News

https://news.stv.tv/world/energy-firm-sorry-for-telling-customers-to-cuddle-pets-to-keep-warm

問題のメールはOVO Energyが一部の顧客に送ったもので、「この冬を暖かく過ごすための簡単で費用対効果の高い方法」として「ペットや恋人と抱き合って快適に過ごす」「ワインやウィスキーは体から熱を奪うので避け、ノンアルコール飲料を飲む」「血流を促進して体を温めるたえにショウガを食べる。ただし唐辛子は汗をかくので避ける」「消化に時間がかかる、心のこもったおかゆを食べて体温を上げる」「子供たちにフラフープの練習をさせる」「家を掃除する」「スタージャンプなどの全身トレーニングを数回行う」といったアドバイスが紹介されました。



OVO Energyが暖房を節約するようにメールで訴えかけた背景には、イギリスで光熱費が高騰している事実があります。イギリス日刊紙のフィナンシャル・タイムズによると、イギリスは「リーマンショックに端を発する金融危機以来11年ぶり」とされる景気後退に突入しており、2022年4月には数百万世帯の光熱費が50%以上増加し、1世帯当たり年間2000ポンド(約31万円)になると予想されているとのこと。

しかし、光熱費の節約を促すOVO Energyのメールに対して、イギリス労働党の政治家でビジネス・エネルギー・産業戦略委員会の委員長を務めるダレン・ジョーンズ議員は「OVO Energyは無神経な発言をしたことを顧客に謝罪するべきだ」と述べました。また、他の労働党議員からは「多くの家庭が困難な状況にあるときに、暖房をつける代わりにジャンパーを着ろと言われるのは、明らかに不愉快だ」「OVO Energyのアドバイスは滑稽で、気が滅入るものだ」という声も挙がりました。

また、イギリス保守党のテレサ・ヴィラーズ議員は「OVO Energyのアドバイスはおそらく善意によるものですが、それにしてもかなり無神経です。多くの人が光熱費の高騰に不安を感じており、全身トレーニングをやれと言われても快く思わないでしょう」と述べています。さらにフィナンシャル・タイムズによれば、ある政府関係者は、「おかゆを食べてアルコールを控えるように」というアドバイスに対して「まるでチャールズ・ディケンズの小説『クリスマス・キャロル』で描かれた悪夢のようだ」とコメントしたそうです。



労働党のクライヴ・ルイス議員は「OVO Energyのアドバイスは笑えない上に侮辱的ですが、エネルギー戦略を持たないイギリス政府のことだからむべなるかなといったところです。食事と暖房のどちらかを選ばなければならない人々が、OVO Energyからのメールを読むことになるでしょう。もしそれが今のイギリスの状況であるならば、私は非常に憂うつです」と述べました。

OVO Energyは一連の批判を受けて、「私たちは、多くのお客様にとって今年の状況がいかに厳しいものであるかを理解しています。私たちはエネルギー危機に立ち向かうため、有意義な解決策を見出すべく努力していますが、メールの内容は判断が甘く、お役に立てなかったと認識しています。お恥ずかしい限りですが、心よりお詫び申し上げます」と謝罪のコメントを発表しました。