巨人・菅野智之(左)と中日・高橋周平【写真:荒川祐史】

写真拡大

3球団競合も分かれた明暗、藤岡貴裕と高橋周平

 今年は10月11日にプロ野球ドラフト会議が行われる。10年前、2011年秋のドラフト会議で栄光の“ドラ1”指名を受けた選手は今、どうしているだろうか。

 この年、1位で入札されたのは7選手。3球団競合になった藤岡貴裕(東洋大)は横浜、楽天との抽選の末、ロッテが引き当てた。ルーキーながら開幕1軍入りを果たし、2014年まで主に先発として投げたものの、3年連続で6勝どまり。その後リリーフに転向すると次第に出番を減らし、2018年シーズン途中に日本ハム、2020年に巨人へと移籍した。同年限りで戦力外となりプロ通算成績は178試合に登板し21勝32敗。9年間の現役生活だった。

 同じく3球団が競合したのは高橋周平(東海大甲府高)だ。オリックス、ヤクルトと抽選の末中日が交渉権を獲得。1年目から1軍でも41試合の出番を得て、本塁打も放った。6年目の2017年までは、ポジションが定まらなかったこともあってか打撃も安定感を欠いていたものの、2018年以降はレギュラーに定着、三塁で2度のゴールデングラブを受賞するなど今やセ・リーグを代表する内野手だ。

 2球団が競合したのは菅野智之(東海大)だ。巨人との競合の末、日本ハムが引き当てたものの、伯父の原監督が指揮を執る巨人入りを熱望し入団拒否。翌年、改めて巨人の1位指名を受けプロ入りする。結果的にこの年のドラ1選手で最も成績を残していると言えるのは菅野で、2013年の巨人入りから昨季までの8年間、2桁勝てなかったのは2016年(9勝)だけという安定ぶりだ。

 単独指名は4選手。広島は野村祐輔投手(明大)を指名した。1年目9勝11敗、防御率1.98の好成績で新人王に選ばれ、2016年には16勝でセ・リーグ最多勝。一貫して先発として起用され、今年4月11日の巨人戦ではプロ初登板から188試合連続先発という日本記録を達成した。

 阪神は伊藤隼太外野手(慶大)を指名。走攻守揃った選手という評価だったが、プロでは定位置をつかめなかった。2014年に52試合に出場、打率.294を残したのがベストシーズンで。2019年を限りに戦力外となった。通算365試合出場、154安打で打率.240。現在は四国アイランドリーグの愛媛で選手兼任コーチを務めている。

外れ1位では1軍未出場のまま引退した選手も…

 西武が単独指名に踏み切ったのは十亀剣投手(JR東日本)だ。横手からのくせ球が特徴で、1年目から1軍で41試合に投げ6勝、防御率2.72の好成績を残した。2015年には2桁の11勝。今季はリリーフとして登板機会を得ている。

 ソフトバンクは武田翔太投手(宮崎日大高)を指名。大きなカーブを武器に、高卒1年目から8勝を挙げた。2015年からの2年間は連続2桁勝利を挙げ、チームのエース格として活躍。2015年のプレミア12、2017年のWBCでは侍ジャパン入り。戦力の充実したチームで、近年は登板機会を減らしてきている。

 外れ1位では、横浜と巨人が松本竜也投手(香川・英明高)で競合し巨人が引き当てた。2015年まで4年間在籍したものの1軍登板はなく、さらに野球賭博への関与が明らかとなり、NPBより失格選手として公示。プロ野球界での活動を一切禁じられるという末路をたどった。

 2回くじを外した横浜は北方悠誠投手(唐津商)を指名。NPBでの1軍登板はなかったものの、独立リーグを経由してドジャースとマイナー契約を果たすなど、波乱万丈の野球人生を送っている。

 藤岡を外した楽天は武藤好貴投手(JR北海道)、ヤクルトは川上竜平外野手(光星学院高)を指名した。武藤が在籍6年で通算85試合登板、川上は在籍7年で1軍出場なし。高橋を外したオリックスは安達了一内野手(東芝)を指名した。2016年に難病の潰瘍性大腸炎を患っていることが判明しながらも、遊撃での守備力は高く評価され、今季は二塁にも挑戦。オリックスの内野に欠かせないピースとして10年間活躍を続けている。

 ドラフト1位で指名されても、プロでの活躍が約束されたわけではない。10年後の今も、NPB現役を続けている選手は6人にすぎず、1軍未出場に終わった選手も3人いる。今年の会議で“ドラ1”となる12人は、どのような野球人生を送るだろうか。(Full-Count編集部)