ホンダ「新型ヴェゼル」のスタイリング。価格は、227万9200円〜329万8900円(写真:ホンダ

現在、大人気のジャンルに成長したクロスオーバーSUV。その中でも、SUVらしい安定感とクーペの流麗なフォルムを両立させた「クーペSUV」は特に高い人気を誇っている。そんなクーペSUVの中でもコンパクトなサイズと買いやすい価格で人気を博し、このジャンルの先駆者とも言えるのが、2013年に登場したホンダの「初代ヴェゼル」だろう。


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そんな「ヴェゼル」がおよそ8年の時を経て、2代目へとフルモデルチェンジを果たした。はじめてその姿が公開された時点では、他メーカーのクロスオーバーSUVに似ているという意見も聞かれたが、いざ発売してみると圧倒的に人気で、すでに年内納車は難しいと言われるほどとなっている。

そこで今回はそんな人気の「新型ヴェゼル」を狙うのであれば、どのグレードがベストなのか考えてみたい。

ハイブリッドの「e:HEV」をメインにしたグレード構成

新型となったヴェゼルも先代と同じく、1.5リッターエンジンの純ガソリンエンジンモデルと、そこにモーターを組み合わせたe:HEVと呼ばれるハイブリッドモデルという2種類のパワートレインが用意されている。先代には、モデル途中で追加された1.5リッターガソリンターボモデルも存在していたが、新型ではラインナップから消滅しており、現時点では遅れて登場する予定もないそうだ。


ヴェゼルのリヤスタイリング(写真:ホンダ

ここで気になるのが、それぞれのグレード体系だ。e:HEVには、「X」、「Z」、「PLaY」と、3つのグレードが用意されているのに対し、ガソリンモデルは「G」のみのモノグレードとなっている。さらに装備内容も「G」は、e:HEVのエントリーグレード「X」と同等のものとなっており、現状でガソリンモデルは廉価グレードという位置づけになっていると言わざるをえないだろう。

とはいえ、必要な装備はほとんど備わっているし、質感が大きく向上したにもかかわらず先代のガソリンモデルのベースグレードから16.5万円アップにとどめられているのだから、新型ヴェゼルのスタイリングにほれ込んだというユーザーであれば、購入しても不満が出ることはなさそうだ。


ヴェゼルe:HEV Zのインテリア(写真:ホンダ

ハイブリッド仕様のe:HEVを狙うのであれば、実質「Z」か「PLaY」の2択と言ってもよさそうだ。もっともベーシックな「e:HEV X」は、265万8700円〜という価格が魅力ではあるが、「e:HEV Z」を選ぶことで、コンビシート(フロントヒーター付)やヒーター付本革巻きステアリング、18インチアルミホイール、クリアブラック塗装バンパーガーニッシュといった見た目に関わる部分はもちろん、ハンズフリーアクセスパワーテールゲートやブラインドスポットインフォメーション、LEDアクティブコーナリングライトといった機能面でも大幅なアップデートがなされる。それでいて価格差はおよそ24万円なのだから、非常に魅力的と言えるのではないだろうか。

特に最近では、残価設定クレジットで車両を購入するユーザーも少なくなく、24万円の価格差は分割払いにしてしまえばほとんど吸収されてしまうし、最後に車両を手放すタイミングでは間違いなく上級グレードのほうが高値になるはずだ。そう考えると、充実装備の満足度も踏まえて、「e:HEV Z」以上のグレードがオススメであることは言うまでもないだろう。

「e:HEV Z」と「e:HEV PLaY」の違いは?

では、「e:HEV Z」と「e:HEV PLaY」の違いはどこにあるのか? まずはコンビシートがグレージュの明るい色合いとなり、パノラマルーフも標準装備となることで、「PLaY」の名前の通り明るくアクティブな印象となる。また、ほかのグレードでは、メーカーオプションとなる「Honda CONNECTディスプレー+ETC2.0車載器」が標準装備となる点も大きな違いだ。

カタログ記載の価格でみると、「e:HEV Z」が289万8500円に対し、「e:HEV PLaY」は329万8900円と、かなり価格差があるように見えるが、「e:HEV Z」に前述の「Honda CONNECTディスプレー+ETC2.0車載器」のメーカーオプションをプラスすると311万8500円となり、その差はわずか18万円ほどとなる。


e:HEV PLaYのパノラマルーフと、インパネ+コンビシート(写真:ホンダ

専用コンビシートとパノラマルーフが備わることを考えれば、妥当な価格差ということになり、これらの装備を魅力的に感じるユーザーにしてみれば、決して高いグレードとは言えないだろう。ただし、「e:HEV PLaY」は、4WDモデルが存在しないため、降雪地帯などで4WDを求めるユーザーには必然的に「e:HEV Z」がオススメとなってしまう。

従来のハイブリッドモデルの4WDは、リアはモーターで駆動する補助的な意味合いが強かったのだが、新型ヴェゼルのe:HEV 4WDは、ガソリンモデルと同様にリアタイヤをプロペラシャフトで直結したシステムを採用している。そのため、本格的な4WDが必要な地域のユーザーにもオススメできるものとなっているのである。


ヴェゼルのラゲージスペース(写真:ホンダ

新型ヴェゼルのメーカーオプションは、「Honda CONNECTディスプレー+ETC2.0車載器」と「ワイヤレス充電器」のセットオプション(e:HEV PLaY以外に設定)と、「プレミアムオーディオ(10スピーカー)」と「マルチビューカメラシステム」のセットオプション(e:HEV Zとe:HEV PLaYのHonda CONNECTディスプレー装着車に設定)の2種類しか存在しない。

「Honda CONNECTディスプレー」とは、いわゆるメーカーオプションのナビゲーションシステムであり、新世代コネクティッドサービスを活用することで、スマホがクルマのキーになるデジタルキーや自動地図更新、リモート操作なども使用可能となるもの。

これは「e:HEV PLaY」以外にメーカーセットオプションとなっているもので、その価格は22万円。一応、社外ナビ用に「ナビ装着スペシャルパッケージ」も用意されているが、ディーラーオプションのオススメナビである「9インチ プレミアム インターナビ」を装着すると、合計で21万1043円となるから、ほとんど価格差はないと言える。

また、残価設定クレジットで購入する際、残価の算出は、“車両本体価格の〇〇%”という計算になるのだが、この車両本体価格にはメーカーオプションは含まれるがディーラーオプションは含まれない。そのため、残価設定クレジットで購入を検討しているのであれば、メーカーオプションを選んでおいたほうが得策ということになる。

「プレミアムオーディオ(10スピーカー)」と「マルチビューカメラシステム」のセットオプションは12万7600円高となるもので、音楽にこだわりのあるユーザーであれば検討したい装備と言えるが注意点がひとつ。それは、トランクスペースの壁面にサブウーファーが埋め込まれるため、トランクスペースの横方向の余裕がなくなってしまう点だ。

新型ヴェゼルのベストチョイスは?

クーペスタイルで荷室がそこまで広くないヴェゼルは、ゴルフバッグを収納する際、この壁面のくぼみを活用するのだが、プレミアムオーディオを選択することでこの部分が使えず、ゴルフバッグを横に収納することができなくなってしまうのである。もちろんリアシートを倒せば、問題なく収納できるのだが、リアシートをそのままにゴルフバッグを収納したいと考えるユーザーは注意したいポイントだ。


ゴルフバッグの積載イメージ(写真:ホンダ

ということで、新型ヴェゼルを狙う際、スタイリッシュな見た目にひかれて価格を抑えたいなら「G」、充実装備で4WDが必要であれば「e:HEV Z 4WD」、新型ヴェゼルらしさを満喫したいのであれば「e:HEV PLaY」という選択肢が現実的ではないだろうか。納期がかかるゆえに、後から後悔しないためにも、しっかり吟味してベストな1台を選んでいただきたい。