方向指示器は30m手前・3秒前に出すのがルール!

 世の中にはウインカー(方向指示器)を出すことを頑なに拒んでいるかのような運転をするドライバーもいるが、道路交通法では右左折時には交差点の30m手前、車線変更の場合は3秒前にウインカーを点滅させるなりして後方車両に合図を出すことが決まっている。

 このルールを厳密に守るとすると、ブレーキとウインカーを出すタイミングは走行速度によって変わってくる。

 たとえば60km/hで走行していて、その先にある交差点を徐行で左折しようとすると、フルブレーキングでも減速に必要な制動距離は40m程度となるし、まして日常で使うようなやさしいブレーキングであれば60m以上手前からブレーキをかけることになる。

 ちなみに、30km/h程度で走っていたとすると、フルブレーキングでの停止距離は15m程度と考えられるので、おそくとも交差点の30m手前あたりでブレーキをかけはじめるだろう。つまり、ブレーキをかけると同時にウインカーを出す必要があるわけだ。

 というわけで、ブレーキを踏んでからウインカーを出すというのは道路交通法から解釈する操作としては正解だ。しかし、それが円滑なドライビングにつながるかといえば疑問もある。なぜなら、後方を走るクルマのドライバーは先行するクルマがどのように走りたいのかは、わからないからだ。

 60km/hで流れている道路で、青信号の交差点が近づいてきたときに突然前のクルマがブレーキをかけると「前方になにか障害物があるのか」と思わせ、驚かせてしまうこともあるだろう。そうであれば、どんな速度からであってもブレーキと同じタイミングでウインカーを出すことで「交差点を曲がるので減速しますよ」という意思を伝えてあげたほうが親切といえる。

 もっとも安全な速度に落とすことは、ウインカーを出すという行為よりも重要だ。ウインカーを出すことに気を取られてはブレーキが遅れてしまっては意味がないことは肝に銘じておきたい。

ウインカーは意図的なコミュニケーション手段だ

 そもそもブレーキランプはドライバーが意識的にしなくてもブレーキペダルを踏めば、連動して点灯するようになっている。一方で、ウインカーについてはそのタイミングを含めてドライバーに完全に任せられている。

 つまりウインカーはドライバー同士のコミュニケーション手段として捉えることができる。冒頭で記したように交差点を曲がる場合には30m手前でウインカーを作動させるのがルールではあるが、状況によってはもっと早めに出したほうが後方車両に動きを伝えることができる。そうした心遣いができることがスマートなドライバーといえるだろう。

 逆に、先行するクルマがブレーキをかけてしばらくしてからウインカーを出したからといって先行するクルマを非難するような気持ちになるのもおかしな話だ。

 ブレーキとウインカーのタイミングがうまく合っていればスマートではあるが、公道を走っている限りは先行するクルマがどのような動きをするのかを予想しながら安全に走る必要がある。ブレーキランプが点灯したならば、減速して曲がるのか、停止するのか、いずれの挙動をとっても対応できるよう運転しなければならない。

「ブレーキかけてからウインカーを出すドライバーは迷惑だ」などと思ってしまうことは、自らを安全に柔軟に対応できないドライバーと言ってしまっているようなものだ。ブレーキをかけるタイミングとウインカーを出すタイミングを合わせることは明確なルールではないからだ。

 余談だが、市街地を走行しているときに30mの目安になるのが電柱だ。その立っている間隔は約30mとなっている。また、信号のない交差点(横断歩道がある場合)の手前には2個のひし形の道路標示が書かれていることが多い。このひし形は1個目が50m手前、2個目が30m手前に書かれている。こうして30mという距離感を身についておくことも、正しいウインカー操作には役立つはずだ。