「ネコは飼い主を愛しているのか?」という問いに対する専門家の回答
一般的に、「ネコは人間にあまり関心を持たない」とされていますが、近年の研究ではネコが自分の名前を認識していることや、ネコが飼い主に強い愛着を抱いていることが明らかになっています。しかし、2021年には、ネコが「飼い主に不親切な人」を避けないことが判明しており、「ネコは飼い主を愛しているのか?」という疑問は深まるばかりです。そんな「ネコは飼い主を愛しているのか?」という問いに対して、3人の専門家が回答しています。
https://www.inverse.com/science/how-do-i-know-if-my-cat-loves-me
◆愛の定量化
ユニティ大学でネコについて研究するクリスティン・ビターレ氏は、「愛は非常に複雑な概念であり、人間同士でも定量化することは困難です」と述べています。また、獣医であるヴァレリー・タインズ氏は、「愛は定義するのが難しい用語です。特に、感じていることを言語化できない動物の愛を定義することは困難な問題です」と述べ、ネコの愛情の度合を測定することの難しさを語っています。
獣医で動物行動学の専門家であるキャサリン・パンクラッツ氏は、「私たちは、いくつかの種類の動物が私たちと同様の感情を持っていることを知っています」と、動物が人間と同様の感情を持っていると主張しています。
◆ネコが愛を表現する方法
タインズ氏とパンクラッツ氏は、ネコが飼い主との絆を育む際に行う「友好的な行動」として以下の5種類の行動を挙げています。
・飼い主を頭で突っつくか、こすりつける
・飼い主に顔や頬をこすりつける
・飼い主と密着して眠る
・飼い主と並んで歩く。歩く際に、尻尾を飼い主に絡ませる
・飼い主に毛づくろいを施す
パンクラッツ氏は、「ネコが『友好的な行動』を見せている場合、飼い主を愛していると解釈することができます」と述べ、上記の行動はネコから飼い主への愛情のサインであると説明しています。
◆条件付きの愛
タインズ氏によると、犬は飼い主から罰を受けても飼い主への愛情を示し続けますが、ネコは飼い主から罰を受けると愛情を示さなくなるとのこと。タインズ氏は、「ネコは飼い主からの罰に非常に敏感です。そのため、罰や過酷な扱いはネコと飼い主の絆を傷付ける可能性が高いです」と述べています。
同様に、パンクラッツ氏も「ネコと飼い主の信頼関係が薄れると、愛情が失われる可能性があります」と述べ、ネコの愛情は飼い主との信頼関係の上で成り立つと主張しています。
◆ネコは飼い主の愛に気付くのか
2016年には、ネコに「幸せな表情」「怒りの表情」「ポジティブな会話」「ネガティブな会話」を見せて、ネコの「人間の感情を理解する能力」を確かめる研究が行われました。この研究の結果、研究チームは「ネコは人間の感情を読み取ることができ、特に飼い主の感情の変化に敏感である」と結論付けています。
タインズ氏は、「いくつかの研究から、ネコが飼い主の感情に敏感で、見知らぬ人の感情には敏感でないことが明らかになっています。このことから、ネコは飼い主と何らかの絆を形成していると考えられます」と述べています。
◆ネコとイヌの違い
イヌは、ネコと比べて感情が豊かに見えます。パンクラッツ氏は、「イヌが人間と同じ社会集団に属して生活しているのに対して、ネコは柔軟な社会構造に属しています」と述べ、イヌとネコの感情表現の差は、イヌとネコの社会構造の違いによって生じていると主張しています。
また。ビターレ氏が2019年に行った研究では、ネコの65%が飼い主に対して強い愛着を持っていると報告されています。この65%という割合は、人間の親子やイヌに対して実施された同様の研究で報告された割合と近似していることから、ビターレ氏は、ネコがイヌや人間の赤ん坊同様に飼い主に強い愛着を感じていると主張しています。
猫は犬同様に人間に強い愛着を抱いていることが判明 - GIGAZINE
タインズ氏は、「ネコの認知と行動に関する研究は、イヌに関する研究と比べて数が少ないです。そのため、ネコの感情に関する議論の結論を出すのは困難です」と語り、ネコの感情に関する研究が進むことに期待を寄せています。