コロナ禍で赤字の仏具店が急増 仏事にも新しい様式増え、市場縮小
新型コロナウイルスの感染拡大は、告別式を行わない直葬が増えるきっかけになるなど仏事にも大きな影響を与えている。仏具店をめぐる様相も、この1年間で大きく変わってきたことが東京商工リサーチの調査でわかった。
マンションが増えるなど住宅事情の変化やライフスタイルの変化、家族葬など小規模葬儀の広がりで、仏具販売は厳しい局面にあるなか、消費増税からさらにコロナ禍に見舞われ市場縮小の加速が懸念されている。
消費増税に感染拡大が追い討ち
東京商工リサーチの調べによると、全国の主な仏具小売152社の売上高の合計は、2018年8月期が536億2600万円、消費増税前の駆け込み需要効果があった2019年8月期が前期比0.6%増の539億6100万円だったが、最新の2020年8月期は、前期比4.4%減の515億6600万円と低迷した。
利益では、前期に3億9100万円あったが、20年8月期には前期比486.4%減となり15億1100万円の赤字へと大幅に悪化した。
2019年秋に実施された消費増税に加えて、新型コロナウイルスの蔓延防止のための「3密」回避の一環として、葬儀や法要の縮小や見送られたことが、仏具や小物の販売減少に影響したとみられる。20年8月期での最終赤字は47社(構成比で30.9%)で、前期の27社(同17.7%)から1.7倍増となった。
2020年の仏具小売業界は、消費増税前の駆け込み需要の反動に加え、予想しなかったコロナ禍での環境の一変に悩まされた。「新しい生活様式」のなか、人が集まる仏事をめぐっては延期や自粛が広がり、線香などを購入する人が減少。仏事の縮小は仏具販売と葬儀などの施行を一体で行っている事業者ほど影響が大きく、家族葬を主力に展開する一部業者を除き経営環境は厳しさを増しているという。
休廃業・解散が高水準に
2020年の仏具小売業の倒産は、前年より1件増え7件。2018年から3年連続で増加した。仏具小売りの倒産は、2007年に13件を記録するなど、2000年代には10件超の年が数回あり一服感の指摘もあるが、東京商工リサーチによれば、休廃業・解散は2018年以降、高水準をたどっている。
年20件超で推移しており、「コロナ禍で大人数の葬儀や法要の自粛で、当分は業績回復が見込めず、業績不振と代表者の高齢化などで休廃業はさらに増える可能性が高い」という。
仏具小売業の売上規模別の内訳は、1億円未満が102社(67.1%)、1〜5億円未満が36社(23.6%)、5〜10億円未満が7社(4.6%)で、売上高10億円未満の零細・中小事業者が95%以上を占める。売上高10億円以上の大手7社の売り上げの合計は、2020年8月期で359億500万円に達し、7社で全体(152社)の69.6%と約7割を占め、大手の寡占状態が鮮明になっている。
全国の仏具小売業者が加盟する全日本宗教用具協同組合(全宗協)では、
「(新型コロナによる)影響は、高齢者の外出自粛が求められた2020年2月ごろにはすでにみられた」
と指摘。
仏事や彼岸の墓参、月命日供養などで家族のなかで中心的役割を担う高齢者の行動が制限され、店頭販売を主力とする小・零細規模の仏具小売業者を直撃しているという。最初の緊急事態宣言が発令された2020年4〜5月は、「東京ではほとんどの店舗が閉店」(全宗協)しており、影響が大きかった。
経済産業省よると、2002年の宗教用具の小売業者は、事業者数が4886か所、年間商品販売額は2705億7000万円にのぼった。それが2014年には、事業所数が3004か所(02年比38.5%減)、販売額が1639億4200万円(同39.4%減)となり市場は大きく縮小している。コロナ禍では、フードの宅配や物販でネット利用が拡大。全宗協は業界の課題として「インターネットでのPRや販路の構築が急務」と、従来の営業手法からの転換を挙げている。