長谷部誠vs遠藤航。ブンデスリーガで光る新旧日本代表ボランチの特徴
今季ブンデスリーガで目立った活躍をしている日本人選手といえば、MF遠藤航(シュツットガルト)とDF長谷部誠(フランクフルト)のふたりで異論の余地はないはずだ。登録されているポジションこそ違うが、チームにおいて果たしている役割はとても似たものがある。そして両チームは3月6日に対戦する。
今季の開幕前に大きな話題となったのは長谷部だった。当時36歳(現在は37歳)で、リーグ最年長選手として開幕を迎えたのだ。その後、シャルケに元オランダ代表のクラース・ヤン・フンテラール(37歳)が加入したことで2番目になったが、大ベテランとしてメディアの注目を浴びた。ドルトムントとの対戦では「最年少記録を作った(ユスファ・)ムココと、最年長マコトの対決」とクラブ公式サイトでもいじられていた。
現在は来季の契約についての話題でもちきりだ。現状はフランクフルトと今季いっぱいの契約で、「近いうちに話し合いが行なわれることになるだろう」と、アディ・ヒュッター監督も話している。地元紙はこぞって「長谷部と契約すべき」との立場をとっており、何事もなければこのまま契約は延長される可能性が高い。
前節シャルケ戦では2ゴール2アシストの活躍を見せた遠藤航(シュツットガルト)
一方の遠藤航は、チームの昇格によって初めてのブンデスリーガ1部挑戦となり、日を追うごとに一般のファンにも知られる存在となってきた。先週末のシャルケ戦では全4得点に絡む活躍を見せ、第23節のMVPにも選ばれている。今週は各メディアのサッカー情報で遠藤の名前と写真を見ない日はなかった。
ふたりのプレーするポジションは近いが、プレースタイルは少し異なる。
長谷部は日本代表では長らくボランチでプレーしていたが、ここ数年のフランクフルトでは3バックの中央、リベロでプレーすることも多い。ただし、指揮官のリクエストに応じてボランチに上がることで、スムーズなシステム変更が可能となる。
守備的なポジションだが、特別に1対1が強いわけではない。危機察知能力と戦術理解力、統率力に長けており、試合を見ていても、周囲の選手が長谷部の指示を聞き入る様子から、圧倒的に信頼されていることが伝わってくる。
また、ビーレフェルト戦では両チームトップとなるスプリントのスピードを記録。これまたクラブから「おじさんじゃないよ」という、また年齢をいじられるような褒められ方をした。このスプリントも長谷部の魅力のひとつだろう。
一方の遠藤は、「ツヴァイカンプフ(デュエル、1対1)マイスター」と呼ばれるほどのツヴァイカンプフの勝利数を誇る。ブンデスリーガの公式サイトによれば、勝利数の合計は現在までで344回でリーグトップ。2位はアウクスブルクのダニエル・カリジューリで317回、3位はヘルタ・ベルリンのマテウス・クーニャで314回、4位は200回台だから、遠藤は群を抜いている。
もちろん、ツヴァイカンプフの回数そのものが多いか少ないかはチーム戦術に左右されるところもあり、首位バイエルンの最上位が30位のトーマス・ミュラーというのは、バイエルンが1対1を多発しない戦術をとっているからだろう。それでもドイツ人が重視するこのランキングでトップに君臨するのは誇らしいことである。
遠藤によれば、ドイツに来てから下半身の安定感が増してきたことを実感しているそうで、その結果が数字に直結している。また、効果的なロングボールを安定的に供給できることもあり、味方からの信頼は高い。パスの成功率86.1パーセントはシュツットガルトで3番目に高い数字で、リーグ全体でも31位となっている。
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プレー以上に、ふたりが共通していると思えることがいくつかある。まず、ともにキャプテン的な役割を自然と務められる点だ。
長谷部本人は「本来はキャプテンタイプの人間じゃないんですけど」と言っているが、ピッチに立つ姿はキャプテンそのもの。前キャプテンのダビド・アブラハムが今シーズン途中に現役を引退すると、以来7試合連続でキャプテンマークを巻いている。そして遠藤も、本来のキャプテンである元ドイツ代表のゴンサロ・カストロが、1月29日のマインツ戦の前半途中で負傷、退場すると、キャプテンに指名される。続くカストロ不在の2試合でもキャプテンマークを巻いてプレーしている。
クラブ愛を口にし、エンターテイメント性を心得た発言をするのもふたりの特徴だ。
長谷部は2月20日のバイエルン戦前に「リーグを盛り上げるためにも、勝ちたい」と話していた。そして実際に2−1で勝ったあとは「これでリーグ戦が盛り上がる」と繰り返した。いつもバイエルンが独走しどこか白けてしまうブンデスリーガ終盤戦を経験しているベテランらしい発言である。一方の遠藤はイングランドへの憧れを口にすることもあるが、「シュツットガルトが気に入っているので、ここのクラブをかつてのような優勝できるクラブにしたい」ときっぱり語る。
そしてふたりには、ドイツ人の目にもぱっとわかる外見上の特徴がある。まず長谷部は半袖のユニフォーム。2月に続いた零下の試合でも半袖に手袋という姿でプレーして、見ている者を凍りつかせた。遠藤は赤いマウスピースだ。シュツットガルトカラーの赤を装着するのは、「ディフェンダーにも日の目が当たれば」という願いがこもっている。ウニオン・ベルリン戦では「ヘデイングで相手の頭が歯あたって、マウスピースがなければ前歯は折れていました」と、激しい戦いを表現していた。
フランクフルトとシュツットガルト、リーグ前半戦の対戦は2−2で引き分けだった。2度目の対戦はどちらに軍配があがるか。鎌田大地(フランクフルト)を含め、日本人3選手の活躍とともに楽しみだ。