「青天を衝け」より北大路欣也演じる徳川家康

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 実業家・渋沢栄一を主人公に、幕末から明治期を描く大河ドラマ「青天を衝け」(2月14日よりNHK総合ほかにて放送)に、北大路欣也演じる徳川家康が登場することが明らかになった。27日に行われた本作のリモート会見で、なぜ幕末に徳川家康が出演するのか、制作統括の菓子浩と脚本家の大森美香がその真意を語った。

 生涯で約500の企業を育て日本資本主義の父と呼ばれた渋沢(吉沢亮)の生涯を描く本作。初回の冒頭、徳川家康が登場し、いわばナビゲーターとしての役割を担う。渋沢が生まれたのが1840年。その時代に家康が登場するというのは完全なるファンタジーだが、脚本を担当した大森いわく「渋沢栄一さんが生きる江戸時代から現代までを俯瞰して見られる方が欲しいと思った」とのこと。「ナレーションでもよかったのですが、幕末で江戸時代を閉じるという意味では、どうやって江戸幕府を開いたかということがとても大事。そこを俯瞰して見るにはどうしたらいいかと考えたとき、家康さんが適任だと思ったんです」と述べる。

 当初、そんな大森の大胆なアイデアに制作陣は「ざわざわしていた」というが、気にせず脚本を書き進めていくと「家康さんにストーリーを語ってもらうと、いろいろなことが腑に落ちるんです。家康さんが作った江戸幕府を、最後まで見届けてもらえたら」と視聴者に呼び掛けた。

 制作統括の菓子も「出ない回もありますが、ほぼ毎回家康は登場します」と述べると「この物語を誰の目線で語るか……と考えたとき、主人公である渋沢はもちろん、徳川慶喜も、東照大権現(家康)を尊敬していることは資料にも残っているんです。もちろんこの時代に家康が生きているわけではなく、ファンタジーなのですが、江戸幕府を閉じる時期に、開いた人が事の顛末を語るのはいいのかなと思ったんです」と大森のアイデアに賛同した経緯を明かす。

 さらにもう一つ、幕末期の歴史の難しさも、家康起用の大きな要因になっているという。菓子は、「幕末期というのは非常に複雑で、薩摩や長州、佐幕派など、見る視点によって大きく解釈が変わる。このドラマではどんな解釈にするかと考えたとき、家康さんが物語をいざなってくれると見やすくなるのではという期待もあったんです」と語る。

 家康役の北大路は、これまで大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」などで家康を演じているが、本作では「オファーを受けたとき、ものすごく悩んだ」とコメントを出していた。菓子は「家康をどの方に演じてもらおうかと考えていた時間は長かったのですが『北大路さんだ』と思いついたときから、迷いはなかったです。オファーを受けていただき、すごく嬉しかったですね」とオファーした当時を振り返っていた。(磯部正和)