顔見知りとの挨拶は「まるで居合斬り」 すれ違い時の探り合いを描いた漫画に共感集まる
会社や学校、あるいは屋外で、正面から知った顔が歩いて来たとする。
それが仲の良い友人なら、気付いた時点で声をかけて、会話に持ち込む人も多いかもしれない。
では、そんなに親しくない...顔見知り程度の関係だったらどうだろう。どのくらい近づいてから、あいさつするべきか。そもそも声をかけるべきか、ただ会釈に留めるか。
相手との距離が徐々に縮まる中で、そんなふうに悶々と悩んだことはないだろうか。
2020年10月11日、そんな状況を描いた漫画がツイッターに投稿され、共感を集めている。
【あるある】ちょっと遠くに知り合い見つけたとき、どのタイミングで声かけるかめっちゃ迷う#寄り道日記 pic.twitter.com/HY8AWAPGnC
— 秋野 ひろ / マンガ家 (@16_akino) October 10, 2020
「挨拶の間合い」と題された作品を投稿したのは、漫画家の秋野ひろさん。自身のツイッターに、自らの体験に基づいた1ページ漫画を毎日投稿している。
Jタウンネット編集部が14日、本人に詳細を聞いたところ、この作品も、実体験に基づいたものだという。秋野さんは現在大学に通っており、学内では1日に2回ほどは漫画のような出来事が起こっているそうだ。
スマホを見るフリで、気付いてない感を演出
まだ、挨拶の距離じゃない(秋野ひろさんの作品、編集部でトリミング)
廊下のような場所で、茶髪の男性と黒髪の男性がすれ違う少し前、という瞬間から漫画は始まる。
2人は顔見知りのようで、黒髪の男性は前方をチラリとうかがいながら、
「まだ挨拶するには遠い...
そこまで仲良い関係じゃない」
と声をかけるタイミングを図っている。対する茶髪の男性は、スマートフォンを見ながら歩いているらしい。画面に夢中で、前から歩いてくる知り合いに気付いていないのかと思いきや...
相手も気付いている...(秋野ひろさんの作品、編集部でトリミング)
「気付いてないフリ」だったらしい。しかし、気まずそうにスマホを見る表情から、本当は気付いていて、彼もまた挨拶のタイミングを図っていることは筒抜けだ。
互いに「いつ声をかけるべきか」と探り合っているこの状態を、秋野さんは「まるで居合切り」と表現している。
「ダサめの大和魂」(秋野ひろさんの作品、編集部でトリミング)
ジリジリと互いに近寄りながら、声をかけられる「間合い」に相手が入ってくるのを待っている...というわけだ。
秋野さんの場合、遠くにいる知り合いが目に入った時点で、とりあえず顔を伏せるという。
対象となるのは、「授業のグループディスカッションを一緒に行ったことだけある人」、「仲のいい友達の彼女」、「同じサークルの幽霊部員」など。
確かに、意気揚々と挨拶しに行くにはためらってしまう関係性の人々だ。
「だいたい3メートルくらい先の下の方を見ながら歩いて、足が目に入ったら声をかけます」
と秋野さん。漫画で茶髪の男性がしているように「気付いてないフリ」をすることもあるという。
「目が合うと気まずく感じてしまうので...
スマホを持っていたら見るフリをしますし、無駄に鞄の中を確認しながら歩いたりもします。所持物を上手く使うことが違和感を減らすポイントです」(秋野さん)
確かに、まだ「挨拶の間合い」に入っていないのに目が合ってしまうと、かなり気まずい時間が生まれてしまう。挨拶しないのも変だし、早めに声をかけたとしてもすれ違うまで会話が続くわけでもない...。ちなみに、記者はこういう状況では、ニヤニヤしながら会釈を繰り返してしまい、恥ずかしい思いをするのが常だ。
そんなことにならないために、相手が間合いに入ってくるタイミングをひたすら待つ。確かに、ちょっと居合斬りに似ているのかもしれない。斬るのではなく、挨拶をすることが目的なのが、まさに「ダサめの大和魂」といった感じだ。
秋野さんがこのことに気づいたのは、時代モノのアクション映画を見ていた時だという。
「顔を伏せた状態で構えて、敵が近いた瞬間に動く侍の姿を見て、『これ挨拶するときの僕だ!!』と思いました」
とのこと。
秋野さんの作品には、
「めちゃくちゃわかる」
「私だけじゃなかったんだ、こんな思い!それだけで、かなり嬉しいです。」
「職場で毎日ブチ当たる壁」
「渡り廊下という逃げ道のない一本道で毎度これ考えてた」
など、同じ思いを抱えていたユーザーから、共感の声が寄せられている。