即席めん事業の合計売上高は前年同期比1割増、棒ラーメンのマルタイは利益7倍に急伸
即席めん事業の合計売上高は前年同期比1割増、棒ラーメンのマルタイは利益7倍に急伸
即席めん業界の業績が好調に推移している。袋めんやカップめんなど即席めん製造事業を手掛ける上場4社のうち、同事業における2020年4-6月期の合計売上高は948億円となり、前年同期から8.8％の増収となった。本業の儲けを示す営業（セグメント）利益の合計は143億円となり、前年同期（68億円）から倍増した。また、「マツコの知らない世界」（TBS）などバラエティ番組や、即席めんを使ったアレンジ料理を著名人がSNSなどにアップするなど、即席めんがメディアに相次ぎ露出したことも消費者の関心を高めた一つの要因となった。こうした追い風も背景に、各社とも好調な売り上げを確保した。
上場4社で増収増益、 棒ラーメンのマルタイは利益7倍に
即席めんを製造する上場4社の業績は、いずれも増収増益で推移。特に利益面では前年同期比2ケタ以上の増加となった。即席めん大手の日清食品HD（東京）は、20年4-6月期の国内即席めん事業における売上高が前年同期比10.3％増の591億円を計上。セグメント利益は同95.8％増の103億円だった。カップめんでは「カップヌードル 味噌」や、「明星 一平ちゃん夜店の焼そば」の売り上げが好調。袋めんでは「チキンラーメン」や「日清ラ王」シリーズ、「明星 チャルメラ」シリーズの販売が好調に推移し、業績を押し上げた。
東洋水産（東京）の同売上高は309億円で、前年同期比5.4％の増加。セグメント利益は34億円で、前年同期から倍増した。カップめんは販売が伸び悩んだものの、同社の主力となる袋めん商品「マルちゃん正麺」シリーズの販売増が業績に寄与した。
福岡県に本社を置くマルタイの売上高は25億円、利益は3億円だった。このうち利益は前年同期比で約7倍に急伸、4社の中では伸び率が最大となった。九州地方で知名度が高い、主力商品の棒ラーメンの売上高が前年同期比60％超の大幅な伸びをみせるなど好調だった。即席めんのOEM（受託生産）事業を展開する愛知県のユタカフーズは売上高が21億円、セグメント利益は1億円を計上し、それぞれ前年同期から増加した。
4社とも、新型コロナの感染拡大で外出自粛の対応が広がるなか、平時以上の即席めん需要が発生したことが業績に大きく寄与したとみられる。
消費者の需要は引き続き高水準の見込み、 各社とも生産体制を整え販売増を目指す
総務省の家計調査（二人以上の世帯）によれば、2020年7月における即席めん類（即席めん＋カップめん）への世帯当たり支出金額は843円となり、前年同月から8割超も増加した。金額ベースでは即席めんの値上げなどによる影響もあるものの、昨年10月以降は10カ月連続で前年同月を上回っている。緊急事態宣言が発出された4月は931円と1000円に迫り、2015年以降で最も高い金額だった。消費増税などで強まった消費者の節約志向が、比較的安価な即席めんの消費に追い風となったとみられる。また、今年3月以降は新型コロナの感染拡大を受け購買頻度などが増加したことも反映されたとみられ、消費者の即席めんに対する支出金額は急激に増加している。
こうした旺盛な需要を背景に、各社では増産や工場新設といった動きを進める。日清食品HDは、新型コロナに対する対応として増産体制に取り組む方針を示している。マルタイは、約43億円を投じて2022年3月から1ライン当たり日産20万食の生産能力を有する新工場を稼働させる予定となっている。
今後は外出自粛の動きが徐々に緩和すると見込まれるが、在宅勤務の広がりなどで内食需要は応分に拡大している。そのため、消費者の即席めんへの需要は引き続き高水準で推移するとみられ、各社とも業績に好影響となることが期待される。
