西武・高橋光成(左)と今井達也【写真:荒川祐史】

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12安打7失点の今井を擁護、勝利投手の高橋光には苦言

 パ・リーグ3連覇を狙う西武は24日、メットライフドームで行われたソフトバンク戦に6-9で競り負けた。極端な“打高投低”の傾向は今季も変わらない。とりわけ先発投手陣の整備が思うに任せず、辻発彦監督の苦悩は続く。

 この日先発した4年目の今井達也投手は1回、自慢の速球を狙い打たれ、上林の3ランなどでいきなり1イニング4失点。2回以降は毎回走者を背負いながら追加点を許さなかったが、味方打線に逆転してもらって2点リードで迎えた6回に再び炎上する。1死一、二塁で今宮に真ん中高めの甘いカーブを左翼席へ放り込まれ、痛恨の逆転3ラン。5回2/3で12安打3四球7失点に終わった。

 今井は公式戦開幕前の練習試合で、自己最速タイの155キロを連発するなど好調ぶりを披露。ファンの間では「“ダルビッシュ感”にあふれている」「細ダルビッシュ」との声が上がっていただけに、まさかの期待外れに。さらに意外だったのは、試合後にてっきり“ボヤキ節”を奏でると思われた辻発彦監督が、最大限に今井を擁護したことである。

「(今宮に逆転3ランされた)あのカーブは失投だったね。ホームランだけはダメな場面だったので、そういう所は反省材料」と指摘しつつ、「でも、開幕前から非常に調子が良くて、昨年の今井とは全然違うピッチングを見せてくれたと思う。初戦ということで緊張していただろうし、その中で成長した部分が見えた気がします。ストライクを取ることに汲々としていた昨年とは違い、コントロールがよくなったし、ピンチでもだいぶ腕を振って投げられるようになった」と称賛した。

 これと対照的だったのが、前日23日に先発した6年目の高橋光成投手に対する評価だ。5回1/3で、4安打3四球3失点と試合をつくり、勝利投手にもなったが、辻監督は「納得いかない。打線に4点取ってもらった直後、四球を2つ与えて自らピンチをつくった。もっと大胆に、打たれてもヒットなら構わないというくらい、割り切っていかないと。彼の力からすると、僕は満足できない」と手厳しかった。

現状では今季も計算できる先発投手はニールただ1人か…

 実際、高橋光はスパンジェンバーグの満塁弾で4点を先取した直後の3回、2四球をきっかけに2失点。さらに5点リードで迎えた6回に、またもや四球絡みで1死一、三塁のピンチをつくり、この時点で辻監督から降板を命じられたのだった。

 今井と高橋光は、いずれも高校時代に夏の甲子園優勝投手の栄誉に浴し、ドラフト1位で西武入り。今季は先発ローテの柱にと期待されている。辻監督は無残な結果に終わった今井を励まし、逆に白星が付いた高橋光にはこの投球で満足しないようにとのメッセージを込めたのだろうか。高橋光の方が今井より2年多くプロでキャリアを積んでいることで、ハードルが高く設定されているところがあるのかもしれない。

 いずれにせよ現状では、今季も計算できる先発投手は、昨季12勝1敗のニール1人。14年ぶりにチームに復帰した松坂も、調整不足で開幕ローテ入りを逃した。このままでは過去2年、打線の破壊力でレギュラーシーズンを連覇したものの、信頼できる先発投手の数がモノを言う短期決戦のクライマックスシリーズで、ソフトバンクに煮え湯を飲まされてきた状況となんら変わりがない。

 この日、今井が初回に4失点した直後、辻監督は「うちは点を取れるのだから、頑張って投げておけよ」と声をかけたそうで、実際にその通りの展開になった。西武は昨季両リーグを通じ断トツの756得点を挙げており、1試合平均5.3点取る計算だ。

 とはいえ、打線の得点力をあてにしているだけでは進歩がない。あの手この手で先発投手陣の底上げをはかる辻監督の苦労は報われるのか。渡辺久信監督(現GM)の下で日本一になった2008年を最後に11年間遠ざかっている日本シリーズ出場を果たせるかどうかは、そこにかかっている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)