「エール」40話 応援団長(三浦貴大)の想いに応え書き上げた「紺碧の空」が早稲田に優勝もたらす

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第8週「紺碧の空」40回〈5月22日 (金) 放送 脚本・吉田照幸 演出・野口雄大〉



40回はこんな話

ついに書き上げた「紺碧の空」。その曲に乗って早慶戦は負け続けていた早稲田が優勝。すっかり自信を失っていた裕一(窪田正孝)はもう一度、音楽を続けようと考え直す。そして、思いついたのはーー。

「紺碧の空」とは?

早稲田大学応援団の第一応援歌。昭和6年、早慶戦にて発表。裕一のモデルである古関裕而が作曲した。作詞は高等師範部3年生の住治男。慶應義塾大学の応援歌「若き血」に対抗すべく学内から公募した詩を、教授であり詩人の西條八十が選んだが「覇者 覇者 早稲田」の歌詞が作曲するのに難易度が高いと指摘していた。ドラマでは裕一が「覇者」の音が弱いので他の歌詞に代えたらどうか? と提案したが田中から却下された。「紺碧の空」を応援歌にした昭和6年の早慶戦はそれまで負け続けだった早稲田が勝利した。

まさかのコント落ち

底抜けの熱血応援バカなだけかと思われた早稲田大学応援団長・田中(三浦貴大)の意外な想いに心を動かされた裕一はついに「紺碧の空」の曲を書き上げる。だが、そのタイトルは「紺壁」になっていた。ギリギリまで待って試合当日の朝になってしまったのだと思うが(応援団全員、裕一の仕事場で寝ている)、待ちに待った譜面を裕一から受け取り、感動に打ち震えているのかと思ったら、冷静に誤字を指摘する田中。「覇者」という言葉は重要だから変えることはできないと強く言い張っただけある人物、言葉をとても大事にしているようである。文学部だろうか。

それにしてもアヴァンでまさかの誤字オチ。これだから「エール」は侮れない。


自分で自分を救う

無名の裕一に頼むことを渋り、小山田(志村けん)に曲を頼んでしまった事務局長(徳井優)を縛って、そのまま押し通す田中たち。そこから当時のモノクロ映像と、撮り下ろした映像などを混ぜながら早慶戦。裕一と音は試合を見学、一緒に応援に盛り上がる。

試合に行ってない人もみんなラジオで様子を聞いていた。喫茶バンブーでは久志(山崎育三郎)もいる。田中の幼馴染で怪我をして野球の夢を諦めた清水誠二(田邊和也)は職場で試合を見ている。このスケッチ(短い場面)を各々印象的に演じる俳優たち。三浦と慶応応援団長・御園生役の橋本淳の力いっぱいの顔芸、わーっと両腕をあげて立ち上がる窪田正孝と二階堂ふみの瞬発力は見事であった。

帰りに裕一と音が「まんぷく」の福子と萬平のようにラーメンを食べていると、田中率いる応援団たちがやって来て、「まったく曲が採用されん先生にエールばと送りたかと思います」と、裕一に彼のつくった応援歌を歌って、応援する。

早慶戦で応援歌を披露するのではなく裕一を応援する曲として歌う。自分の作った曲が誰かを救い、それによって裕一は自分を救うことができた。自分から変わらないと何も変わらないと久志が裕一に言っていたけれど、裕一は他人と関わることでこれまで作った曲とは違うものを作ることができて、人に認めてもらう曲ができないという地獄から這い上がったのである。

それまで大衆向けの歌謡曲にもかかわらず音域があり過ぎるものを書いて注意を受けていた裕一だが、「紺碧の空」は音域にも気遣って歌いやすくなっている。そして歌詞がはっきりわかる。とりわけ「覇者」の歌詞が際立っている。明確にして格調高い。クラシックの素養があるからこその格調であろう。

ちなみに、田中はやっぱり言葉を大事にしていると思うのは「まったく曲が採用されん」の台詞の「まったく」の言い方がすばらしいから。これは三浦が台詞の意味をよく理解して話しているからなのだが、愛情とユーモアが伝わってきた。


自分で自分を救う

「自分の力を示すことに固執していた」と木枯(野田洋次郎)に反省の弁を語る裕一に「天才だから」そこに気づかなかったのだと言う。裕一は楽器も使わず曲を頭のなかで作ることができる。モデルの古関裕而は一度聞いた曲の譜もすぐに再現できたらしい。このように天才的な音楽の才能があるから高度な曲も作れるが、その知識を使えば、大衆向けの噛み砕いた曲を作ることが可能なのである。大は小を兼ねるというやつかと思う。

木枯は木枯で、B面だった「影を慕ひて」に火がついて再発売されていた。世間の評価なんてわからないものなのである。続けることが大切だと思わされるエピソードである。

いよいよ三羽カラス

やる気になった裕一は、鉄夫(中村蒼)をバンブーに呼び出し詩を書いてくれと頼む。もともと東京に行こうと誘ったのは鉄夫であった。俺も詩を書くと熱かった彼はこの1年何をしていたのであろうか。

そして歌うのは久志。じゃじゃーんと登場して「覚えていると思うけど」と鉄男に言う久志。ふたりには接点があまりなかったが、覚えているかなあ……。公式の情報では当初からこの3人が「福島3羽ガラス」として活躍するとあった。裕一が、3人で何かやろうと思ったのは、田中と清水の友情話を聞いたからだろう。

最後に3人が集まった場面は、予告編のようだった。「エール」から朝ドラが週5になって、次週予告は土曜日の振り返り特番の後なのだが、振り返り特番は見ない人もいるので、来週に期待をもたせるこういう終わり方はとてもいいと思う。

終わり方としては、無名の22歳の若き作曲家がーーというナレーションと応援団に胴上げされているところで止めるのもありと思うが、そのあと、重鎮の自分をさしおいて新たな応援歌を作られてしまった小山田(志村けん)のプライドはどうなる?とか、すっかり裕一の作曲騒動で保留になっていた音の「椿姫」ヒロインオーディションは? とかいう楽しみを次週以降の楽しみとして残した。

今日の窪田正孝

「碧」が「壁」になってると言われたときの笑顔。

今日の高瀬アナ

「あさイチ」の近江アナが早稲田のチアリーディングをやっていたことが話題だが、高瀬アナも早稲田。「紺碧の空」愛をアピールしたが、慶應の「若き血」も好きだと付け加えるところがさすが公共放送のアナウンサーの気遣い。「おはよう日本」も「あさイチ」もどちらも早稲田推しではまずいだろう。
(木俣冬)

登場人物

古山裕一…幼少期 石田星空/成長後 窪田正孝 主人公。内向的で口下手だが、音楽の才能に溢れる。川俣の権藤家に養子になり銀行で働くが、国際作曲コンテストで2等を受賞、音と文通をはじめたことがきっかけで、本格的に音楽家を目指す。

関内音→古山音 …幼少期 清水香帆/成長後 二階堂ふみ 幼い頃、川俣を訪れ、聖歌を歌う。そのとき裕一と出会う。「女子供」という言葉が大嫌い。双浦環の歌に魅入られ歌手を目指す。同世代の裕一が国際作曲コンテストに受賞したことに刺激を受け、裕一を応援。恋に落ちる。裕一のために東京のレコード会社と契約を取り付ける。

小山田耕三…志村けん 日本作曲界の重鎮。裕一の演奏会の記事を読んで興味を持ち、廿日市に裕一と契約するように勧める。

廿日市誉…古田新太 コロンブスレコードの音楽ディレクター。
杉山あかね…加弥乃 廿日市の秘書。
木枯正人…野田洋次郎 コロンブスレコードと専属契約を結んだ作曲家。ながらくボツが続いたが 「影を慕ひて」が採用される。

梶取保…野間口徹 喫茶店バンブーのマスター。妻の暴走に困惑しつつ見守っている。
梶取恵…仲里依紗 保の妻。過去の恋愛を思い出し語りすることが多い。

佐藤久志 …幼少期 山口太幹/成長後 山崎育三郎 転校生。県会議員の息子で、気取った口調で話す。東京帝国音楽大学の3年生で「プリンス」と呼ばれ、生徒の憧れの的。音に歌の助言をする。
夏目千鶴子 …小南満佑子 東京帝国音楽学校の生徒。優秀で一目置かれている。才能もあるが努力も怠らない。

筒井潔子 …清水葉月 東京帝国音楽大学で音と同級生。パートはソプラノ 
今村和子 …金澤美穂 東京帝国音楽大学で音と同級生。パートはアルト

先生 …高田聖子 東京帝国音楽大学の教師。厳格


番組情報

連続テレビ小説「エール」 
◯NHK総合 月〜土 朝8時〜、再放送 午後0時45分〜
◯BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜、再放送 午後11時〜
◯土曜は一週間の振り返り原案:林宏司
脚本:清水友佳子 嶋田うれ葉 吉田照幸
演出:吉田照幸ほか
音楽:瀬川英二
キャスト: 窪田正孝 二階堂ふみ 唐沢寿明 菊池桃子 ほか
語り: 津田健次郎
主題歌:GReeeeN「星影のエール」
制作統括:土屋勝裕 尾崎裕和