自ら発熱して温度調節してくれる服というと、吸湿発熱繊維を使用したユニクロのヒートテックが有名です。今回新たに、これまで登場していた吸湿発熱繊維とは全く別の素材と仕組みを採用することで、寒い時には温かく、暑い時に冷たくなる繊維素材が開発されました。

Flexible and Robust Biomaterial Microstructured Colored Textiles for Personal Thermoregulation | ACS Applied Materials & Interfaces

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsami.0c02300

New textile could keep you cool in the heat, warm in the cold -- ScienceDaily

https://www.sciencedaily.com/releases/2020/04/200415133440.htm

寒い時に温かくなったり、暑い時に冷たくなったりする繊維を使用した布はこれまでも登場してきましたが、両方を兼ね備えた布はこれまでありませんでした。また、こうした布には重い、かさばる、破損しやすい、高価、外部からのエネルギー供給が必要といった欠点もあります。

そこで、華中科技大学高機能繊維研究所の責任者であるGuangming Tao氏らの研究チームは、カニやエビなどの甲殻類の外骨格から得られるキトサンと絹から、非常に微細な構造を持つ多孔質の繊維を開発しました。



さらに、この繊維が持つ微細な穴に相転移の原理により熱エネルギーの吸収や放出ができることが知られているポリエチレングリコール(PEG)を注入してから、PEGが漏れないようにシリコンの一種であるジメチルポリシロキサンでコーティングしました。

こうしてできた布を研究チームがテストしてみると、高い柔軟性と強度を兼ね備えているだけでなく、断熱性や水をはじくはっ水性も抜群なことが分かりました。



さらに、研究チームがこの布を使用した手袋を作って着用し、温度が50度ある箱の中に手を差し込むと、PEGが溶けて熱を吸収し、手が冷却される様子が確認されました。同様に、手袋を着用した手を10度の環境下に置くと、今度はPEGが固化して熱を放出し、手が温められたとのことです。

研究チームは論文の中で、「この素材は、既存の繊維産業の設備で生産することができるので、大量生産が可能であると考えられます」と記しました。