なぜ今、日本導入なのか…ホンダの新型「アコード」
ホンダは2020年2月の日本導入を予定する新型「アコード」を報道陣に公開した。米国では2017年10月に発売となった10代目アコードは、なぜこの時期に日本デビューを果たすのか。SUVブームの日本市場で、このシックなセダンは受けるのか。営業担当に聞いた。
○伝統のセダンがエモーショナルに変身!
1976年の発売以来、ホンダを代表するセダンであり続けてきたアコード。これまでに、120を超える国と地域で累計2,000万台が売れている。今回の新型はアコードの10世代目となる。
ホンダは新型アコードを開発するにあたり、プラットフォームを根本から見直したとのこと。低重心かつ低慣性の新世代プラットフォームでは、高品位で直感的な動的性能を実現できたとする。
ホンダはアコードをより「エモーショナル」なクルマにしようと心を砕いたという。デザイナーは開発の初期段階からアコードのテストカーに乗り、デザインを模索したそうだ。
伝統のブランドであるアコードを刷新するにあたり、ホンダは既存のオーナー(ロイヤルカスタマー)を満足させることにこだわりつつも、クルマのキャラクターを「エモーショナル」な方向に少し振ってきた。その狙いは当然、(既存客よりも相対的に)若いユーザーの開拓にある。SUVブームの真っただ中に日本デビューを果たす新型アコードは、その使命を果たせるだろうか。そのあたりも含め、新型アコードのマーケティングやプロモーションなどを担当するホンダ 日本本部 商品ブランド部 商品企画課の古川博朗主任に話を聞いてきた。
○新型「アコード」を取り巻く状況は?
マイナビニュース編集部(以下、編):新型アコードの日本導入がこのタイミングになったのは、どういう理由からですか?
古川さん(以下、古):まず、開発のタイミングがあります。日本市場では、現行モデルが2016年に発売となっていますが、大体、商品は3年のサイクルで回したりするので、それでいくと、ちょうどこのくらいの時期となります。それに、メインとなる生産工場の立ち上がりのタイミングなども見て決めました。
編:世界デビューは2年前だった新型アコードですが、発売からこれまでの間に、クルマ自体はブラッシュアップされているのでしょうか? それとも、2年前に米国で発売となったアコードが、そのまま日本にも入ってくる感じですか?
古:発売以来、アコード自体は世界でのフィードバックなども取り入れつつ磨き上げてきていますし、仕様は日本市場に合わせてあります。
編:日本仕様には、どんな違いがあるのでしょうか。
古:例えば、新型アコードは「アダプティブ・ダンパー・システム」を搭載しています。ダンパー自体は海外仕様にも付いているのですが、3モードシステムは日本独特の仕様です。
デザインにも日本特有の点があります。フロントのバンパー下の形状や、ミラーの塗装を変えているところなどです。
編:先行して販売している地域での評判、売れ行きは?
古:大きな市場は米国と中国です。私は日本市場の担当なので詳細な情報は持ち合わせていないのですが、聞くところによれば、両国ともにお客様からはご好評をいただいているとのことです。先代と比べ、より若い方の購入が多いとも聞いています。今回の新型ではデザインや骨格などを見直したので、そういった点で若い方にもご満足いただけるようになったものと理解しています。
編:現行アコードに乗っている日本のユーザーの年齢層は?
古:50代よりも上の方の比率が高いです。このクラスのセダンは、市場の特徴としても、ユーザーの年齢層は高めだといえます。
セダンのお客様は、「もともと乗っているセダンが大好き」という方が多いんです。アコードもそうですし、それは「カムリ」や「クラウン」(どちらもトヨタのクルマ)にもいえることです。アコードの開発でも、ロイヤルカスタマーの皆様にご満足いただくのは、まず、やらなければならないことでした。
ただ、その上で、年齢をあえて定義せず、感性に訴えるような魅力のあるクルマとして、ご自身の感性で物事の本質を見極めるようなお客様にも、このクルマをお届けしたいと考えています。
編:ホンダのセダンのラインアップを見ますと、ハイブリッドセダンとして、近いところに「インサイト」というクルマがあると思います。2018年12月に発売となった新型インサイトは、フルモデルチェンジを経て、以前のモデルよりも低く、伸びやかなスタイルを獲得し、よりエモーショナルなクルマになったような印象なのですが、アコードとインサイトはかぶりませんか?
古:ハイブリッドセダンという括りでは確かに同じなのですが、車格的に、インサイトは長さでいうと少し小さめのクルマです。そういう意味で、インサイトは1つ下の「シビック」に近いといえます。アコードは全長が4,900mmありますし、パワートレインで比べると、インサイトのエンジンが1.5Lであるのに対し、アコードは2.0Lです。
それともうひとつ。アコードというクルマは、日本でも世界でも、ホンダを代表するグローバルブランドであり、40年を超える長い歴史を持っています。ホンダにとっても“少し違う”存在ですし、アコードという名前がお客様に与える印象は、ホンダとしても大事にしていきたいと思います。そういった意味でも、差別化はできていると考えています。
編:SUVブームが世界的な潮流となっていると思うのですが、新しいセダンを日本で売り出すにあたり、見通しはいかがでしょうか。セダン市場のパイは小さくなっていて、その取り合いは激しくなっているという印象なのですが。
古:セダンの絶対的なパイは、おっしゃる通り小さくなっているのですが、その中で、アコードが属する「アッパーミドルセダン」というクラスの市場は、実は一昨年と昨年でそんなに変わっていません。むしろ、少し大きくなっているくらいです。こういったセダンの需要は確実にあると考えていますので、アコードもしっかり販売していきたいです。
編:アッパーミドルセダンには確固たる需要があるんですね。
古:時代によって変化はありますが、直近では年間7万5,000台くらいで、その規模感は変わっていません。
編:このクラスには、ほかにどういったクルマがあるのでしょうか。輸入車も強そうな市場ですが。
古:「カムリ」(トヨタ)、「MAZDA6」(マツダ、旧アテンザ)、「Cクラス」(メルセデス・ベンツ)、「3シリーズ」(BMW)などがあります。
編:ライバルも強い市場なんですね。北米では長年、アコードとカムリがライバル視されてきたと聞いています。そんな中、2018年にはカムリとの直接対決を制し、アコードが北米カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したそうですね。
古:北米カー・オブ・ザ・イヤーの受賞自体が喜ばしいことですが、そういった中で選んでいただけたことは、開発陣も喜んでいます。アコードのスリーク(sleek、なめらかでスマートな感じ)なデザインや、もともとの強みではありますが、走りと燃費を両立しているところが、高く評価されたと聞いています。
1976年の発売以来、ホンダを代表するセダンであり続けてきたアコード。これまでに、120を超える国と地域で累計2,000万台が売れている。今回の新型はアコードの10世代目となる。
ホンダは新型アコードを開発するにあたり、プラットフォームを根本から見直したとのこと。低重心かつ低慣性の新世代プラットフォームでは、高品位で直感的な動的性能を実現できたとする。
ホンダはアコードをより「エモーショナル」なクルマにしようと心を砕いたという。デザイナーは開発の初期段階からアコードのテストカーに乗り、デザインを模索したそうだ。
伝統のブランドであるアコードを刷新するにあたり、ホンダは既存のオーナー(ロイヤルカスタマー)を満足させることにこだわりつつも、クルマのキャラクターを「エモーショナル」な方向に少し振ってきた。その狙いは当然、(既存客よりも相対的に)若いユーザーの開拓にある。SUVブームの真っただ中に日本デビューを果たす新型アコードは、その使命を果たせるだろうか。そのあたりも含め、新型アコードのマーケティングやプロモーションなどを担当するホンダ 日本本部 商品ブランド部 商品企画課の古川博朗主任に話を聞いてきた。
○新型「アコード」を取り巻く状況は?
マイナビニュース編集部(以下、編):新型アコードの日本導入がこのタイミングになったのは、どういう理由からですか?
古川さん(以下、古):まず、開発のタイミングがあります。日本市場では、現行モデルが2016年に発売となっていますが、大体、商品は3年のサイクルで回したりするので、それでいくと、ちょうどこのくらいの時期となります。それに、メインとなる生産工場の立ち上がりのタイミングなども見て決めました。
編:世界デビューは2年前だった新型アコードですが、発売からこれまでの間に、クルマ自体はブラッシュアップされているのでしょうか? それとも、2年前に米国で発売となったアコードが、そのまま日本にも入ってくる感じですか?
古:発売以来、アコード自体は世界でのフィードバックなども取り入れつつ磨き上げてきていますし、仕様は日本市場に合わせてあります。
編:日本仕様には、どんな違いがあるのでしょうか。
古:例えば、新型アコードは「アダプティブ・ダンパー・システム」を搭載しています。ダンパー自体は海外仕様にも付いているのですが、3モードシステムは日本独特の仕様です。
デザインにも日本特有の点があります。フロントのバンパー下の形状や、ミラーの塗装を変えているところなどです。
編:先行して販売している地域での評判、売れ行きは?
古:大きな市場は米国と中国です。私は日本市場の担当なので詳細な情報は持ち合わせていないのですが、聞くところによれば、両国ともにお客様からはご好評をいただいているとのことです。先代と比べ、より若い方の購入が多いとも聞いています。今回の新型ではデザインや骨格などを見直したので、そういった点で若い方にもご満足いただけるようになったものと理解しています。
編:現行アコードに乗っている日本のユーザーの年齢層は?
古:50代よりも上の方の比率が高いです。このクラスのセダンは、市場の特徴としても、ユーザーの年齢層は高めだといえます。
セダンのお客様は、「もともと乗っているセダンが大好き」という方が多いんです。アコードもそうですし、それは「カムリ」や「クラウン」(どちらもトヨタのクルマ)にもいえることです。アコードの開発でも、ロイヤルカスタマーの皆様にご満足いただくのは、まず、やらなければならないことでした。
ただ、その上で、年齢をあえて定義せず、感性に訴えるような魅力のあるクルマとして、ご自身の感性で物事の本質を見極めるようなお客様にも、このクルマをお届けしたいと考えています。
編:ホンダのセダンのラインアップを見ますと、ハイブリッドセダンとして、近いところに「インサイト」というクルマがあると思います。2018年12月に発売となった新型インサイトは、フルモデルチェンジを経て、以前のモデルよりも低く、伸びやかなスタイルを獲得し、よりエモーショナルなクルマになったような印象なのですが、アコードとインサイトはかぶりませんか?
古:ハイブリッドセダンという括りでは確かに同じなのですが、車格的に、インサイトは長さでいうと少し小さめのクルマです。そういう意味で、インサイトは1つ下の「シビック」に近いといえます。アコードは全長が4,900mmありますし、パワートレインで比べると、インサイトのエンジンが1.5Lであるのに対し、アコードは2.0Lです。
それともうひとつ。アコードというクルマは、日本でも世界でも、ホンダを代表するグローバルブランドであり、40年を超える長い歴史を持っています。ホンダにとっても“少し違う”存在ですし、アコードという名前がお客様に与える印象は、ホンダとしても大事にしていきたいと思います。そういった意味でも、差別化はできていると考えています。
編:SUVブームが世界的な潮流となっていると思うのですが、新しいセダンを日本で売り出すにあたり、見通しはいかがでしょうか。セダン市場のパイは小さくなっていて、その取り合いは激しくなっているという印象なのですが。
古:セダンの絶対的なパイは、おっしゃる通り小さくなっているのですが、その中で、アコードが属する「アッパーミドルセダン」というクラスの市場は、実は一昨年と昨年でそんなに変わっていません。むしろ、少し大きくなっているくらいです。こういったセダンの需要は確実にあると考えていますので、アコードもしっかり販売していきたいです。
編:アッパーミドルセダンには確固たる需要があるんですね。
古:時代によって変化はありますが、直近では年間7万5,000台くらいで、その規模感は変わっていません。
編:このクラスには、ほかにどういったクルマがあるのでしょうか。輸入車も強そうな市場ですが。
古:「カムリ」(トヨタ)、「MAZDA6」(マツダ、旧アテンザ)、「Cクラス」(メルセデス・ベンツ)、「3シリーズ」(BMW)などがあります。
編:ライバルも強い市場なんですね。北米では長年、アコードとカムリがライバル視されてきたと聞いています。そんな中、2018年にはカムリとの直接対決を制し、アコードが北米カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したそうですね。
古:北米カー・オブ・ザ・イヤーの受賞自体が喜ばしいことですが、そういった中で選んでいただけたことは、開発陣も喜んでいます。アコードのスリーク(sleek、なめらかでスマートな感じ)なデザインや、もともとの強みではありますが、走りと燃費を両立しているところが、高く評価されたと聞いています。