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FF車に長いノーズ

photo:Kazuhide Ueno(上野和秀)

日本導入に向けて準備が進んでいるホンダ新型アコードを、じっくり撮影する機会に恵まれた。

10代目となる新型は、ホンダが“上質”という言葉に正面から取り組んだモデルだ。

全長×全幅×全高:4900×1860×1450mmという3サイズ。ホイールベースは55mm延長され2830mmに。

キーとなるのは、新プラットフォームの存在。

開発の初期に、その出来を確認するテスト車両が用意できた時点で、実はデザイナー陣を集めて乗車してもらう機会を設けたという。

そのときのことを、アコード開発責任者の宮原哲也さんが明かしてくれた。

「新しいプラットフォームの運動性能(低重心・低慣性)を確認できるテスト車ができあがった際に、デザイン部門の10名ほどを、北海道の開発施設に集め、乗ってもらったのです」

「進化した走りを体現できるデザインを頼むぞ、と想いを共有することから開発をスタートさせました」

「通常FF車は、ノーズを詰め、キャビンスペースにふるのが常套策です。しかし、やはりノーズが長く見える方が格好いいのです。いかに直感的に格好よく見せるかということに、徹底的にこだわりました」

異例のテスト車試乗

10代目アコードのエクステリア・デザインを担当した森川鉄司さんもこう話している。

「デザインというのは通常、和光のデザインセンターでスケッチを書いて、モデリング、図面化をして、それを設計に渡します。それが今回はまったく違うものになりました」

細くなったAピラーのおかげで、視界は広い。インパネはすっきりしたレイアウトとし、車内空間は上質。

「テストコースで先行車に乗った瞬間、このデザインはほぼ出来上がりました。アコードに求める“スポーティさ”とはなにかが、明確になったのです。品格とスポーティ。それを先行車が教えてくれました」

走りを体験してからスタイリングを描くという異例の手順。こうして生まれた新型のデザインを詳しく見てみよう。

アコード 最大の違いは?

新型アコードは、100mm後ろに下がったAピラー、そこから力強く前に伸びるフードが印象的だ。その先端には、新しいフロントフェイスが構えている。

遠くから見ても上級サルーンと分かる堂々としたプロポーションは、日本初公開となった東京モーターショーでもひと際存在感を放っていた。

最高出力145psの2.0Lエンジンと184psのモーターによるハイブリッドを採用。WLTCモード燃費は22.8km/L。

今回改めてカメラを構えてみると、ボディサイドを伸びるキャラクターラインがよく分かった。ホンダクルマのなかでもとくに小さいRのシャープエッジで表現されているという。

そのラインが光に当たると、フェンダーの張り出し、スリークなキャビンとの一体感を生み出すのだ。

デザイナー陣は、「プレス部分から流れる光のコントラストが、フロントにめがけて艶やかに変化します。これが、今までのアコードと決定的に違う“品格”と“スポーティさ”を表現してくれます」と、強調した。

内装はどうだろう?

アコード開発責任者の宮原哲也さんが、インテリアについても語ってくれた。

「全高を15mm下げ、全幅を10mm拡大し、ワイドアンドローのスタイルを強調しました。Aピラーを約100mm後方に移動させ、ワイドな視界・長いノーズ感を実現しています」

後席は現行型に比べて足もと空間が70mm拡大。前席シートバックの形状が工夫されているため、視界の抜けがいい。

「ドライバーのヒップポイントを25mm下げたことは、スポーティで安定した運転姿勢を取れるだけでなく、クルマの重心を下げることにも大きく貢献しています」

「後席はホイールベースの延長とパッケージングの見直しによって足もと空間を70mm、膝まわり空間を50mmを拡大しました。これにより圧倒的に広い居住空間を実現しています」

荷室 クラストップに

「(新プラットフォームは)ヒトの居住性、使い勝手、運動性能のあるべき姿をゼロから追求したものです。ボディ骨格、足まわりをすべて刷新し、アコードが求める揺るぎない価値、格好いいスタイルに調和させ、世界で戦えるセダンに仕上げました」

荷室容量は、ハイブリッド・セダンとしてクラストップを謳う573L(VDA方式)。9.5インチのゴルフバックなら4本を飲み込む。

トランクは25インチのソフトスーツケースが4つも入る。現行型に比べて荷室容量は149L拡大。

これは、IPU(インテリジェント・パワー・ユニット)を小型化し、後席下に搭載するという作り込みの賜物だ。

若者が憧れる大人のスポーツセダンを目指したという新型。2モーターのハイブリッド・システム「e:HEV」とホンダセンシングを標準搭載し、ワングレード展開でこの国に導入される。

「2020年2月、待望の日本デビュー」と発表されているから、発売までそれほど長く待たされることはないだろう。