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市場の人気は得られなかった3代目

text:Alstair Clements(アラステア・クレメンツ)photo:Will Williams (ウィル・ウイリアムズ)translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
大胆なエクステリアデザインを得た3代目ビュイック・リビエラは、市場の人気が得られなかった。フロント・サスペンションはダブルウイッシュボーン式となり、コーナリング性能が向上。マスメディアの反応も悪くはなかったが、1971年のリビエラの販売台数は3万3810台と低迷する。

自動車雑誌のロードテスト誌には、「直線性能を残したまま、ハンドリングも宝石のように美しい。新しいリビエラのエンスージャストへの訴求力も高い」 と評価している。一方で鋭利なテールエンドのデザインには「リビエラのオーナーになったら、致命的な武器にもなることに注意してほしい」 と付け加えている。

3代目ビュイック・リビエラ

ビュイックのモデルレンジの中で頂点となるクルマらしく、リビエラは非常に優れた装備を備えていた。モノコックではなく、シャシーの上にボディが架装されていたが、ACスパークプラグ部門が開発した、マックス・トラックと呼ばれるシステムは注目に値する。

現在のトラクションコントロール・システムの先駆けで、小型コンピューターとセンサーで前輪と後輪との回転速度の差を検出し、ホイールスピンを検出する機能。また1972年に追加された、リアデッキのルーバーを通じて自然換気を行う「フルフロー」も賢い機能といえる。

今回のリビエラも1972年式なので、まれにリアのルーバーから排気ガスが流れ込むことがある。巨大な格子状のグリルと、巨大なバンパーの先端にゴムモールが付いていることも特徴。

7456ccのビッグブロックV8に3速AT

毎年のようにマイナーチェンジが行われていた当時、発表の翌年に加えられた変更が小さかったことは、基本的なデザインが優れていた証。環境規制が厳しくなったことに合わせてエンジンの圧縮比は下がり、排気ガスの循環システムも採用され、1971年モデルより最高出力は5ps落ちている。

一方で1972年モデルだからといって、環境性能を高める装備が付いているわけではない。標準グレードとグランスポーツとの間には10psの差があったが、V8エンジンの排気量は7456ccと巨大。1967年から続くユニットで3速ATと組み合わされる。

3代目ビュイック・リビエラ

運転感覚は、見た目から期待する通り。乗り心地は柔らかく、タイヤはこまめに振動する。路面からの入力に対しては、シトロエンのハイドロニューマチックのように効果的に吸収してくれる。極めて軽いパワーステアリングは、意外にもクイック。ロックトゥロックは3回転もない。

アメリカの自動車雑誌にはスポーティと書かれていたが、リビエラを運転するのなら、サイドウインドウを下げ、肘をドアの上に乗せて、超軽ステのステアリングに指を添えて走るのが良い。

ビニールレザーで覆われたパワー・ベンチシートは大きく、3名掛け。高級車という位置付けだったことが良く分かる。ダッシュボードはV8エンジンを反復するようにVの字にえぐられている。2ゾーンエアコンはオプションだったが、クルーズコントロールと機能的なラジオが備わる。

価値が再認識されつつある3代目

「パーソナル・ラグジュアリー」というコンセプトを見事に具現化し、所有する満足感が漂う。V8エンジンは遥か前方で静かに回転するが、おかげで沢山のガソリンを燃やしていることも忘れさせてくれる。

1974年に登場した4代目と1977年の5代目と、代を重ねるごとに小型化されたリビエラ。徐々にビュイックの下位モデルとの差も小さくなり、通算100万台以上のラインオフを迎えたリビエラは、1999年に消滅してしまう。

3代目ビュイック・リビエラ

2007年と2013年の上海モーターショーでは、ガルウイングドアのコンセプトカーを展示し、リビエラの復活を匂わせる動きもあった。だがオペルのバッジエンジニアリング状態だったビュイックには、華やかだった時代のような斬新なデザインを与えることはできなかった。

この3代目リビエラへの注目が高まっても不思議ではないように思える。今回のクルマは、2013年にアメリカ・ミシガン州から英国に持ち込まれた個体。個人のコレクションから放出された車両は、英国のオークション、ヒストリクスで2019年7月に1万6000ポンド(212万円)以上の価格で売却された。

過小評価されてきたボートテールを持つ3代目リビエラも、2代目に並ぶ評価を得るようになってきた。単なる派手な古いクルマではなく、存在の価値を主張をするクルマへと時間が変化させたのだ。ハリウッド映画で悪役がリビエラで逃げ回った時代も、もう過去の話だ。

歴代のビュイック・リビエラ

初代:1963年〜1965年

フォード・サンダーバードに対するビュイックからの回答。ネッド・ニクルスによるデザインに、6.6Lか7.0Lという大排気量のV8エンジンを搭載。360psのグランスポーツが1965年に追加された。

2代目:1966年〜1970年

リビエラとて部品共有は避けられなかった。Eボディ・プラットフォームを採用し、キャディラック・エルドラドとオールズモビル・トロネードなどと構造は共有する。ハンサムなクーペだが、初代のドラマティックさは失われた。フロントにはオプションでディスクブレーキも選べた。

3代目:1971年〜1973年3代目ビュイック・リビエラ

大胆なデザインの大きな金属成形バンパーと、スラントしたテールはあまり人気が出なかった。排気ガス規制に伴い排気量は小さくなるも、トラクションコントロールの前身システムや「フルフロー」換気システムなどを導入。リアパネルのルーバーは1972年のみで、翌年にはなくなっている。

4代目:1974年〜1976年

3代目モデルの「ランドヨット」を展開した新しいボディを持つが、車体構造は基本的に3代目と同様。GMコロネード風のボディにピラーレス・ウインドウとオペラウインドウが備わる。パワーダウンに合わせるように、販売も伸びなかった。

5代目:1977年〜1978年

ダウンサイジングの波を受けて短命に終わった5代目。GMのBボディ・プラットフォームに適合させるように、全体的に縮小されたデザインを持つが、個性は失われた。V8エンジンは5.7Lと6.6Lへ排気量が「小さく」なったが、後輪駆動は保った。

6代目:1979年〜1985年

前輪駆動となったリビエラ。この世代ではエンジンはV6になる。1982年にはコンバーチブルが、1985年にはディーゼルエンジンも追加された。このモデルはヒットし、先代よりも1979年の売上は倍増している。

7代目:1986年〜1993年

V6エンジンにモノコックボディを採用し、世界的な流れに追いついたリビエラ。デジタルダッシュボードと4輪ディスクブレーキを備え、技術的にはハイライト。しかし売上は低下し続けた。

8代目:1995年〜1999年

1年のブランクを開けて、1995年にリビエラはGMのGボディ・プラットフォームで復活。キャディラック・セビルとの共有だ。スーパーチャージャーで加給されたV6エンジンは240psを発揮し、1987年のGNX以来、最も強力なビュイックとなった。

ビュイック・リビエラ(1971年〜1973年)のスペック

価格:新車時 5143ドル(55万円)/現在 1万5000ポンド(199万円)以上
生産台数:10万1618台
全長:5545mm
全幅:2032mm
全高:1372mm
最高速度:197km/h
0-96km/h加速:9.9秒
燃費:3.7-4.5km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:2066kg
パワートレイン:V型8気筒7456cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:253ps/4000rpm
最大トルク:51.7kg-m/2800rpm
ギアボックス:3速オートマティック