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新進気鋭のロボット研究者や開発者たちが一般向けに講演する「このロボットがすごい2019」が、東京・早稲田大学で開催された「第37回 日本ロボット学会学術講演会(RSJ 2019)」最終日2019年9月7日のオープンセッションで開催された。オーガナイザーは佐世保工業高等専門学校電子制御工学科准教授の槇田諭氏。レポートする。

目次:
・「頑張るエンジニアはかっこいい」を広めるFukuokaNiwakaチーム
・宇宙ステーションでの遠隔操作ロボット実現を目指すGITAI
・安価高性能な義足提供を目指すBionicM
・ロボット自体が家庭内世界を電子化 PFNの全自動お片付けロボットを支える技術


「頑張るエンジニアはかっこいい」を広めるFukuokaNiwakaチーム

オペレータUIも改善している。重要な情報を提示するためにARを使っており、ロボットの動きを第三者視点で見たり、手元の操作などをアシストすることができる。カメラもアップデートされている。以前はロボット側に360度カメラを使っていたが、作業するときは前しか見ないので、高解像度の魚眼カメラに変えた。高解像度化によって圧倒的に作業がしやすくなったという。主に操作を担当する柴田氏はだいぶ筋肉がついたそうだ。

システム構成
現在は社内に模擬宇宙ステーションを作って、高速で研究開発ループを回している。一個一個のタスクを早く正確にやることに注力しているという。道具を両手で持ち替えたりすることも簡単にできるようになっており、週に二回は必ず実験を行い、アップデートを反映して良し悪しを判断している。作業はまず人間がやってみて、どうやるべきかをオペレータに伝えて、ロボットを動かしているという。また上半身の腕のトルクも向上しており、従来はできなかった作業の多くができるようになった。以前JAXAでできなかった作業も全部できるようになっている。まだ人間の三倍から五倍くらいの作業時間はかかるが、今後も速度アップを目指す。

■ 動画:

今後は「ANA AVATAR XPRIZE」にチャレンジする。柴田氏は最後に、GITAIは人の移動のためのコストや安全性の課題を「人間の身体を増やす」ことで解決しようとしていると述べ、この考えのもと、もっと移動にコストがかかっているのは宇宙飛行士だろうということで、宇宙がターゲットとなったと語った。同様に人を移動させるコストが高いところには作業代替のニーズがあると考えているという。
なお実際に宇宙ステーションで使うロボットの場合は、今は車輪の下半身部分を腕のようなかたちにしてハンドルを掴むなどして機体を安定させるという。

移動コストが高い領域を狙う

安価高性能な義足提供を目指すBionicM

BionicM株式会社 CEO 孫小軍氏
BionicM株式会社 CEOの孫小軍氏はロボット義足の開発について紹介した。孫氏は自らも義足ユーザーで、9歳のときに病気で右足を切断したが義足は高価なためなかなかつけられなかったが、24歳で初めて義足をつけて、雨のなかで傘をさしたり食堂でトレイを持てるようになったことで感激したと語った。一度は社会人になって義足製品化のチャンスを探ったが必ず、再び東京大学の博士課程に入り、3年間研究を行い、2018年12がtに起業した。いまはどうやったら義足ビジネスに成功して多くのユーザーに安価で良い義足を届けられるか研究開発中だという。
義足市場の99%は動力を持たない受動式義足。膝1軸だけで1000万円するなど非常に高価だが、電動義足の世界はトップ3社が寡占しており、あまり競争が起きていない。またバッテリーが切れるとまったく使えなくなってしまうといった諸課題がある。孫氏はJSTやNEDOのプロジェクトで、バネなどの弾性要素を活用したり、電気的にエネルギーを回生することでバッテリーの低下を遅らせ、動作をサポートする義足を開発中だという。

ロボット自体が家庭内世界を電子化 PFNの全自動お片付けロボットを支える技術

株式会社Preferred Networks 羽鳥潤氏
最後に株式会社Preferred Networksの羽鳥潤氏が講演し、2018年のCEATECで紹介されたお片付けロボットの技術を改めて紹介した。Preferred Networks(PFN)は深層学習を核とした頭脳集団として知られているが、最近はロボットの事業に力を入れている。

PFNの事業対象領域は交通、製造業、バイオヘルスケア、スポーツ・エンタメ、パーソナルロボット
2018年10月のCEATECでは「全自動お片付けロボット」というデモを紹介。パーソナルロボット事業への参入も合わせて発表した。ミッションは「Robots for Everyone」。様々なタスクをこなし、社会のあらゆる場所で活躍する、パーソナルコンピュータのような汎用性・使い勝手、市場の広がりを持ったロボットを実現するのが狙いだ。ロボットが社会の様々な場面に進出する未来を創造しようとしている。

■ 動画:

PFNでは様々な環境に適応にするために深層学習技術を活用しようとしている。数千、数万種類の物体、世の中のありとあらゆるものを認識できる技術は、まだ存在しない。様々なものや人を認識するためには様々な環境に一般化できる技術が必要だ。また直感的なヒューマン・ロボット・インタラクション技術もいる。たとえば話し言葉の理解やジェスチャーの理解が必要になる。

PFNの考える未来ビジョン
「全自動お片付けロボット」ではデモを超えて様々なシーンを認識させるために1000を超える物体を実際に買ってきて、家具も様々なものを設置し、照明条件もあえて様々に変化させたもので教師データを作り、ロバストな認識ができるようにした。具体的にはPFN内製の「PFDet」というモデルを使って、ロボット本体のカメラと補助的に天井に設置されたRGBカメラ4台を活用し、512台のGPUで分散訓練を行った。これによって300種類くらいの物体が認識できるようになった。ニューラルネットワークと最新のモデルを使うことで安定したデモを行うことができたという。

様々なシチュエーションの教師データを用意
またPFNのお片付けロボットシステムは、自然言語を使って、実世界の物体の検索も可能だ。羽鳥氏は、家庭内のロボットの面白さは実世界の物体が電子化されるところにあると述べた。ロボットがどこに何があるかをインデックス化するために、なくしものがなくなったり、ロボットがそれを取ってきてくれるということだけでなく、ロボット自体が家庭内世界を電子化することで外部サービスとも連携しやすくなる。ここが面白い可能性だ。また、言葉の指示だけではなくスマホやタブレットからモニターすることもできる。
今後の課題としては、外部のセンサーや計算資源を使わない処理、あらゆる物体の認識が可能な技術、様々な環境への一般化、簡単にセットアップできる仕組み、そして安全性を挙げた。そして部屋の片付けのようなシンプルなタスクであれば動くようになっていると述べた。

■ 動画:


(森山 和道)