ゲーム配信プラットフォームのSteamにおけるアダルトゲームの取り扱いから、Steamのゲームはいまだに曖昧な基準で削除されている現状にあると、技術系ニュースメディアArs Technicaが論じています。

Is Valve still censoring adult games on Steam? [Updated] | Ars Technica

https://arstechnica.com/gaming/2019/09/is-valve-still-censoring-adult-games-on-steam/

Steamを運営するValveは2018年6月に公式ブログで「違法または明らかな煽りでない限り、あらゆるゲームの配信を可能にする」と発表。これにより、それまでSteamで限定的にしか取り扱われていなかったアダルトゲームが解禁されると見込まれていました。

Valveの発表の詳細やその背景等は以下の記事を読むとよく分かります。

Steamがプラットフォーム側のコンテンツ規制を限りなくゼロに、「違法でない限り」あらゆるジャンルのゲームが配信可能に - GIGAZINE



そんな中、2019年8月に日本のアダルトゲーム「対魔忍アサギ」シリーズがSteamに登場すると発表され、実際にストアページまで開設されていました。しかし、発売を待たずして2019年9月4日に削除されてしまい、理由も明らかになっていません。

このニュースを取り上げたゲーム専門メディアOne Angry Gamerは、「削除の理由はどこにも記載されていない」と伝えていますが、日本のアニメやマンガについて取り扱っているSankaku Complexはこのゲームについて「大量のレイプシーンが含まれている」と指摘し、内容の過激さが原因ではないかとの見方を示しています。



by Mateus Campos Felipe

しかし、内容が過激なだけでは、Steamで禁止されている「違法または明らかな煽り」に該当するとはいえません。Ars Technicaのライターであるカイル・オーランド氏は「もし子どもや子どもに見えるキャラクターが登場すれば、アメリカの児童ポルノ法に違反します。しかし、『対魔忍アサギ』は大人のキャラクターが対象なので、問題ないように思えます」と指摘。違法なわけでも、論争の火種となることを狙ったわけでもない同作が削除されたのは不合理だと述べています。

2018年6月以降に削除されたり、内容の修正を余儀なくされたアダルトゲームはこれが初めてではありません。Kickstarterによる資金提供で開発がスタートしたアダルトゲームHuniePopの開発者はTwitterで「当初Valveは問題ないと請け負いましたが、その後そうではないことが明らかになりました」とツイートし、当初無修正でのリリースを予定していた新作ゲームを修正ありに切り替えることを発表しました。



また、ビジュアルノベルである「Hello,good-bye」に至っては、全年齢版だったにもかかわらず削除されてしまい、ローカライズを請け負っていたNekoNyanSoftがValveに対して抗議する事態に発展。その後同作は再販にこぎつけていますが、内容の一部は大幅にカットされているとのことです。

原作がアダルトゲームだったとはいえ、セックスシーンもない全年齢版の「Hello,good-bye」が削除された理由は不明ですが、Ars Technicaに寄せられた匿名の情報筋によると「登場人物が学校の制服を着ていたことが原因だった可能性が高い」とのこと。情報提供者は「違法でもないのに、女の子が制服を着ているだけで削除されてしまうのは問題です」と述べて、不満をあらわにしています。

オーランド氏も「Valveにアダルトコンテンツを許可する義務があるわけではありません」と認めつつも、「少なくともゲームがサービスから削除された理由を明確に伝え、許可されていないコンテンツの境界を明らかにする必要があります」と述べて、いまだに不明瞭な基準によりゲームを削除しているValveの姿勢を批判しました。