【ファンキー通信】話題の文学賞辞退作、遂に出版!

写真拡大

去る1月17日、毎年恒例の直木賞、芥川賞が発表された。今回は、直木賞を東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』、芥川賞を絲山秋子さんの『沖で待つ』が受賞。このような大きな賞を受賞すると作家の知名度は一気に上がり、書店でもその作家のコーナーが設置されたりする。作家にとっては、とても名誉なことであり、喜ばしいことのはずなのだが・・・。

実はそんな安易な考えを覆す、大変珍しい出来事が、昨年起こっていたのをご存知だろうか? それは、夏に発表された「日本ファンタジーノベル大賞」優秀賞の受賞者が賞を辞退したという話題。公募の文学賞で受賞者が辞退するのは極めて異例なことだという。

 そもそもこの「日本ファンタジーノベル大賞」は、読売新聞社・清水建設などが主催、新潮社後援で行われていた文学賞。受賞作品は、新潮社から出版される予定となっていた。しかし、出版に向けた打ち合わせの段階になって作者と新潮社側の考える出版形態や販売促進の方法で折り合いがつかず、作者本人から辞退の申し入れがあったというのだ。

 この件で一躍注目を集めたその受賞辞退作品が昨年末、販売元を変えてついに発売された。それが『愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ』。作者は、ライター・翻訳業などもこなす琴音さん(29歳)。気になるその作品の内容は・・・。

 主人公の“私”が、自殺したかつての恋人の部屋で一枚の地図を見つけるところから物語は始まる。その地図をもとにたどり着いた場所は、客の告白を聞くという奇妙な商売をしていた。その不思議な街を舞台に描かれた、“私”とそれを取り巻く人々の愛の物語―。本の帯にある「誰も書ききれなかった最後の純愛小説!」のフレーズがやけに気になって、つい手にとってしまう・・・。

 ファンタジーはちょっと、と構えてしまう人でもきっと抵抗なく読めるような読みやすさがある。受賞辞退で発売前に思わぬニュースになってしまった作品だが、この出版をきっかけにますます活躍が期待できそうだ。この機会にぜひ、この注目作品に触れてみてはいかがですか? (石橋夏江/verb)

愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ

愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ 特設サイト