日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員が勝手に決めた! 2019年上半期『おバカー・オブ・ザ・イヤー』
第1位 三菱 デリカD:5(右) マイナーチェンジが施されたのはディーゼルモデルのみ。ガソリン車は従来マスクのまま継続販売中。最上級グレードの価格は421万6320円。第2位 三菱 ekクロス(左) 最上級グレードの価格は176万5800円。オプションをテンコ盛りにすると230万円を軽く突破する。ちなみに内外装の質感は高い
ざっくり上半期に登場した新型や一部改良モデルの中から、モータージャーナリスト・小沢コージが独断と偏見と徹底試乗で、素晴らしき「おバカー」を決定。今年の前半は新型が少なかったので小規模に紹介するぜ〜!
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■三菱が1位と2位を独占したワケまたまたやって来たぜ、恒例の上半期おバカー・オブ・ザ・イヤー! 今期の象徴たるおバカーといえばやっぱし三菱でしょ。なかでも筆頭はミニバンのデリカD:5だ。
現行デリカの登場は実に2007年! つまり、発売12年目にしてフルモデルチェンジではなく、ビッグマイナーチェンジを受けたって事実に三菱の懐具合の大変さがうかがえるが、まずマイチェンとは思えない改良&イメチェン具合にビックリよ! 中から外まで「逆ギレか?」と思えるくらいの大変革。
今回はマイチェンでありつつも、三菱自慢の2.2リットルディーゼルターボを大幅ブラッシュアップ。新たに尿素対応の排ガス浄化システムを入れただけじゃない! ギアボックスを8速ATにして加速をリッチかつ静かにし、ボディや足回りを全面的に補強! ミニバンだが走ると「サルーンかよ!?」ってな上質さ。
しかし、驚きはデザイン。特に顔よ。オザワも最初に見たときはギョーテン。何しろ角張っていつつ、カピバラっぽく見えるノーズ。電気シェーバーの網刃のようなグリル模様。強引にいうならメカ動物系であり、メカ唐草模様フェイスである。
トヨタ・アルファード&ヴェルファイアを筆頭にイマドキのミニバンはゴツ顔がキモになっているが、そのなかでもデリカD:5は飛びきりの異彩を放っている。
ライト構成も通常左右切れ長部がヘッドライトになるものの、今回そこはポジションライトで、ヘッドランプは左右ホッペを潰(つぶ)したようなタテ型LEDとくる。要は眉毛と目が入れ替わったような逆ポジションと常識破り。まさに"神ってる"奇天烈(きてれつ)デザインになっているのだ。
2位もまた三菱。それもデリカの弟分的な軽ハイトSUV、eKクロスだ! コイツは正直、中身は日産との共同開発で、三菱的にさしたるトピックスはナシ。今回からエンジン設計まで日産に代わり、さほどパワフルでないノンターボと、程よいターボエンジンが備わった。
と同時に、日産自慢の半自動運転機能「プロパイロット」が「マイパイロット」としてeKクロスに導入されたのが見どころだが、本当のキモはこれまたデザイン。それも特に顔。
見ればわかる。基本は兄貴分デリカD:5と同じ両サイドからホッペを手のひらで潰したような三菱ダイナミックシールドだが、コイツに限ってはキュートさも加味。ヘッドライトなんてネコのヒゲのようで、D:5がメカカピバラ顔としたら、eKクロスは小さなリス顔。それもホッペにドングリを山ほど入れた感じ。実にかわいいメカ動物マスクを採用しているのだ!
デリカD:5とeKクロスを担当した三菱の大石聖二デザイナーは、「eKクロスで目指したのはキュートビースト。つまり、かわいい野獣です。というのも同じデザインで日産と戦っても勝ち目がない。今回はあえて土俵から外れた」と吐露している。
かつての三菱は経営危機になっても商品であるクルマにさほど緊迫感が伴わなかった。売れないパジェロを相変わらずノンキに売り続けたし、デザインも三菱らしいマニアック路線を続けた。だが今回は違う。明らかに三菱からヤバさを感じるのだ。
ほかと違う路線、いやバカになりきるまで振り切らないとダメという覚悟をオザワは感じた。ということで三菱に1位&2位を贈呈する!
第3位 日産 リーフe+ 日本が世界に誇る電気自動車。写真のリーフe+ G(FF)の価格は472万9320円。オプションを装着すると500万円以上になる
で、3位は新春1月にやっと追加された日産期待のピュアEV、リーフの電池増し増しバージョン、リーフe+(イープラス)だ。
今回、オザワはコイツを1週間借りて街の買い物などに使い、最終日には東京と静岡・修善寺間(片道約150km)を往復してみた。さすがにトータル62kWhの巨大リチウムイオン電池の効果はスゴく、フル充電状態からほぼ400kmを無充電で走れた。走れたのだが、東名下りがほぼ上り坂なせいか、修善寺到着時の走行距離の残りはまさかの160km! なんとか自宅に戻れたが......スリル満点すぎ。
実はリーフe+、いくら電池マシマシでもガソリン満タンの軽より走れないのだ。それでいてリーフe+は価格にして400万円以上もする。確かにEVの加速は面白いし、静かさも捨て難い。だが電池が増えた分、BMW、ベンツが買えるプライスなのに、軽よりも距離を走れないというEVのおバカすぎる部分が見えた!
第4位 トヨタ プリウス 写真のグレードはFFのAプレミアム。価格は317万5200円。今回のマイナーチェンジではフロントとリアまわりのデザインを変更
4位はここにきてやっと顔を変えてきた、トヨタの4代目プリウス。正直、「遅すぎでしょ!」感は否めない。実際、マイチェン効果は抜群で、直近3ヵ月は新車販売台数トップ! これまでの筆頭人気だった日産ノートや、トヨタ・アクアを超えての数値だからスゴい。
もちろん、今回から全車DCM(専用通信機)を標準装備し、プリウス初のネット常時接続を果たし、先進安全も磨いたのが販売台数に結びついているとは思う。だが、オザワ的には当初のデビルマンマスクから目ヤニみたいなぶら下がり造形がなくなったことがデカいと思う。そこに長らく気づけなかったのは、実におバカーすぎる!
第5位 スズキ スペーシアギア 写真のグレードはFFのハイブリッドXZターボ(CVT)。価格は169万5600円。エンジンはNAとターボにマイルドハイブリッドを搭載
最後、5位はスズキのスペーシアギアだ! ナニがおバカーかというと、「なんだ、この手があったのか!」と。実は軽自動車界は長らく「標準」と「カスタム」の二刀流がほとんどで、SUV風はほぼなかった。スペーシアギアがバカっていうよりも、SUV風ハイトワゴンという手があることに誰も気がつかなかった点がおバカーである。
ホンダ インサイト EX・ブラックスタイル(FF)の価格は362万8800円。約4年半のブランクを経て日本に再登場した3代目は内外装共に大人っぽい
次点1のおバカーはホンダの3代目インサイトだ。プリウスのガチンコライバルとして初代、そして2代目と戦ってきて「今回もヒリヒリした燃費バトルを挑むのか?」と思わせといて、いきなりスカシの高級化路線をチョイス! 正直、この路線変更は"戦うホンダ"としては少々疑問。元ホンダ社員のオザワ的には、おバカーっつうか、日和った感否めず!である。
ランボルギーニ ウルス 価格は問答無用の2779万9200円! 3.6秒で時速100キロに到達し、最高速は305キロ。スポーツカーがはだしで逃げ出すスペックだ
一方、次点2はランボルギーニ・ウルスだ。コチラはスペックからして大バカ。長さ5m、幅は2mを軽く超えていて、ホイールベースも3m超、車重は2.3t超である。
パワートレインは4リットルV8ツインターボで最高出力650PS! 最大トルク850Nmと世界最高レベル! いくらランボの名前がついてるからってココまでヤルか? いや、このおバカーさこそがスーパーカーである。速くてデカくてイカツイ。けど、イマドキそれ目指してる事実がイカれてますって。いや、マジで。
ということで、皆さま、年末にまたお会いしましょう。
取材・文・撮影/小沢コージ 撮影/本田雄士 週プレ編集部