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 2015年から梅毒の届け出数が急激な増加傾向にある。2017年には、年間報告数が44年ぶりに5000例を超えたほど。特に、東京都が1788例と圧倒的に多く、次いで大阪府の840例、愛知県の339例という具合に、都市部での報告例が目立っている。性感染症を専門とする獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科医・小堀善友さんはこう説明する。

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「実は、いまだに原因は明らかになっていません。急増する外国人観光客によるものではないかという説もありますが、エビデンスがないため、そういった話を根拠なく吹聴することは控えるべきでしょう」

自覚なく進行していく

 梅毒をはじめとした性感染症の感染ルートは口腔性交、肛門性交などを含む性行為。粘膜同士が接触することで感染するため、コンドームをつけているから回避できるとは限らない。

「梅毒は初期症状に気づきづらいことも特徴です。感染すると1〜3か月ほどたって、感染部位(主に局部)にしこりを感じるようになるのですが、特に痛みが発露するわけではありません。また、自然に症状がなくなってしまうので、自覚のないまま他者にうつしてしまう。しかし症状がなくなっても、病気は静かに進行していきます」(小堀さん以下同)

 性風俗店などを介すことで梅毒が広まる背景には、このような無自覚によるところが大きいのだとか。

 また、まれに温泉やサウナでも感染するという話を聞くが、「ありえない」と小堀さんは否定する。

「可能性があるとすれば、肛門周囲に病変を持つ人が座ったバスチェアやマットに、すぐさま他者が座って自身の肛門の粘膜が接触する……こういったケースは奇跡的な確率ですから、心配する必要はありません」

 梅毒が発症した場合、しこりから発疹といった症状の段階であれば、泌尿器科や皮膚科で治療することができる。ペニシリンを打つだけで寛解するのだ。

“ピンポン感染”を防いで

「たしかに梅毒は急増していますが、性感染症が増えているというわけではありません。そのほかの淋病、性器クラミジア感染症などは減少傾向にあります」

 その意外な理由とは、

「単純にセックスをする人が減っているからです。人口のボリュームゾーンの高齢化が進むとともに、セックスをする人も減少しているのです」

 だからといって対策に対して無知であることはいただけない。

「性感染症は自覚症状に乏しいものが多い。そのため知らない間にパートナーにうつしてしまうことも。一方が治しても、またパートナーからうつされる……卓球のラリーに倣って“ピンポン感染”と呼ばれるケースに発展することも珍しくありません。お互いにケアしていく必要がある」

 そして、こういった心がけは性感染症に限った話ではないと強調する。

「子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で発症するのですが、HPVは性交渉によって男性からうつされます。欧米の国では男性にもHPVワクチンの接種を推奨しています。しかし日本では、厚労省が認可していないため男性が打つことはない」

 また、HPVの中には性感染症を引き起こすタイプもある。性器や肛門周辺にイボができる尖圭コンジローマがそれだ。

「性行為によって発症する感染症を未然に防ぐには、男女ともに正しい知識と理解を持つことです。当たり前のことですが、いちばん大事なパートナーを守るため予防や早期診断を怠らないようにしてください」

《PROFILE》
小堀善友さん ◎獨協医科大学埼玉医療センター リプロダクションセンター准教授。泌尿器科医、医学博士。男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症を専門とする