●ハイブリッド専用車ということを意識させないホンダインサイト

5ドアハッチの2代目の販売終了から4年のブランクを経て、ついに発表された「新型インサイト」。

3代目は全長4675×全幅1820×全高1410mmという、余裕あるサイズで構成された3ボックスセダンになりました。

エクステリアデザインで注目すべきところは、いかにも空力に配慮したモデルという主張をすることなく、伝統的な上級サルーン的デザインを採用した点。車に詳しくない人が見たらハイブリッド専用車ということは分からないでしょう。

フロントマスクで特徴的なのは横方向にクロームバーを多く配したグリル周りです。

北米で販売されているモデルでは最上段のバーこそクロームを強調したものですが、ラジエター正面部はブラックアウトされています。

このため日本仕様の全体がメッキで覆われたスタイルというのは個性が際立つものです。

リヤで特徴的なのは奇をてらわないデザインのテールライトや、日本仕様だけの装着となる、控えめな大きさのリヤスポイラーです。

インテリアに入ってもやみくもにハイブリッドらしさや未来らしさを強調しないテイストは引き継がれています。

助手席正面のソフトパッドは内部クッション材の厚さをたっぷり2mmとするなど、コストをかけた作りになっています。

運転席正面に控えるメーターパネルには、7インチTFTパネルとアナログのスピードメーターを組み合わせた2眼式となっています。

ハイブリッドシステムのエネルギーの流れや先進運転安全支援システム・ホンダセンシングの作動に関する状況などは、メーター左・中央部に表示することが可能です。

パワーユニットはCR-Vやステップワゴンなどで動作実績のあるスポーツハイブリッド「i-MMD」となっています。

これは最⼤熱効率40.5%を達成した1.5Lエンジンと2モーターを組み合わせ、協調制御するものです。

エンジンの最高出力は109ps/6000rpm、最大トルクは13.7kgm/5000rpmです。モーターの最高出力は131psで、最大トルクは27.2kgmとなります。

このユニットによる走行の特徴は、基本的にはEVをベースにしているところ。

発進時などエンジンを使うと効率が悪い場合や、高速走行をしてる時でもバッテリー残量に余裕がある時には「EVドライブモード」になります。完全にエンジンはストップしたまま、バッテリーからの電力のみでモーター駆動します。

登坂時や加速時など、高負荷での走行時やバッテリー容量が減ってしまった時には「ハイブリッドドライブモード」に。
エンジンが発電用モーターを回しつつ走行用モーターで駆動します。

高速巡航時などエンジンのみでの走行が最適と判断した場合には「エンジンドライブモード」へと移行します。
このモードではエンジンの動力がそのままタイヤを回す仕組みになっています。ただし必要に応じてモーターが駆動をアシストすることもあります。

さて実際に乗ってみましょう。

特筆すべきなのはそのエクステリアやインテリヤから受ける印象そのままに、乗り味も「いかにもいハイブリッドらしい(モーターを意識させるような)」走りをしないところです。トルクの出方が急激ではなく自然な形になるよう調律されています。

途中でエンジンがかかる場面もあるのですが、その音は非常に小さいため意識していないと気づきません。

バッテリーでのモーター駆動、エンジンが発電しながらのモーター駆動の相互の移行がシームレスに行われるため、ドライバーはストレスなく運転することができます。

この、ある意味「エンジンをモーターのように」滑らかに制御できた背景には、ハードとソフト両面での技術進化があります。

ハード面においてはパワートレイン系ノイズを低減させるため、エンジンサイドマウントやフレームの素材・形状を工夫しました。加えてエンジン振動を受けて震えるエアコンホースなど、二次的な振動要因部分に関しても解析して対策しているのです。

ソフト面においては「加速時エンジン回転数最適制御」という対策がなされています。これはドライバーが加速したいと思ってアクセルを踏んだ際、運転者が感じる加速感とエンジン音の盛り上がりにズレが生じることでの違和感を減らそうというものです。

従来の制御ではハイブリッドドライブモード時に燃費だけを優先するため、ドライバーの加速操作とは必ずしもリンクしないエンジン回転数の上昇やエンジン音の上昇が起きていました。これを(厳密に言えば燃費が多少ロスするかもしれないけれど、それでも)人間が自然に感じるようにタイミングを調整していったのです。もちろん、一般的な遮音・吸音対策もしっかり行なっています。

こうした車体側と制御側のきめ細かい調律によって、いかにもハイブリッド的な角のあるところをそぎ取り、自然さを生み出していったのです。

こうして3代目インサイトは、どの速度領域でもアクセル操作に対して自然かつトルクフルな走りを見せてくれるのでした。

(写真・動画・文/ウナ丼)

【新型インサイト試乗】復活のインサイトは、見ても乗っても「HVらしくない」自然さが魅力(http://clicccar.com/2019/01/26/690841/)