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「休憩時間中もナースコール対応があるのですが、労働時間はどう計算されるのでしょうか」ーー。契約書に記載された夜勤の内容について、介護職の女性が悩んでいます。

弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた内容によると、女性には3時間の休憩があるものの、ナースコールに随時対応することが求められています。このほか、施設入所者がベッドから立ち上がった際の「離床センサー」への対応も必要だといいます。

実際のところ休憩時間中、対応が必要になることは少ないそうですが、「3時間のうち、どれくらいは休憩外として認めてもらえそうでしょうか」。労働問題にくわしい東城輝夫弁護士に聞きました。

●「対応が必要=即労働時間」でもない まずは実作業の時間の記録を

ーー法律では、対応が必要な「休憩」はどう扱われるのでしょう?

裁判例では、実作業に従事していない仮眠・休憩時間であっても、その時間に労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働時間に当たるとされています(最判平成14年2月28日等参照)。

相談者の女性は、ナースコールへの対応、離床センサーへの対応が必要で、おそらくこれらの対応のために施設内での待機も求められるはずです。休憩時間であっても、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価できる可能性が高いでしょう。

その場合は、休憩時間全体が労働時間に当たることになります。

ーー実際には対応の必要性がほとんど生じないという場合もあると思いますが?

裁判例では、実作業に従事する必要が生じることが皆無に等しいなど、実質的に労働契約上の役務の提供が義務付けられていないと認められる事情がある場合は、労働時間に当たらないともされています。

仮眠・休憩時間中に実作業に従事することがあったものの、その頻度が極めて僅かである等の事情を認め、労働時間に当たらないとした裁判例があります(仙台高判平成25年2月13日)。

●実際に対応した時間だけ「労働時間」とされる可能性も

ーーでは、今回のようなケースではどう判断するのでしょうか?

今回の女性は「実際のところ休憩時間中、対応が必要になることは少ない」ということです。その頻度や、他に従事する者が配置されていて、女性が対応するのは突発的、例外的な場合に限られるなどの事情によっては、実際に対応に要した時間だけ「休憩外」すなわち労働時間に当たるとされる可能性もあります。

いずれにしても、休憩時間中に対応した日時・内容を業務日報などにできる限り記載して記録に残すべきでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
東城 輝夫(とうじょう・てるお)弁護士
明治大学卒業。2001年(旧)司法試験合格。検事を経て、2009年弁護士登録。刑事事件、離婚、相続、あるいは解雇無効確認訴訟等の労働問題、企業のコンプライアンス支援、モンスタークレーマー対応などを取り扱い現在に至る。
事務所名:上野きぼう法律事務所
事務所URL:http://tojo-law.com/tl/