「地域金融機関の経営統合については、金融庁による事後的なモニタリングが有効であることを踏まえ、競争当局と金融庁が連携し......」

これは有識者による「金融仲介の改善に向けた検討会議」で話し合われた内容をまとめ、2018年4月11日に金融庁から発表された報告書、「地域金融の課題と競争のあり方」の一部だ。

読めばわからないこともないが、「みんなに読んでほしい」という思いがどこにもなさそうなこの文書。そこで今回は、かつて銀行マンだった記者が、この文書を読み解きつつ、地方銀行の現状などについて考えてみようと思う。


何回読んでも「役所の文書」という感じである

人口・企業数が減少すると...

報告書では、まず人口と企業数の減少について触れている。人も企業も少なければ、お金の貸出量も少なくなり、貸す先が減った銀行は、儲けが少なくなる。地方都市では少子高齢化がより進み、そこを商圏とする地方銀行は深刻となる。

儲けが出ない銀行は、当然のごとく経営が難しくなる。報告書によると、貸出や手数料による「本業」が赤字となっている地方銀行は、106行のうち54行(2016年度決算)。そこで地銀は、店舗削減や隣接する都道府県への進出に向かう。しかし、当然ながら隣接県にも、そこを地盤とする地銀があるため、銀行同士の「バトルロワイヤル」が起きるわけだ。そんなときに生存戦略のひとつになるのが、「経営統合」だ。

経営統合は有用だが...

銀行は何かと「固定費」がかかる。人件費はもちろん、支店の家賃、現金を数える機械やATM、出納機、コピー機、キャビネット(銀行の書類の量は異常である)......あげればキリはない。経営統合によってこれらを整理すれば、大きな固定費削減を図れる。

ただ、それだけで解決するわけではない。有識者会議の試算では、合併をして1行単独となっても、採算が取れない都道府県が23もある。

じゃあどうすればよいのか。県をまたいだ経営統合では、店舗を少なくすると利便性が損なわれるし、独占的に儲けすぎると法律に違反する......、そのバランスは重要となる。

この後にも金利の話などもしているのだが、結局のところ有識者会議は、地方銀行が地域の金融機能をきちんと維持し、質を高めていくことが大切だと結論づけている。

経営統合の直近事例は?

ここまで報告書を読み解いてきたが、実際の地銀の動きはどうなっているのか。記者が直近の例を調べてみた。

たとえば、仙台銀行(仙台市)ときらやか銀行(山形市)の経営統合に伴って12年に誕生した、じもとホールディングスの決算を見ると、経営統合から3年ほどは経常利益や純利益が順調に拡大していったものの、16年からは前期比でマイナスに。15年3月期通期で59億8600万円を記録した当期純利益は、18年3月期には30億1800万円にまで落ち込んでいる。

また、18年5月には、八千代銀行と東京都民銀行、新銀行東京の3行が合併し、きらぼし銀行(東京都港区)となった。しかし、開店初日にシステム障害により振込の入金遅延などが発生した。

ビジネスモデルが変わりつつある

筆者は1年ほど前まで、とある地銀に勤めていた。短い期間ではあったが、お局や支店長の指導を受けつつ、お客さんと仲良くやっていたのだが、「いったい地方銀行はどうなるのか」という漠然とした不安から、ネットメディアの記者に転身した次第だ。

そんな私の実感では、地銀は融資よりも、投資信託や保険商品といったリスク性商品の手数料を獲得するビジネスモデルへと移りつつある。

とはいえ、投資信託の購入手数料などを考えれば、店舗型の金融機関よりも、ネット専業のそれでやる方が安い。実店舗型の銀行の強みは「相談相手がそこにいる」ことだろう。もし、この強みすら失われてネット銀行の隆盛を許してしまえば――。地銀の明日はどっちだ。