「中国銀行」といえば、岡山の中銀? それともBank of China?
中国銀行と言えば岡山県岡山市に本店を置く地方銀行だ。この「中国」は当然ながら「中華人民共和国」の中国ではなく、山陰・山陽をあわせた中国地方の意味。一方で、中華人民共和国の銀行である中国銀行も存在し、日本に支店も展開している。つまり、国内に異なる中国銀行が2行存在しているわけだ。
すでに分かりにくくなってきているので、ここでは便宜上、岡山の中国銀行は「中銀」、中国の中国銀行は「BoC(Bank of China)」とする。この2つの中国銀行、うっかり間違えてしまう......、なんてことはあるだろうか。
何を言っているのだと思われるかもしれないが、しばらく記者の迷走にお付き合いいただきたい。
神戸支店は両行がかなり近いが......
BoCは日本国内で東京に2か所、横浜、大阪、名古屋、神戸の6支店を持つ。中銀は中国地方5県と愛媛、香川に加え、兵庫、大阪、東京に店舗を展開している。単純に同じ地域という意味では東京、大阪、兵庫に異なる中国銀行があるわけだ。
そのせいかどうかは定かではないが、中銀のサイト上にある「店舗・ATMのご案内」から東京、大阪、兵庫各地域の支店情報を表示すると、「ご案内」として
「弊行は本店が岡山県岡山市に存在する日本の銀行であり、中華人民共和国のBANK OF CHINA(中国銀行)とは関係ありません」
との記述が表示される。もちろん中国語表記付だ。少なくともこうした注意を出しておく必要があるとは認識されているのだろう。BoC側では、特に「北京に本店を置く」といった説明はない。
ちなみに中銀の本店表示は、東京支店の看板や店舗入り口にもある。大阪支店や神戸支店にも同様の表示がされているようなので、中四国地方以外の都市圏では、BoCとの識別の意味で表示していると思われる。ちなみに、店舗内では「BoCとは関係ない」といった注意などはなかった。
三越前とあって中銀以外の銀行も多数存在する(画像は東京支店の案内板, 2018年5月撮影)
東京支店の場合、中銀は中央区日本橋で三越の前に建つオフィスビル内にあるのに対し、BoCは港区赤坂、日枝神社の向かいにある自社ビルと根本的に立地が異なる。偶然目にしてよく確認せずにフラッと立ち寄ったのでもない限り、間違えることはなさそうだ。
BoCのロゴは「中國銀行」という点も中銀とは異なる(画像は東京支店の中国銀行ビルディング, 2018年5月撮影)
ただし、両行の神戸支店は同じ区内に位置し、他の支店に比べるとかなり近い。中銀は元町駅近く、BoCは三宮駅近くで1キロも離れていないのだ。さらに、中銀は神戸の中華街である南京町のすぐそばでもあり、うっかり間違えてしまう可能性が高いようにも思える。Jタウンネットは中銀に取材を試みたのだが、そうした事例を詳しく把握していないとのことで、詳細はわからなかった。
念のため、中国語ユーザーの意見も聞こうと日本在住経験のある30代の台湾人男性にも確認してみたが、「普通間違えないのでは」と冷静な答えが返ってきた。
「確かに文字の上では同じですが、お店をよく見ればロゴは違うし、中銀はわざわざ岡山とあるじゃないですか。Googleマップなどで調べてみると、どちらも『中国銀行』と出てちょっとわかりにくかったので、本当に何の情報も知らない人が間違えて銀行の前まで来てしまうことはあるかもしれないけれど、そもそも中国人観光客が日本でBoCに行くことはほとんどないと思いますよ」
もっともな話だ。中国語で説明する際に両者を区別するのが面倒になるのではないか、とも考えたが、
「その状況もレアな気もしますが、BoCの中国銀行を北京語読みにするか『中行』と呼び、中銀は『chugokuginko』と日本語読みにしたりすればいいんじゃないでしょうか」
とのこと。ちなみに中銀は海外拠点として上海事務所を有しているが、こちらはサイト上の説明によると、現地名称は「日本CHUGOKU銀行」のようだ。
今回明らかになったのは、中銀とBoCをうっかり間違えてしまう可能性は極めて低そうということだが、こうなると是非とも間違えてしまった人を探し出したくなる。読者の方々、あるいは身の回りに、「中銀に行こうと思ったらBoC入っちゃって」なんて話はないだろうか。