ソフトバンクがAIおよびIoT技術を生活インフラの安全対策に活かす取り組みを発表!

ソフトバンクとパシフィックコンサルタンツが各種IoTデバイスから取得したデータなどを組み合わせてAIで分析を行い、最適な公共インフラの設計・開発などを共同で実施することを目的とした業務提携に合意したとの共同記者会見を2017年12月14日に行いました。

2020年頃の5Gサービス開始に向け、現在ソフトバンクが注力している分野がAIとIoT技術を活かした社会インフラへの投資です。2017年には日建設計との提携によるスマートビルディング構想などを発表していますが、今回のパシフィックコンサルタンツとの提携もまた社会インフラ事業への取り組みとなります。

ソフトバンクが社会インフラ事業に率先して取り組む意図とはどこにあるのでしょうか。またそれによって人々の暮らしはどう変わっていくのでしょうか。記者会見の模様を中心に社会インフラとAIおよびIoT技術の在り方について解説します。


IoTを使ったスマートインフラという考え方


■「事後対策」では対処しきれなくなった社会インフラ
はじめに現在の社会インフラ(道路、鉄道、災害対策など)について考えてみます。現在の社会インフラは事故などによる交通渋滞や鉄道網の遅延、運行休止といったトラブルに常に見舞われています。こういったトラブルを抑制・監視するために各種情報網の整備や監視カメラの設置などが進められていますが、いずれも事後的な措置が中心で予防策はなかなか取られていないのが実状です。

災害対策においても予測や注意喚起はまだまだ十分とは言えず、得に毎年頻発するゲリラ豪雨や台風による水害、土砂崩れなど、突発的に起こる災害に対しては非常に脆い側面を見せています。

そこでソフトバンクはインフラ事業大手のパシフィックコンサルタンツと提携し、AIやIoT機器による危険予測を中心とした社会インフラの安全対策を考えたのです。


パシフィックコンサルタンツは道路網などの公共事業を中心に手がける大手企業


■ソフトバンクの狙いは「5G」の活用
AIやIoT機器などを利用すると社会インフラはどのように変わるのでしょうか。例えば、道路網ではそれまでに起こった事故や渋滞の情報を道路網各所に取り付けた監視カメラや各種センサーで当日の天候や曜日、時間、気温などとともに収集しビッグデータ化します。このデータを基に渋滞が起こる時間帯や天候、曜日などを分析し、次の渋滞予測へと活用するのです。

また鉄道網の場合、駅のホームでの人の流れや利用される頻度の高い場所などを監視カメラやSuicaのようなICカードの利用情報からビックデータ化し、人の流れがスムーズになるように構内レイアウトの変更や改築などを設計できます。

こういったビッグデータは個人を特定するものではなく、飽くまでも人々の動きを数値化したものとして記録・分析されるため、プライバシーへの影響も極力下げているのが特徴です。


都市部への人の一極集中が止まらない中、如何に人々が快適に効率よく動ける街づくりをするのかが問われる時代になっている



ビッグデータは人を個人という点ではなく大きな「流れ」として捉える



各種IoTデータを統合・分析するためにAIが活用される



ビッグデータの活用方法は災害対策にも


この渋滞予測や危険回避に力を発揮するのがソフトバンクが推し進める次世代通信規格「5G」です。

5Gは大容量・多接続・低遅延を大きな特徴としており、何万・何十万と設置されたIoT機器を繋ぎ、その情報を収集する通信インフラとして最適な性質を備えています。精細で鮮明な映像情報や大量のIoT機器から送られてくる各種センサー情報を大きな遅延なく収集することができます。

つまりソフトバンクとしては5G通信網を活用する場を他社任せにするのではなく、自社で率先して開拓し、尚且つ社会インフラという生活の基盤へ進出することで確実にシェアを確保していくのが最大の目的なのです。


ソフトバンクのめざす先は社会インフラへの自社通信網の浸透だ


■生活基盤から5Gを浸透させたいソフトバンク
「道路網や鉄道網に限らず、現在の社会インフラ事業は総合化や複合化の波が押し寄せている」と、ソフトバンク代表取締役副社長兼COOの今井康之氏は語ります。超過密化の止まらない大都市圏の街全体が1つの社会として機能するためには、交通網や建築物、そして人の動きそのものまでもが同時にコントロールされなければいけない時代へと突入しつつあります。

人々のプライバシーを守りつつもこれらを達成するのは容易ではなく、パシフィックコンサルタンツのようにインフラ事業を行う企業としてもIoTのプロフェッショナルである通信会社との連携は不可欠となります。


ソフトバンク代表取締役副社長兼COO 今井康之氏


またパシフィックコンサルタンツ代表取締役社長の高木茂知氏は「最近はITの進歩により動かなくても良い時代になってきているが、それでは街のインフラ事業を行う企業としては寂しい。もっと街に出て楽しんでもらいたい。もっと移動したくなる社会をつくりたい」とも語り、インターネット全盛の時代におけるインフラ事業の本音を見せる場面もありました。


パシフィックコンサルタンツ代表取締役社長 高木茂知氏


ソフトバンクによれば本格的なインフラ事業計画などはまだなく、現在は5G網とともにIoT機器などを準備している段階とのこと。とくにIoT機器やAIシステムの構築などは2020年に向けて今から準備しなければ十分な体制を確保できないため、その構築作業をパシフィックコンサルタンツとの連携によって進めていくとのことでした。

5Gの活用についてはソフトバンクのみならずNTTドコモやKDDIも全力の投資とアプローチを続けており、公共サービスやコンテンツビジネスなどの方面に強いNTTドコモに対し、ソフトバンクは社会インフラから攻めてきている印象です。5Gが浸透した社会はどのように変革しているでしょうか。各社の今後の取り組みから目が離せません。



記事執筆:秋吉 健


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