成田空港で記者会見を行った野球女子日本代表「マドンナジャパン」【写真:高橋昌江】

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高校生20人で臨んだアジアカップ、橘田監督「高校生の元気と笑顔に助けられた」

 今月2日から香港で開催された「第1回 BFA 女子野球アジアカップ」で優勝した野球女子日本代表「マドンナジャパン」が8日、金メダルとともに帰国した。成田空港で行われた記者会見には、代表初采配を振るった橘田恵監督、ベストナイン遊撃手を獲得した吉井温愛主将(履正社高)、DHでベストナイン入りし、大会MVPの緒方佑華(折尾愛真高)、ベストナイン投手と最優秀防御率を獲得した姫野真由(花咲徳栄高)、最優秀守備選手の金満梨々菜(開志学園高)が出席し、喜びを語った。

 会見では、5戦全勝でつかみ取った優勝カップを手にした橘田監督が、まず優勝を報告した。

「ワールドカップ5連覇中ということもあって、アジアは簡単に勝てるだろうという国内の期待もある中、圧倒的な強さを持って勝利することだけでなく、アジアの女子野球の普及に貢献できればと思って大会に挑みました。初めて高校生で挑んだということもあり、体調不良者が予想以上に出ましたが、高校生の元気と笑顔に助けられた大会になりました。優勝できて、ホッとしています」

 今回は高校生20人で初代アジア女王の座に挑戦した。橘田監督は履正社高の女子硬式野球部の監督として、普段から女子高校生たちを指導している。参加国のレベル差がある中、高校生の未熟さを理解し、メリハリをつけてチームを率いた。金満は「関西のノリで面白い方。厳しいことも言うんですけど、ベンチから監督が盛り立てて下さり、楽しく野球をやらせていただきました」と感謝した。

 第1回開催とあって、大会規定に矛盾が生じたり、雨天中止となったはずの試合が時間を遅らせて決行されたりと、数々のハプニングにも見舞われた。橘田監督は「(選手たちは)これも国際大会だから、という一言で順応してくれた。助けられた部分がたくさんありました」と、たくましく戦った選手たちを労った。選手たちが「オムライスが食べたい」「白いご飯を食べたい」と口々に話したように、食事面でも苦労があったが、1戦も落とすことなく、高校生チームながら世界ランキング1位の実力を見せつけた。

 ただ強かっただけではない。アジア全体のレベルアップを狙い、大会中にはインドやパキスタンと一緒にウォーミングアップや練習を行った。他国の選手が喜んだのはもちろんだが、日本の選手たちにとっても他国の現状を知る貴重な経験となった。緒方は「インドやパキスタンの選手など、まだまだ野球が普及しない環境の中で、1つのアウトを一生懸命にとろうとする姿や、心から野球を楽しんでいる姿を見て、改めて野球の素晴らしさを感じました」と話した。

侍U-18代表に刺激、花咲徳栄高の姫野は好投の清水に「自分も負けていられない」

 カナダで開催中の「第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」では、同じ高校生の男子が世界一を目指して戦っている。防御率0.00で最優秀防御率とベストナイン投手に選ばれた姫野は、「携帯電話のニュースなどで清水君の活躍は見ていたので、自分も負けていられないと思って、それを力に変えて頑張りました」と、同じ花咲徳栄高の清水達也の好投が刺激になったと話した。スーパーラウンドのオーストラリア戦で延長11回にサヨナラ打を放った安田尚憲と同じ履正社高の吉井主将は「同じ学校で、同じ日の丸のユニホームを着ているので、お互いにいいプレーができたらいいなと思っていました。安田君も活躍されているので、優勝していただきたいなと思います」とエールを送った。

 高校生チームでアジアNo.1の称号を手にした「マドンナジャパン」は、今後は来年開催予定のワールドカップに向けて動き出す。橘田監督は「今回は個人のポテンシャルに任せていた部分があり、攻撃のバリエーションが少なかった。そういった部分を準備していかないとワールドカップでは勝てないと思います。守備は安心できると思いますが、攻撃はバリエーションを多彩にして、どんな角度からもどんなパターンからも点を取れる準備をしていきたいと思います」と今後のプランを話した。

 選手たちにとっても、次の目標はフル代表入りだ。「時期と開催地は未定ですが、今回のメンバーから1人でも多くフル代表を目指し、入る努力をしてほしいです」と指揮官。今後の女子野球界をけん引していくことになる今回の代表メンバーとまた一緒に日の丸をーー。「マドンナジャパン」はワールドカップ6連覇に突き進む。(高橋昌江 / Masae Takahashi)