文明開化時代の日本に大きな影響をもたらした、遥かなる隣人・ポルトガル。ユーラシア大陸最西端に位置する近くて遠いこの国には、数々の日本人ゆかりの地があります。

その一つが、首都リスボンにある「サン・ロケ教会(Igreja de São Roque)」。

その原型となった礼拝堂は、1506年から1515年にかけて、マヌエル様式で建てられました。「サン・ロケ(聖ロクス)」は信者を黒死病から守ってくれると信じられており、ジョアン3世は礼拝堂のそばに黒死病で亡くなった人の墓を造らせました。

1553年、日本ではフランシスコ・ザビエルが所属していたことで知られるイエズス会がサン・ロケ礼拝堂を所有。イタリア・バロック様式の教会に建て替えました。イエズス会の本部となったサン・ロケ教会から、布教を命じられた宣教師たちが黄金の国「ジパング」へと旅立っていったのです。

1584年には、苦難の航海を経てリスボンにたどり着いた天正遣欧使節団が、宿舎として1ヵ月間ほどこの教会に滞在しました。サン・ロケ教会は、日本とポルトガルの交流史を語るうえで欠かせない存在なのです。

シンプルな外観のサン・ロケ教会。ここにそうと知らなければ、特に気にも留めずに通り過ぎてしまいそうです。ところが、一歩中に足を踏み入れれば、そこには驚くほどドラマティックな世界が待っています。

ヨーロッパの教会としては珍しく、アーチのない天井をもつ、講堂のようなシンプルな構造の教会内部。

天井一面に描かれた絵画やバルコニーに飾られた絵画の数々が、荘厳な雰囲気を醸し出しています。

さらに圧巻なのが、奥と両サイドに設けられたいくつもの礼拝堂。黄金色の彫刻で埋め尽くされた祭壇はすさまじいほどに華やかで、装飾の細やかさと美しさに言葉を失います。

執念すら感じるほどの精緻な装飾に、圧倒されずにはいられません。

なかでも、奥にあるサン・ジョアン・バプティスタの礼拝堂は、リスボン屈指の美しさを誇る礼拝堂として有名。

瑠璃、めのうといった貴石や絵画、彫像で彩られた空間は、あまりにもきらびやかで、目が離せなくなります。

16世紀にここを訪れた天正遣欧使節団は、未知の世界であったポルトガルのキリスト教芸術にどのような感想を抱いたのでしょうか。

今のようにテレビやインターネットで遠く離れた国の映像や写真を簡単に見ることなどできなかった時代。彼らの驚きや感動は並々ならぬものであったはずです。

460年も前に日本人が足跡を残したこの教会で、日本とポルトガルの交流史に思いを馳せてみませんか。

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名前 サン・ロケ教会(Igreja de São Roque)
住所 Largo Trindade Coelho, Lisboa
拝観時間 9:00〜19:00