宮西 尚生投手(市立尼崎−北海道日本ハムファイターズ)「高校入学時の球速は108キロ!それでもプロにいける器だと感じた理由」【前編】

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 プロ入り以来9年連続50試合以上の登板を継続中の日本ハム・宮西 尚生投手。昨季は史上2人目となる通算200ホールドを達成し、自身初のタイトルとなる最優秀中継ぎ投手も受賞。WBCの日本代表メンバーにも初めて選出された。そんな宮西投手はいったいどのような高校球児だったのだろうか。投手として大きく飛躍した過程を知る、恩師・竹本 修監督に話をうかがうべく、宮西投手の母校、兵庫・市立尼崎高校を訪ねた。

最速108キロの1年生に感じたプロの予感

宮西 尚生(北海道日本ハムファイターズ)

 私が市立尼崎の監督に就任した2001年春に入学してきたのが宮西でした。入学当時の宮西のストレートの最速スピードは108キロ。手の位置は今と同じようなサイドスローで、スムーズとは対極のガチャガチャっとした印象のフォーム。体も思い切り開いてて、いかにもボールが抜けてしまいそうな投げ方でした。ところが実際に投げたボールは抜けない。その「ボールをきちんと押さえ込める能力」にものすごく非凡なものを感じました。

「あの投げ方で抜けないということは相当握力が強いんだろうか?」と思い、手を見せてもらうと指がすごく長いんです。指が長いとボールをしっかりと包むことができるのでホールド力は高まります。投手としてのポテンシャルの高さを確信しました。

「もしかするとこの子、プロにいける器かもしれないな」という予感に襲われ、その予感を当時の部長に伝えたところ、返ってきたのは「いくら竹本先生のいうことでもそればかりは信じられません」。思い切り投げても108キロしか出ないわけですからね。当時はおそらく誰に言っても取り合ってもらえなかったと思います。1年生の間は115キロも出れば「おー!」という声が周囲からあがるような投手でした。

結果を問わずして確信できた生来のセンス

宮西選手の高校時代の様子を語る竹本 修監督(市立尼崎)

 宮西の1学年上には現在楽天に在籍している金刃 憲人がいました。宮西が108キロしか投げられないときに金刃は既に136キロを投じるチームのエース。次チームのエース候補として2年春、夏に宮西をベンチに入れましたが、3年生には木嶋 一博という好左腕もおり、宮西が2年生の時に公式戦で投げることはありませんでした。先日、金刃が3年生のときのスコアブックが出てきたので、懐かしいなと思いながら見返していたんです。練習試合の1試合目に金刃が先発し、2試合目で宮西が先発することが多かったのですが、金刃が3安打完封みたいな試合が大半なのに対し、宮西は3回7四死球、4回ノックアウトみたいな試合ばかり。当時の金刃との力の差が大きかったことをあらためて思い出してしまいました。

 ただし、試合がなかなか作れない状態が続いても、彼が投手としてものになる確信のようなものが感じられたのは、けん制やバント処理をまったく苦にしなかった点。普通、コントロールが定まらない投手はこれらの要素がえてして苦手なのですが、彼は普通にこなすし、内野手のようなショートスローもうまい。投げるということに対しての感覚が抜群だった。これらは指導してもなかなか身につかない部分。投手としての生来のセンスを感じずにはいられませんでした。

高校3年間で果たした33キロのスピードアップ

 金刃がいなくなった後の新チームの背番号1をつけたのは宮西。2年秋の時点でスピードは依然120キロ程度でした。フォアボールも相変わらず多かったのですが、要所をなんとか押さえてしまえる粘り強さがあった。秋は近畿大会出場まであと1勝に迫るところまで勝ち進みました。2年の冬の期間にものすごく走り込んだんですよね。ダッシュ、ポール間走、シャトルラン、長距離走…。短距離から長距離までさまざまなランメニューを交えながら、これでもかと走らせたところ、春になったら別人と思ってしまうほどにコントロールのいい投手になっていました。スピードも130キロに届くようになり、夏には最速133キロまで上がった。しかし、最後の夏はベスト8をかけた試合で報徳学園に敗れ、宮西の代の高校野球は終わってしまいました。

 ところが宮西のスピードは夏以降も上がり続け、高3の冬には141キロをマーク。最終的には33キロのスピードアップを高校3年間で彼は果たした。それでも、伸びしろはまだたっぷりとあるように感じました。進学が決まっていた関西学院大学でさらによくなっていけるだろうし、その後は、左という利点を生かして社会人野球の世界には確実にいけるだろうなと。うまくいけばプロの世界も現実味を帯びてくるかなという未来予想図を描きながら、大学へ送り出しました。

 後編では宮西選手の成長のきっかけとなった金刃憲人投手の存在や、宮西選手が超一流投手として活躍できた理由について迫っていきます。

(取材=服部 健太郎)

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