保険は3月までに入らないと損をする
■「貯蓄性保険」加入の問い合わせが急増
2017年の4月に控えている生命保険業界の保険料改定に関して、最近問い合わせが増えています。問い合わせの内容としては大きく3つあります。
1.これからお金を貯めたいが、生命保険をどのように使えば効率的か知りたい。
2.まとまった資金を生命保険に加入して運用したいが、どんなプランが我が家にあっているか考えて欲しい。
3.相続対策のために生命保険を活用したいが、どのようにプランニングすればいいか教えて欲しい。
なぜこのような問い合わせが増えるのか。それはマイナス金利によって保険料の値上げが予定されていることが原因です。
ではなぜ、マイナス金利が保険料値上げにつながるのでしょうか。それは、金利が下がると、国の発行する債券である国債の利率も下がるからです。生命保険会社は加入者から預かる保険料を、主に国債という安全な資産を対象に投資し、その金利を保険金支払いに充てています。金利が低下すると、保険会社の金利収入が減るため、貯蓄性が強い保険は、保険料を値上げしなければ保険金を支払えなくなるのです。いわゆる掛け捨てタイプの生命保険は、マイナス金利の影響が少ないと考えられます。
では、マイナス金利によって保険商品は具体的にどのように変わるのでしょうか。主に次の3つのポイントがあります。
(1)保険料の値上げ
保険会社によっては既に保険料を値上げしている場合もありますが、3月までは現在の利率のまま商品を提供する保険会社があるため、これから将来に向けての積立を検討中の方は、保険商品の選定を急いだ方が良いでしょう。
(2)利回りの低下
まとまった資金を運用するプランの利回りが低下する可能性があります。一括払いタイプの保険は、販売が中止になる場合もあるかもしれません。
(3)相続対策としての利用価値
相続において節税などの目的で使われていた保険ですが、今後も継続して販売されるかどうかは不透明な状況です。また死亡保険金に関して、従来は支払った保険料を上回る金額設定が主流でしたが、今後は保険料を下回る設定となる可能性があります。
では、これらの変化に対して皆さんはどのように対応されているのでしょうか。実際の相談事例としては、下記のようなものがあります。
■「保険嫌いの夫」を妻が説得
30代のAさん夫妻は、安定運用志向のため、資金の運用はもっぱら預貯金と生命保険。生命保険と言っても外貨建てのプランや投資信託を活用した変額プランには興味がなく、元本の安全性が高い円建ての生命保険が希望です。
保険嫌いの夫は、定年までコツコツ貯めるタイプの個人年金を希望しています。一方妻は、個人年金よりも将来時点の利回りが有利で、かつ死亡保障のある終身保険に一石二鳥の魅力を感じています。一般に女性は、預貯金より利回りがよく、死亡時には元本が増えて戻る生命保険を好む傾向があります。
夫も妻に押されて生命保険での運用に納得をしたものの、「途中解約する可能性もあるため、途中解約をすると解約金がカットされる、低解約返戻金タイプの終身保険は嫌だ」と主張。その結果、通常タイプの終身保険が落としどころとなりました。
■数百万円の相続税を生命保険で大幅減額
70代のBさん夫妻は相続税の課税対象となるご家庭。昔からの友人たちが相続トラブルに巻き込まれる話を聞いており、人ごとではないと遺言作成の準備を始めました。税理士が相続税の試算をしたところ、数百万円の相続税が発生する見込みであること、そして相続税の計算における死亡保険金の非課税枠が活用されていないことがわかりました。
相続対策で活用する生命保険は、一時払い終身保険という商品が主流です。4月以降は販売が中止になったり、保険料が値上がりしたりする可能性があるため、急いで加入を決断されました。今後は介護も含めた資金ニーズもあるため、Bさんも途中解約をしても元本に損失が発生しにくいプランを最優先で希望されました。
■駆け込み特需で商品消滅の可能性
今後、金利が上昇すると考えるのであれば、将来的には保険の予定利率もそれにあわせて上がる可能性があるため、保険に駆け込み加入する必要はありません。ただ、金利が今後どう動くかはわかりません。4月以降に保険の予定利率が今より下がるのはほぼ確実ですから、その前に、固定利率の保険に加入しておくというのは合理的な考え方です。
現在資金の預け先を検討中の方や、冬のボーナスの預け先を考えている方は、2月中に加入手続きを終わらせると安心です。3月に入ると、駆け込み特需で保険会社の受け入れ予算がなくなるなり、加入できなくなる可能性もないとは言えません。保険商品の詳細については、最寄りの保険会社の支店等に問い合わせると良いでしょう。
(高橋成壽=文)