【横浜】齋藤学はなぜ10番にこだわり残留を決断したか――新生F・マリノスはどう変わる?
齋藤学の契約更新が2月8日に正式発表され、今季を戦う陣容がようやく出揃った。複数年契約が満了となる今オフは欧州移籍への絶好のチャンスであり、実際にリストアップするクラブはドイツやスペインに複数あった。しかし条件面で折り合わず、タイムリミットに。宮崎キャンプ序盤は精神的なダメージも見え隠れしたが、今は先を見据えて走り始めている。
その証左が背番号10であろう。この変更は契約交渉の場で齋藤自らが懇願したことが起点である。横浜は短時間でさまざまな事態を想定し、多少なりともリスクを覚悟した上でゴーサインを出した。変更を願い出た理由について齋藤は「もうひとつ自分にプレッシャーをかける意味でも重要な番号」と真剣な眼差しで語った。
今後、偉大な前任者の影が脳裏をよぎることもあるはず。それは足枷ではなく、越えなければならないハードルだ。「10番をつけたからといって上手くなるわけではない」と言いつつも、この出来事がプラスに作用するように前へ進むしかない。クラブの判断を英断にするには、齋藤が中心となってチームを勝たせるしかない。
そして今オフに何かと批判の的になったフロントは、齋藤の件以外にも大胆な方策に打って出ている。例えばアジア枠を含む外国籍枠5をすべて使い切った点はとても興味深い。国籍は韓国、キュラソー、ポルトガル、マケドニア、オーストラリアとまさにグローバル。「他のチームにできないようなチャレンジをしていく」という利重孝夫チーム統括本部長の言葉に偽りはなく、シティ・フットボール・グループとの資本提携なくして今オフの編成は不可能だった。もちろん結果が出るとは限らないが、過去に前例のないチャレンジを試みていることは間違いない。
あとは指揮を執って3年目を迎えるエリク・モンバエルツ監督がどう料理を仕上げるか。チームは始動日以降、エネルギッシュなトレーニングを連日行なっている。30代の選手がわずかに4人しかいないピッチで中心となるのは20代前半の選手たちだ。彼らは常にフレッシュな状態でスピーディかつインテンシティの高い練習を実現させる。
ここ2年、不動のボランチとして存在価値を高めている喜田は「自分たちの世代がチームを引っ張るつもりでやる」と意欲を見せている。若さ特有の一本調子になる傾向こそあるが、クラブが能動的に新たな方向に舵を切ったことによる変化が早くも表われている。
齋藤が先頭に立ってチームを引っ張り、伸び盛りの若手が躍動し、外国籍選手がプラスαをもたらす。これが横浜の描く青写真だ。宮崎キャンプでは昨季から継続している戦術の浸透作業に多くの時間を割いた。新加入選手の中には適応に苦労しているプレーヤーもいるが、一方で既存戦力の底上げがなされているという見方もできるはずだ。
モンバエルツ監督は「彼ら(既存戦力)にはアドバンテージがある」と目を細めた。チーム全体の完成度は高いとは言えないが、ベースとなる戦術は多くの選手に染みついている。
未知数な部分はたしかに多い。だが、それは横浜が持つ伸びしろと捉えればいい。可能性を秘めたチームだからこそ、齋藤は他のJクラブへ移籍する選択肢がありながら、残留を決意した。生まれ変わった横浜がJリーグに新しい風を吹き込む。それに向けた胎動が少しずつ大きくなってきた。
取材・文:藤井雅彦(ジャーナリスト)
その証左が背番号10であろう。この変更は契約交渉の場で齋藤自らが懇願したことが起点である。横浜は短時間でさまざまな事態を想定し、多少なりともリスクを覚悟した上でゴーサインを出した。変更を願い出た理由について齋藤は「もうひとつ自分にプレッシャーをかける意味でも重要な番号」と真剣な眼差しで語った。
今後、偉大な前任者の影が脳裏をよぎることもあるはず。それは足枷ではなく、越えなければならないハードルだ。「10番をつけたからといって上手くなるわけではない」と言いつつも、この出来事がプラスに作用するように前へ進むしかない。クラブの判断を英断にするには、齋藤が中心となってチームを勝たせるしかない。
そして今オフに何かと批判の的になったフロントは、齋藤の件以外にも大胆な方策に打って出ている。例えばアジア枠を含む外国籍枠5をすべて使い切った点はとても興味深い。国籍は韓国、キュラソー、ポルトガル、マケドニア、オーストラリアとまさにグローバル。「他のチームにできないようなチャレンジをしていく」という利重孝夫チーム統括本部長の言葉に偽りはなく、シティ・フットボール・グループとの資本提携なくして今オフの編成は不可能だった。もちろん結果が出るとは限らないが、過去に前例のないチャレンジを試みていることは間違いない。
あとは指揮を執って3年目を迎えるエリク・モンバエルツ監督がどう料理を仕上げるか。チームは始動日以降、エネルギッシュなトレーニングを連日行なっている。30代の選手がわずかに4人しかいないピッチで中心となるのは20代前半の選手たちだ。彼らは常にフレッシュな状態でスピーディかつインテンシティの高い練習を実現させる。
ここ2年、不動のボランチとして存在価値を高めている喜田は「自分たちの世代がチームを引っ張るつもりでやる」と意欲を見せている。若さ特有の一本調子になる傾向こそあるが、クラブが能動的に新たな方向に舵を切ったことによる変化が早くも表われている。
齋藤が先頭に立ってチームを引っ張り、伸び盛りの若手が躍動し、外国籍選手がプラスαをもたらす。これが横浜の描く青写真だ。宮崎キャンプでは昨季から継続している戦術の浸透作業に多くの時間を割いた。新加入選手の中には適応に苦労しているプレーヤーもいるが、一方で既存戦力の底上げがなされているという見方もできるはずだ。
モンバエルツ監督は「彼ら(既存戦力)にはアドバンテージがある」と目を細めた。チーム全体の完成度は高いとは言えないが、ベースとなる戦術は多くの選手に染みついている。
未知数な部分はたしかに多い。だが、それは横浜が持つ伸びしろと捉えればいい。可能性を秘めたチームだからこそ、齋藤は他のJクラブへ移籍する選択肢がありながら、残留を決意した。生まれ変わった横浜がJリーグに新しい風を吹き込む。それに向けた胎動が少しずつ大きくなってきた。
取材・文:藤井雅彦(ジャーナリスト)