作家に粘着してくるストーカー対策『コミケにて「おっさんレンタル」で売り子をお願いした話』

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12月29日から、コミックマーケット91が開催される。
準備会は、夏のコミケ(C90)は合計入場者数53万人と発表していた。
参加者の大半は、マナーを守って参加している。
しかしこれだけ人数が多いと、まれに厄介な問題も起きる。

作家に粘着してくるストーカー。
脅迫してきたり、暴れることもある。住所を突き止めようとまでしてくる。れっきとした犯罪だ。
コミケで売り子をやっている時は、本人は基本その場にとどまっているため、逃げることもできない。
女性作家が被害に会うことが多く、1人でいる時間は非常に危険だ。


いづみみなみの「コミケにて「おっさんレンタル」で売り子をお願いした話」。
ストーカー被害にあった作家が、警察に届け出をした上で、C90夏コミケで対策手段としておっさんを借りた実録マンガだ。

「おっさんレンタル」はどの人でも1時間1000円。
作者はおそるおそる、おじさんをカートに入れて注文。

粘着ストーカーは、男性の売り子がいると近寄ってこない(うろうろはする)ことがある。
結果、おっさんの存在によって「いつも必ずいた変な人たちが、周囲から「消えた」」そうだ。
ちなみに、彼は強面でもなんでもない、どこにでもいる容貌だ。

ドラマ「ゆとりですがなにか」では「レンタルおじさん」という名前で登場した、この職業。
レンタルされるのは、「社会的地位の高いおっさん(社長・会長・カウンセラー・経営者・不動産投資家など)」で、面接をしっかりうけて合格している。
「女の人を目で追わない」というルールもあるそうだ。
作者がレンタルした「あなたのお手伝い人 井上」は、震災のボランティア活動を行ったり、不動産会社の経営をしている。
レンタル依頼件数は3桁超えだ。

にしても、大人1人を1時間レンタルで1000円とは、何が起きるかわからないのに、あまりにも安すぎる。
コミケで井上はこう語る。
「いろんな場所に行って、いろんな人に会えるのが楽しいですよ」
おじさんたちは、お金稼ぎでレンタルはやっていない。

人とのコミュニケーションが楽しいから。
自分で想像できないような人たちと会いたいから。
そして「おっさん」だからと後退りせず、「人生は何度だって変えられる」と感じているからやっている、と「「おっさんレンタル」日記」でCEOの西本貴信は書いている。
彼はアパレル会社を経営し、大学講師などもしている。


「話を聞くだけでお金がもらえるのか」「楽して稼いでいる」と冷水をかけられることもある。それでもレンタルを続ける。
毎週火曜日の朝8時、89歳のおばあちゃんがレンタルしてくる。一時間一緒に散歩しながら亡き旦那さんの話をするのが、依頼内容だ。

部屋の片付け、昆虫退治、写真撮影、釣り友、そしてコミケの売り子まで。
それらはあくまでも大義名分のようなもの。
おっさんレンタルを借りる人の大半は、作業も含めて「話すこと」が目的だ。

さておじさんを売り子でレンタルした作者。
「ここ数年私にとって同人イベントは、命の危険すら感じるデンジャラススポットだった」
「でも今日、おじさんがスペースにいてくれたことで、萌え絵の美少女がしこたま可愛く見える。安心して呼吸ができる」
「イベントが楽しい」

おじさんは、言う。
「コミケなんて特に、レンタルされなきゃ一生来なかったと思いますから。面白いし勉強になる!!」
本には「開運オッサン」と「うんちマン」のレンタル記録も掲載されている。