「べっぴんさん」66話。すみれ、驚愕の選択

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連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第11週「やるべきこと」第66回 12月17日(土)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎


66話はこんな話


夫のことや娘のことがおろそかになってしまっていることを気にやみ、すみれ(芳根京子)はキアリスを辞めたいと仲間に打ち明ける。

ここはどこ? 私は誰? 夫婦って何?


保育所の先生にさくら(粟野咲莉)の靴がきつくて外遊びしてないと報告を受けて、慌てて靴を新調するすみれ。キアリスの子供服は3年が目処と、良子(百田夏菜子)がお客さんの問いに答えていたにもかかわらず、
自分の娘の成長に気づけていなかった。
紀夫(永山絢斗)とも相変わらず会話が少ないまま(元からおとなしい夫婦ではあるが)。

そんなとき、ゆり(蓮佛美沙子)が、近江で聞いてきた話しをすみれにする。
「夫婦とは一蓮托生の実。死なばもろともの中なんやと思えば、考え方が“自分”やなくて、“自分ら”になる。家族ってそうやってつくっていくんやって」

この言葉が、ゆりとすみれ、それぞれの背中を押す。

すみれはキアリスを辞めることを決意。
「お願いがあるの。キアリスを辞めさせてください。お願いします。
みんな ちゃんと前を向いてる。
でもね、私はまだなの。まだ、みんなに追いついていない。紀夫さんとさくらに迷惑かけてる。
だから、許してほしい。
私がいなくてもみんななら絶対に大丈夫やと思う。
だから だから 勝手な自分勝手なことやけど、お願いします」
そう言って深く頭を下げ、涙をぽたりと落とすすみれ。

台本では「ごめんなさい」とあったが、芳根がスタッフに相談して「お願いします」に変えてもらったと、公式サイトにある。「『みんななら大丈夫』という信頼の思いをこめたかったから」(芳根)と。
「ごめんなさい」だとそれこそ自己完結だが、「お願いします」だと、みんなの意思に任せることになる。
よく考えられた台本変更だ。

高良健吾がすばらしい


夫婦って何だろうと悩み、近江にやって来たゆり。
「そういうこというときはたいてい夫婦の仲がうまくいってないときですわ。
しもた、わたしとしたことがいらんこと言うてしもた」と忠さん(曾我廼家文童)に見抜かれてしまう。
忠さん、坂東営業所の一言多い社員に似て非なるもので、さすが歳の功、うまいタイミングでゆりの気持ちに寄り添う。

こうして、一蓮托生の話を聞いたゆりは思い切って潔に、妊娠をうちあけると、ことのほか喜んでくれた。
「わしの子が わしのこが生まれるんか。
ゆり!
ありがとう!
ありがとう!
ありがとう(感極まって)」

高良健吾は、机の上に膝から飛び乗って、ゆりのお腹のところ(この位置が絶妙!)に頭をすりつけるようにしてむせび泣く。
この画が、聖母受胎(ゆりのお腹の子はマリアさまと違ってちゃんと潔の子だけども)みたいに厳かな美しい画。
潔がこんなに喜ぶのは、実は、自分のとこにいつまでも子供ができないことを気にしていたのかもしれない、と想像したりして。

「べっぴんさん」が暗くて辛気臭いと思う視聴者もいるようだが、こんなにいい画と芝居を見られるなんて
幸せではないか。主人公がわいわい元気だったら元気で、うざいという意見が出るのだし。

「べっぴんさん」のようなドラマが生まれたのは、朝ドラが時計代わりや出かける前の元気チャージのみではなくなり、もっと多様なニーズが生まれている証だ。
(木俣冬)