「べっぴんさん」55話。すみれ、社長と渡り合って大物感を出す

写真拡大

連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第10週「商いの聖地へ」第55回 12月5日(月)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:安達もじり


「人生の転機と聞くととてつもなく大きなことを想像しますが、
実は、小さな勇気と小さな決断が呼び寄せているのかもしれません」(語り/菅野美穂)

55話はこんな話


大手百貨店・大急の大島社長(伊武雅刀)に会ったすみれ(芳根京子)。思いの丈をうちあけると、社長は理解を示してくれて、まず10日間、委託販売で売ってみないかと持ちかけられた。
君枝(土村芳)は自宅の空いた2階を縫製部屋にしようしたが、義母(いしのようこ)に反対されてしまう。

社長、出来た人!


小山(夙川アトム)のいる前で、思ったことをはっきり伝えるすみれ。強い。
なんといっても、社長に「うちからの話しを蹴ったと聞きましたが」と聞かれ「蹴ったわけではありません。丁重にお断りしました」となんだか慇懃無礼な雰囲気を漂わせるほどの大物感!

小山としては。「工程を減らす提案」のことを話され、針のむしろだっただろう。参ったなー感がよく出ていた(あとのシーンで、ものすごくドアップになっていて、この俳優はいいアクセントとして役立っているのだなと思った)。
ただ、社長は小山をその場で責めず、「無駄なく合理的にそんなふうに仕事をしているうちに、あなたの感じた一番大事なことを忘れてしまったみたいだなあ」と自省する。とてもよくできた社長だ。
そのうえ、キアリス全員の顔と名前が一致している。商売人の鏡。
この、大島社長のモデルになったのは、清水雅。慶応大学出身。欧米留学経験あり。54話のレビューで紹介した小林一三の秘書をつとめたのち、昭和22年に阪急百貨店社長に就任。やがて、東宝の社長にもなる。

明美は裏切らない


大島社長に名前を呼ばれて、明美(谷村美月)が私のことまで知ってるの? というような表情をしている。谷村美月は表情の作り方が巧い。54話でも、小山がすみれに断られて帰ったあと、女子4人がうかない顔をしているとき、比較的きりっとした顔をしていて、育ってきた環境の違いを感じさせる。

谷村美月は「あさが来た」(15年)の波瑠や「ゲゲゲの女房」(10年)の向井理、「まんてん」(02年)の宮地真緒などと同じホリエージェンシー所属で、「まんてん」が女優デビュー作。演技派として知られ、映画やドラマで山椒は小粒でもピリリと辛い感じの役割を果たす。高良健吾と共演した映画「おにいちゃんのハナビ」や「ボックス!」(いずれも10年)などでは少女の生命力とみずみずしさが画面から炭酸みたいにプチプチ弾けてた。

すみれが「大事なときには4人で」と行動したこともあるし、社長も新聞に載ってない明美を知っていてくれた。これで明美もきっぱりと玉井(土井ドンペイ)の誘いを断ることができる。
「大事なんはどうやって死ぬかより、どうやって生きるかや」と玉井に語りかける。

どうなる、武と明美


明美「30分後にうちに来て」
武「え」
この誘い方、なんだかドキドキする。
まだまだピュアそうな武(中島広稀)が期待に胸ふくらませて行ってみると、明美はご飯をつくってくれていた。
美味しそうに食べる武を見て、笑顔になる明美。
武と明美は家族のいない孤独な者同士。誰かにご飯をつくることも、誰かからご飯をつくってもらうこともしばらくなかったからこそ、この場面はじんわりする。

男会に入れられた武。これで男4対女4。やっと人数が合うのか。合コンか。

今日の萌え


その1 すみれが紀夫に謝ると、
「正直言うて、仕事としてはホッとしているところもある。でも夫としてはとてつもなく心配や」
と言う紀夫。
やっぱりすみれのことをとても大事にしているんだーとわかって嬉しくなった。

その2 小山のアップの大きさと比べて、すみれたち、大急出店チームの正面アップの可憐さ(小ささ)よ。
(木俣冬)