「ウルトラマンオーブ」21話。宇宙人に操られる悲しい少女の物語
あと一ヶ月で終わってしまうのがとても残念な『ウルトラマンオーブ』。しかし、安心めされ。12月26日からAmazonプライム・ビデオで『ウルトラマンオーブ』のスピンオフ『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』全12話が始まることが発表された! さらに3月には『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』の公開も控えている。まだまだ『ウルトラマンオーブ』は終わらない!
先週放送の第21話「青いリボンの少女」には、第5話でセーラー服姿を披露して視聴者を当惑させたゼットン星人マドックとハイパーゼットンデスサイスが再び登場! 今度はどんなコスプレを披露するのかと思いきや、物哀しい侵略ファンタジーだった。
街にハイパーゼットンデスサイスが現れるたびに、青いリボンをつけた少女が必ず目撃されるという情報をキャッチしたSSPの面々。青いリボンの少女ことマーヤ(奥田佳弥子)は、腕輪を使ってハイパーゼットンデスサイスを操っていた。さっそくガイ(石黒英雄)と一戦交えるマーヤだが、突然意識を失って倒れてしまう。
マーヤは老夫婦(志賀廣太郎、服部妙子)の家でかくまわれていた。子どもがいない老夫婦は、街でたたずんでいたマーヤに声をかけて、家に住まわせていたのだ。ガイは老夫婦の家を訪れるが、マーヤはガイのことを覚えていない様子。どう見ても普通の少女だ。
しかし、ハイパーゼットンデスサイスが現れると、マーヤの様子は豹変! ガイの首を絞めて暴れ始める。ビートル隊の渋川(柳沢慎吾)がマーヤを撃とうとするが、老夫婦がその前に立ちはだかる。すると、マーヤがその正体を告白しはじめた。
マーヤの正体はゼットン星人マドックが作り出した人工生命体だった。ガイが攻撃しにくい少女の姿を借りたのだが、老夫婦が優しく接したため、動作不良、つまり本来の目的を忘れて人間らしい感情を得てしまったのだ。
ガイはオーブオリジンに変身! ハイパーゼットンデスサイスと激しい攻防を繰り広げる。『ウルトラマンオーブ』で初めて披露する空中戦が新鮮! しかし、ハイパーゼットンデスサイスの猛攻に苦戦するオーブ。一方、地上では怪獣をコントロールするマーヤを老夫婦が必死にかばっていた。老夫婦がマーヤに向かって叫ぶ。
「マーヤちゃん、思い出してほしいの! 私たちと初めて会った日のことを」
「君はひとり、空を見つめて、とてもさびしそうだった」
「それから少しずつ笑うようになった。おかげで私たちも笑顔になれたの!」
老夫婦の言葉を聞いて苦しみ出すマーヤ。怪獣を操るための人工生命体でしかなかったマーヤが、自分を作ったゼットン星人マドックの命令に反して、コントローラーの腕輪を外そうとする。腕輪を外すと、これまでの記憶がなくなり、体にダメージも残る。それでもマーヤは老夫婦の命を守り、老夫婦との思い出を大切にするため、腕輪を外してしまった。
コントロールを失ったハイパーゼットンデスサイスにトドメを刺すべく、ガイは光と闇の戦士・サンダーブレスターにフュージョンアップ! お久しぶりです、ベリアル陛下! 強敵ハイパーゼットンデスサイスをめっちゃくちゃにぶん殴り、最後はゼットシウム光線で木っ端微塵に打ち砕いてみせた。
記憶を失ったマーヤは、老夫婦の家を旅立つことに。それを見送るガイがマーヤに声をかける。
「おい、風来坊。好きなところへ行けばいい。ただ、帰る場所があると、もっといいかもな」
マーヤは宇宙人に作られた人工生命体に過ぎない。これからどのような生活を送るのかはわからないし、命だって長く続く保証もない。それでも、“帰る場所”があると思えば、強い気持ちを持っていられる。かつて悲しい記憶を抱えたままの風来坊ヒーローだったガイも、SSPという“帰る場所”を持つことができて強くなった。そのことを風来坊の先輩としてマーヤに伝えたかったのだろう。
『ウルトラマンオーブ』には毎回、過去のウルトラシリーズのサブタイトルがセリフになっている「隠れサブタイ」がある。今回は青いリボンの少女のことを調べていたジェッタ(高橋直人)が呟く「まぼろしの少女」、『ウルトラマンレオ』の45話だ。
実は「まぼろしの少女」のストーリーは「青いリボンの少女」と非常によく似ている。「まぼろしの少女」を下敷きにして作られたエピソードだと言ってもいいぐらいだ。
主人公のおゝとりゲンとゲンを慕う少年のトオルは、小学校低学年ぐらいの謎の少女と出会う。言葉を発しない少女は周囲の子どもたちからいじめられるが、トオルは円盤生物の攻撃で亡くなった妹と同じぐらいの年の少女を守り、交流を持つ。しかし、少女・眉子の正体は地球を狙う侵略者・ブラックスターのブラック指令に派遣された殺人少女だった!
青い眼のフランス人形から出る冷凍液を使って科学者たちを惨殺する眉子。眉子の正体を見抜いたゲンだが、トオルは必死に「迷子なんだ」とかばう。しかし、トオルの願いもむなしく、少女は円盤生物ブリザードに吸収され、ウルトラマンレオと戦うことに。レオの光線技で爆発するブリザード。爆発のカットに眉子の顔が重なる。それを見て涙を流すトオルは泥まみれの青い目の人形を拾い上げ、童謡「青い眼の人形」を口ずさむ。
私は言葉が分からない 迷子になったら何としょう
優しい日本の嬢ちゃんよ 仲良く遊んでやっとくれ 仲良く遊んでやっとくれ
傷ついたトオルの心を癒したのは、ゲンと家族全員を亡くした自分を受け入れてくれた美山家の人々だった――。
「青いリボンの少女」であるマーヤと「まぼろしの少女」の眉子は、いずれも侵略宇宙人の手先である。地球の人と交流を持ち、人間らしい心を持つのも一緒だ(眉子もトオルには攻撃できなかった)。キーワードとなる「青」も共通している。
大きく異なっているのはエンディングだ。『ウルトラマンオーブ』の作り手たちはマーヤに“帰る場所”を与え、優しく旅に送り出してみせた。悲劇的な死を迎えた眉子と同じ運命をたどることは避けたかったのだろう。身寄りのないトオルと美山家の人々、ガイとSSPの面々、マーヤと老夫婦は、いずれも血縁がなくても人々の“帰る場所”となっていることで共通している。やっぱり人はどこかに“帰る場所”があったほうがいい。
さて、この記事が配信されている頃には放送が終わっている第22話は「地図にないカフェ」。『ウルトラマンレオ』の円盤生物が登場するぞ! 2話続けて『レオ』ネタだ! 見逃してしまったあなたには、円谷プロダクション公式チャンネル「ウルトラチャンネル」で1話まるごと見逃し配信中です。銀河の光が我を呼ぶ!
(大山くまお)
先週放送の第21話「青いリボンの少女」には、第5話でセーラー服姿を披露して視聴者を当惑させたゼットン星人マドックとハイパーゼットンデスサイスが再び登場! 今度はどんなコスプレを披露するのかと思いきや、物哀しい侵略ファンタジーだった。
老夫婦と謎の少女・マーヤ
街にハイパーゼットンデスサイスが現れるたびに、青いリボンをつけた少女が必ず目撃されるという情報をキャッチしたSSPの面々。青いリボンの少女ことマーヤ(奥田佳弥子)は、腕輪を使ってハイパーゼットンデスサイスを操っていた。さっそくガイ(石黒英雄)と一戦交えるマーヤだが、突然意識を失って倒れてしまう。
マーヤは老夫婦(志賀廣太郎、服部妙子)の家でかくまわれていた。子どもがいない老夫婦は、街でたたずんでいたマーヤに声をかけて、家に住まわせていたのだ。ガイは老夫婦の家を訪れるが、マーヤはガイのことを覚えていない様子。どう見ても普通の少女だ。
しかし、ハイパーゼットンデスサイスが現れると、マーヤの様子は豹変! ガイの首を絞めて暴れ始める。ビートル隊の渋川(柳沢慎吾)がマーヤを撃とうとするが、老夫婦がその前に立ちはだかる。すると、マーヤがその正体を告白しはじめた。
マーヤの正体はゼットン星人マドックが作り出した人工生命体だった。ガイが攻撃しにくい少女の姿を借りたのだが、老夫婦が優しく接したため、動作不良、つまり本来の目的を忘れて人間らしい感情を得てしまったのだ。
ガイはオーブオリジンに変身! ハイパーゼットンデスサイスと激しい攻防を繰り広げる。『ウルトラマンオーブ』で初めて披露する空中戦が新鮮! しかし、ハイパーゼットンデスサイスの猛攻に苦戦するオーブ。一方、地上では怪獣をコントロールするマーヤを老夫婦が必死にかばっていた。老夫婦がマーヤに向かって叫ぶ。
「マーヤちゃん、思い出してほしいの! 私たちと初めて会った日のことを」
「君はひとり、空を見つめて、とてもさびしそうだった」
「それから少しずつ笑うようになった。おかげで私たちも笑顔になれたの!」
老夫婦の言葉を聞いて苦しみ出すマーヤ。怪獣を操るための人工生命体でしかなかったマーヤが、自分を作ったゼットン星人マドックの命令に反して、コントローラーの腕輪を外そうとする。腕輪を外すと、これまでの記憶がなくなり、体にダメージも残る。それでもマーヤは老夫婦の命を守り、老夫婦との思い出を大切にするため、腕輪を外してしまった。
コントロールを失ったハイパーゼットンデスサイスにトドメを刺すべく、ガイは光と闇の戦士・サンダーブレスターにフュージョンアップ! お久しぶりです、ベリアル陛下! 強敵ハイパーゼットンデスサイスをめっちゃくちゃにぶん殴り、最後はゼットシウム光線で木っ端微塵に打ち砕いてみせた。
記憶を失ったマーヤは、老夫婦の家を旅立つことに。それを見送るガイがマーヤに声をかける。
「おい、風来坊。好きなところへ行けばいい。ただ、帰る場所があると、もっといいかもな」
マーヤは宇宙人に作られた人工生命体に過ぎない。これからどのような生活を送るのかはわからないし、命だって長く続く保証もない。それでも、“帰る場所”があると思えば、強い気持ちを持っていられる。かつて悲しい記憶を抱えたままの風来坊ヒーローだったガイも、SSPという“帰る場所”を持つことができて強くなった。そのことを風来坊の先輩としてマーヤに伝えたかったのだろう。
『ウルトラマンレオ』の「まぼろしの少女」
『ウルトラマンオーブ』には毎回、過去のウルトラシリーズのサブタイトルがセリフになっている「隠れサブタイ」がある。今回は青いリボンの少女のことを調べていたジェッタ(高橋直人)が呟く「まぼろしの少女」、『ウルトラマンレオ』の45話だ。
実は「まぼろしの少女」のストーリーは「青いリボンの少女」と非常によく似ている。「まぼろしの少女」を下敷きにして作られたエピソードだと言ってもいいぐらいだ。
主人公のおゝとりゲンとゲンを慕う少年のトオルは、小学校低学年ぐらいの謎の少女と出会う。言葉を発しない少女は周囲の子どもたちからいじめられるが、トオルは円盤生物の攻撃で亡くなった妹と同じぐらいの年の少女を守り、交流を持つ。しかし、少女・眉子の正体は地球を狙う侵略者・ブラックスターのブラック指令に派遣された殺人少女だった!
青い眼のフランス人形から出る冷凍液を使って科学者たちを惨殺する眉子。眉子の正体を見抜いたゲンだが、トオルは必死に「迷子なんだ」とかばう。しかし、トオルの願いもむなしく、少女は円盤生物ブリザードに吸収され、ウルトラマンレオと戦うことに。レオの光線技で爆発するブリザード。爆発のカットに眉子の顔が重なる。それを見て涙を流すトオルは泥まみれの青い目の人形を拾い上げ、童謡「青い眼の人形」を口ずさむ。
私は言葉が分からない 迷子になったら何としょう
優しい日本の嬢ちゃんよ 仲良く遊んでやっとくれ 仲良く遊んでやっとくれ
傷ついたトオルの心を癒したのは、ゲンと家族全員を亡くした自分を受け入れてくれた美山家の人々だった――。
「青いリボンの少女」であるマーヤと「まぼろしの少女」の眉子は、いずれも侵略宇宙人の手先である。地球の人と交流を持ち、人間らしい心を持つのも一緒だ(眉子もトオルには攻撃できなかった)。キーワードとなる「青」も共通している。
大きく異なっているのはエンディングだ。『ウルトラマンオーブ』の作り手たちはマーヤに“帰る場所”を与え、優しく旅に送り出してみせた。悲劇的な死を迎えた眉子と同じ運命をたどることは避けたかったのだろう。身寄りのないトオルと美山家の人々、ガイとSSPの面々、マーヤと老夫婦は、いずれも血縁がなくても人々の“帰る場所”となっていることで共通している。やっぱり人はどこかに“帰る場所”があったほうがいい。
さて、この記事が配信されている頃には放送が終わっている第22話は「地図にないカフェ」。『ウルトラマンレオ』の円盤生物が登場するぞ! 2話続けて『レオ』ネタだ! 見逃してしまったあなたには、円谷プロダクション公式チャンネル「ウルトラチャンネル」で1話まるごと見逃し配信中です。銀河の光が我を呼ぶ!
(大山くまお)