フェス会場が電車になったら、音楽と風景が共鳴した。日常を非日常に「がたんごとんフェス」
クラブといったら、まばゆい照明の中で大音量の音楽が鳴り響く密室空間をイメージしがち。フェスといったら、心を踊らせながら大勢の多数のギャラリーが縦ノリで跳ね回る光景を思い浮かべます。
しかし、一方でこんなフェスもあるらしい。Ozone合同会社(神奈川県横浜市)が11月15日に開催した、その名も「がたんごとんフェス」は、会場が電車です。
出発地は都電荒川線「荒川車庫前駅」で、終点「三ノ輪橋駅」まで。都電荒川線を往復する2時間の車中がフェス会場と化すのです。
とは言え、電車内で音楽がガンガン鳴り響くわけではない。皆さん、「サイレントフェス」ってご存知ですか? これは、専用のワイヤレスヘッドホンを使って参加者全員が1つの音楽を共有するイベント。ヘッドホンを外せば無音の空間なのですが、ヘッドホンから流れ出る音楽で全員がつながり、そして盛り上がるという考え方です。
「横にいる人が本当に同じ音楽を聴いているのか、実質的に証明はできないですよね? それでもライブみたいな空間が出来上がるのは、ある種の信頼感があってこそなんです。普通の音楽体験より“つながってる感覚”が得られるのが特徴です」(Ozone合同会社・雨宮優代表)
ヘッドホンの音量を上げて音楽の世界にトリップするも良し。反対に、ヘッドホンを外して語り合うのも自由です。ペチャクチャ喋っていても、他の人はヘッドホンで音楽を聴いているのでジャマにならないし。
というわけで、そろそろ出発時間。電車へ乗り込む参加者たちに、ワイヤレスヘッドホンが渡されます。
電車の先頭車両には、DJブースが設置されている不思議。
さて、いよいよ出発です!
何度も言いますが、この電車は貸し切り車。当然、駅には停まりません。そして、時にホームにいる人たちと窓越しに視線が合ったりするのですが、明らかに我々を見て「なに、この電車?」と不思議がっている。なぜなら、乗客全員がヘッドホンを付けているから。
それどころか、路面電車なので街行く人らとすれ違うことも多い。「この人たち、何してるの?」と振り返られまくりなんです。
一方、車内は自由気まま。1車両のみなので、参加者は車内を自由に行ったり来たりします。
DJからは参加者たちへ様々な呼び掛けが行われ、それらはヘッドホンを通じて我々に届けられます。
「サイレントフェスはみんなヘッドホンを付けているので、自分の声は周りに聴こえないはずです。思いっきり歌ってもらって大丈夫です」
「今回はお一人で参加の方もいらっしゃるので、近くの知らない人とお話していただいてもいいですか? 『今日、なんで来たの?』『どこに住んでるの?』と、軽い会話でいいのでぜひ近くにいる初対面の人と会話してみてください!」
そして、何と言っても景色がいい。車内から紅葉が望めたりするし、すれ違う反対車線の電車にも遭遇します。
それらに視線をやりながら音楽に没入する参加者の姿も頻繁に確認できます。
また、「がたんごとんフェス」は選曲にも気を使っているらしい。例えば、EDMで特徴的な“ダン、ダン、ダン!”というリズムが“がたん、ごとん!”という響きと共鳴している気がするのです。
「それは、狙いました。やはり、状況とリンクするような選曲を意識しています」(雨宮代表)
電車内から望む光景が音楽とリンクするという、不思議な体験を味わうことができます。
もちろん、フェスなので踊る人も多数。
都電荒川線は1車両のみなので、一体感も格別です。とは言え、試しにヘッドホンを外してみると場は静かというこの環境。不思議というか何というか。
延々とヘッドホンを通じて音楽はプレイされ続けますが、そんななか、唐突にバースデーソング「ハッピーバースデートゥーユー」が始まりました。サプライズです。どうやら、参加者の中に誕生日を迎えた女性がいるらしい。
おめでとうございます! 参加者たちは一斉にこの女性を拍手で祝福します。
みんな、ヘッドホン付けてますが。
そして、いよいよラスト2曲。こうなると、車両の前方に人が集まって踊り狂います。結果、運転してるからではなく跳ねているから車両自体が縦揺れ!
「電車の中で歌える機会なんてなかなかないので、歌える人はどうぞ!」というDJの呼び掛けに応じ、歌ってる人もいたようです。ヘッドホンを外し、記者はちゃんと確認しました。
というわけで、終点に到着。電車の中で満喫した、2時間のフェスの旅はこれにて終了です。
「ヘッドホンを付けると、大げさじゃなく見る世界が本当に変わった気がします。普段、音楽を聴きながら電車に乗っているのとも全く違う感覚でした。何気ない日差しとかビルとかおじいちゃんおばあちゃんとか、映画の世界みたいでした」(男性・30代)
「都電荒川線に乗りながら音楽を聴く。しかも、かなり長い間乗れるという内容に惹かれて参加しました。貸し切りの電車内で、みんなが音楽を聴いてる様子を眺めているのが面白かったです(笑)」(女性・20代)
「電車を借り切ってフェスなんて普段はできないことなんで、貴重な経験になったかなと思います。ゆっくりした感じの路面電車だし。クラブだと人がワーッとなって、そういうのもいいと思うんですが、今回みたいにゆっくりした感じもいいと思います」(男性・30代)
ところで、なぜ今回は電車の中で「サイレントフェス」を開催したのでしょう?
「Twitterのアンケート機能で『どこでやったら面白い?』と集計を採ると、『電車』という回答が過半数を占めたので開催いたしました。都電荒川線はスピードがゆっくりめなので、景色がしっかり見れるというのもいいですよね」(雨宮代表)
そんなこの「がたんごとんフェス」、今後も開催が予定されているようです。
「今、熊本にお住まいの方から『こっちでもやってほしい』とお誘いを受けし、開催に動いているところです」(雨宮代表)
ちなみに「サイレントフェス」には、意外な効果があるとのこと。
「心理学には『類似性の法則』というのがあり、同じものを身に着けていたり、同じ名前だったり、同じ状態の人たちって、普通の人より仲良くなるのが早いんです。だから、サイレントフェスをきっかけにつながりができる事はよくあります。イベントの場だけでおしまいではなく、その後もコミュニティができることは多いです」(雨宮代表)
派手なライティングは用いられず、次々と様変わりする“風景”と“音楽”が非日常空間を作り出す。新鮮であり、不思議な音楽体験を今回はしてきました。
(寺西ジャジューカ)
しかし、一方でこんなフェスもあるらしい。Ozone合同会社(神奈川県横浜市)が11月15日に開催した、その名も「がたんごとんフェス」は、会場が電車です。
出発地は都電荒川線「荒川車庫前駅」で、終点「三ノ輪橋駅」まで。都電荒川線を往復する2時間の車中がフェス会場と化すのです。
「横にいる人が本当に同じ音楽を聴いているのか、実質的に証明はできないですよね? それでもライブみたいな空間が出来上がるのは、ある種の信頼感があってこそなんです。普通の音楽体験より“つながってる感覚”が得られるのが特徴です」(Ozone合同会社・雨宮優代表)
ヘッドホンの音量を上げて音楽の世界にトリップするも良し。反対に、ヘッドホンを外して語り合うのも自由です。ペチャクチャ喋っていても、他の人はヘッドホンで音楽を聴いているのでジャマにならないし。
すれ違う人が不思議顔 「この電車は何なの?」
というわけで、そろそろ出発時間。電車へ乗り込む参加者たちに、ワイヤレスヘッドホンが渡されます。
電車の先頭車両には、DJブースが設置されている不思議。
さて、いよいよ出発です!
何度も言いますが、この電車は貸し切り車。当然、駅には停まりません。そして、時にホームにいる人たちと窓越しに視線が合ったりするのですが、明らかに我々を見て「なに、この電車?」と不思議がっている。なぜなら、乗客全員がヘッドホンを付けているから。
それどころか、路面電車なので街行く人らとすれ違うことも多い。「この人たち、何してるの?」と振り返られまくりなんです。
フェス会場(電車)から望むは、移りゆく紅葉
一方、車内は自由気まま。1車両のみなので、参加者は車内を自由に行ったり来たりします。
DJからは参加者たちへ様々な呼び掛けが行われ、それらはヘッドホンを通じて我々に届けられます。
「サイレントフェスはみんなヘッドホンを付けているので、自分の声は周りに聴こえないはずです。思いっきり歌ってもらって大丈夫です」
「今回はお一人で参加の方もいらっしゃるので、近くの知らない人とお話していただいてもいいですか? 『今日、なんで来たの?』『どこに住んでるの?』と、軽い会話でいいのでぜひ近くにいる初対面の人と会話してみてください!」
そして、何と言っても景色がいい。車内から紅葉が望めたりするし、すれ違う反対車線の電車にも遭遇します。
それらに視線をやりながら音楽に没入する参加者の姿も頻繁に確認できます。
EDMのリズムと「がたんごとん」が共鳴
また、「がたんごとんフェス」は選曲にも気を使っているらしい。例えば、EDMで特徴的な“ダン、ダン、ダン!”というリズムが“がたん、ごとん!”という響きと共鳴している気がするのです。
「それは、狙いました。やはり、状況とリンクするような選曲を意識しています」(雨宮代表)
電車内から望む光景が音楽とリンクするという、不思議な体験を味わうことができます。
もちろん、フェスなので踊る人も多数。
都電荒川線は1車両のみなので、一体感も格別です。とは言え、試しにヘッドホンを外してみると場は静かというこの環境。不思議というか何というか。
ノリまくる参加者の踊りで電車が縦揺れ
延々とヘッドホンを通じて音楽はプレイされ続けますが、そんななか、唐突にバースデーソング「ハッピーバースデートゥーユー」が始まりました。サプライズです。どうやら、参加者の中に誕生日を迎えた女性がいるらしい。
おめでとうございます! 参加者たちは一斉にこの女性を拍手で祝福します。
みんな、ヘッドホン付けてますが。
そして、いよいよラスト2曲。こうなると、車両の前方に人が集まって踊り狂います。結果、運転してるからではなく跳ねているから車両自体が縦揺れ!
「電車の中で歌える機会なんてなかなかないので、歌える人はどうぞ!」というDJの呼び掛けに応じ、歌ってる人もいたようです。ヘッドホンを外し、記者はちゃんと確認しました。
というわけで、終点に到着。電車の中で満喫した、2時間のフェスの旅はこれにて終了です。
「ヘッドホンを付けると、大げさじゃなく見る世界が本当に変わった気がします。普段、音楽を聴きながら電車に乗っているのとも全く違う感覚でした。何気ない日差しとかビルとかおじいちゃんおばあちゃんとか、映画の世界みたいでした」(男性・30代)
「都電荒川線に乗りながら音楽を聴く。しかも、かなり長い間乗れるという内容に惹かれて参加しました。貸し切りの電車内で、みんなが音楽を聴いてる様子を眺めているのが面白かったです(笑)」(女性・20代)
「電車を借り切ってフェスなんて普段はできないことなんで、貴重な経験になったかなと思います。ゆっくりした感じの路面電車だし。クラブだと人がワーッとなって、そういうのもいいと思うんですが、今回みたいにゆっくりした感じもいいと思います」(男性・30代)
ところで、なぜ今回は電車の中で「サイレントフェス」を開催したのでしょう?
「Twitterのアンケート機能で『どこでやったら面白い?』と集計を採ると、『電車』という回答が過半数を占めたので開催いたしました。都電荒川線はスピードがゆっくりめなので、景色がしっかり見れるというのもいいですよね」(雨宮代表)
そんなこの「がたんごとんフェス」、今後も開催が予定されているようです。
「今、熊本にお住まいの方から『こっちでもやってほしい』とお誘いを受けし、開催に動いているところです」(雨宮代表)
ちなみに「サイレントフェス」には、意外な効果があるとのこと。
「心理学には『類似性の法則』というのがあり、同じものを身に着けていたり、同じ名前だったり、同じ状態の人たちって、普通の人より仲良くなるのが早いんです。だから、サイレントフェスをきっかけにつながりができる事はよくあります。イベントの場だけでおしまいではなく、その後もコミュニティができることは多いです」(雨宮代表)
派手なライティングは用いられず、次々と様変わりする“風景”と“音楽”が非日常空間を作り出す。新鮮であり、不思議な音楽体験を今回はしてきました。
(寺西ジャジューカ)