常子はホットケーキを星野に取っておかなかった。つまりそこにラブはない「とと姉ちゃん」125話

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連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第21週「常子、子供たちの面倒をみる」第125話 8月26日(金)放送より。 
脚本:西田征史 演出:安藤大祐


「とと姉ちゃん」がついにクランクアップしたそうだ。最終週にはとと(西島秀俊)も登場するらしく、どんなふうに収束するか期待が高まる。そう、もう、最終回まで30回切っているのだ。ここから先あっという間だろう。
撮影はもう終わってしまったが、編集作業などがまだあると思うので、余計なお世話だが、エピソードの発端と結果の間が抜け落ちていることが多いこのドラマに対して、こうしたらどうだろうという提案を、この記事の最後に書いておいた。

その前にまず

常子と星野が結ばれない理由を考えた


目下、常子(高畑充希)が15年ぶりに再会した初恋の人・星野(坂口健太郎)が妻を亡くして独り身(ただし子ども持ち)で登場し、恋や結婚よりも仕事をとったこれまでの人生から新たなフェイズに入るか? というドキドキ展開になっている「とと姉ちゃん」。

初恋の人が、結婚していたとはいえ、既に妻は亡くなっていて、もれなく、可愛くて自分にたやすくなついてくれる子どもがついてくる状況。長らく独身を貫いてきた身としては、稀に見る好物件だ。
だが、125回を観て、常子はその好物件に手を出さないとふんだ。
それはホットケーキのエピソードに象徴されている。

仕事から帰ってきた星野に、今晩は青葉がホットケーキを作ったと明るく語る常子。
辛い時ほど明るく振る舞う人だったから、どうかしたか? 僕でよければ(悩みを)おっしゃってください、と星野は問いかける。
肉親の美子よりもわかってくれていて、デリケートに語りかけてくれる、そんなところも本当に素敵な星野。

だが常子、なぜ、そんな星野にホットケーキを残しておかないのか? 
現代のようにレンジでチンもできないし、冷めたら不味いのかもしれないが、仕事で疲れて、でも走って帰ってきた星野にお茶しか出さないなんて!

ふつうなら、冷めていたとしても、愛娘青葉がはじめてつくったホットケーキをひとかけらでも食べて、ほっこりするふたりというのがラブストーリーのドキドキだろう。いやホームドラマでもそうだろう。それをあえて描かないのには理由があるとしか思えない。

つまり、常子にその気がないということだ。
常子は星野とラブストーリーもホームドラマも作る気はないのだ。

傍から見たら、復縁して良さそうな仲の良さに思えるが、15年前、あれだけ思い詰めて別れたふたりには、もう一度あの頃に戻ることはない。それはきっとふたりにしかわからないことなのだろう。

もっともこれがオリジナルドラマだったら復縁させてしまうと思う。もしくは、花山(唐沢寿明)との三角関係にするだろう。それが常道だ。
ところが、モチーフの人物が生涯独身だったこと、当然、花山に相当する人物とも恋愛関係になっていないこと、その縛りが図らずして、従来の画一的な恋愛、結婚ドラマの流れから外れた人間関係を描く可能性を広げたのだ。
これを大いに生かして、今後のドラマにおける人間関係のパターンを打破していってほしい。

今日のほとほと姉ちゃん


会社の同僚・片瀬(黒田大輔)が、再婚を否定する星野に「カナコさんに申し訳ないと思っているのか」と聞く。そこは「忘れられないのか」って聞いてほしかった。他人はいかにドライかってことを描きたいのかもしれないけれど。

今日のほとほと姉ちゃん その2


恋と結婚の話のほかに、仕事の話。
星野に仕事の悩みを相談する常子。だが、そこは、花山にまず問いかけようよ。星野に頼るのはその後だろう。
職種の違う星野には話しても意味がわからないと思う。仕事を真剣にやればやるほど、仕事の本質的な話は部外者にはしないものだ。

星野に慰められて元気になった常子は、ちとせ製作所に行って、社長(螢雪次朗)に、安全でいいトースターを作る決意をさせる。毎度おなじみ、翌日解決。

ここで提案!

会議も作業も悩みもすぐに結論に達しても構いませんので、「シン・ゴジラ」のように「中略」テロップを入れてはどうだろうか。
(木俣冬)