【独占レポート】オンラインを活用したブランディング実践テクニック(前編)―Micro-Momentsと動画広告の活用

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Google Partner代理店各社からおよそ230名が参加した本セミナー。「オンラインを活用したブランディング施策」をテーマに、最新のマーケティング理論から事例、広告、制作ノウハウまで、非常に示唆に富んだ4つのセッションが展開されました。

プログラム

  • Session1 Micro-Momentsを活かして認知を獲得し検討を促す
  • Session2 マルチスクリーン時代におけるブランディング広告の提案
  • Session3 動画コンテンツを活用したマーケティング課題解決へのチャレンジ
         〜再生回数からマーケティングROIへのテイクオフ〜
  • Session4 成功に導く動画制作の考え方

4時間に及んだセミナーから、movieTIMES読者の皆さまに役立つポイントを厳選してご紹介します。前編の今回はSession1とSession2の模様です。

Micro-Momentsを作り出すブランディング施策

トップバッターとして登壇したのはグーグル株式会社Brand Solution Expertの中村全信氏。Googleが提唱する「Micro-Moments(マイクロ・モーメント)」の考え方と、具体的な取り組みにおけるヒントが紹介されました。

Micro-Moments=生活者の具体的なニーズの発生

Micro-Momentsとは、生活者が持つ「〜したい」「〜を見たい」「〜を知りたい」といった具体的なニーズがもっとも高まった瞬間のこと(参考記事)。モバイルデバイスが普及した今、生活者は何かを知りたいと思った瞬間、すぐにスマートフォンを手に取り、インターネットにアクセスするようになりました。そのため、具体的なニーズが発生しているMicro-Momentsを捉え、適切なメッセージや情報を届けて検討や購入を促すことがマーケティングの1つの視点として重要になっているのです。

そして、このMicro-Momentsで選ばれる存在になるために必要なのがブランディング施策だと中村氏は解説します。

「従来のオンライン広告のようにファネル下部でコンバージョン重視のキャンペーンを続けていくと、CV数もCPAも限界に近づいていきます。そのため、ファネルの上〜中段にいる生活者にアプローチして、ファネル下部に連れて来ないといけません。つまり、例えば生活者が旅行に行きたいと思った瞬間に、最初の純粋想起として具体的な旅行先や商品名を頭に浮かべてもらうことが必要であり、そのためには、Micro-Momentsに入る前の段階から生活者の認知を獲得しておくことが非常に重要なのです。そしてそこで有効なのがオンライン動画などのブランディング施策だと我々は考えています」

鍵は「リーチ×コンテクスト×インパクト」

では、Micro-Momentsを捉えるマーケティングは具体的にどのように実施すればよいのでしょうか? 中村氏は「リーチ」「コンテクスト」「インパクト」という3つのポイントを挙げました。

まず1つ目のリーチについて。特定のターゲット層の特定のMicro-Momentsを捉えるためには、ある程度の規模の母数が必要です。例えば日本のインターネットユーザーの9割以上にリーチできるGoogleディスプレイネットワークや、1日約1600万UUにリーチできるYouTubeのモバイル ビデオ マストヘッド(トップ画面の広告メニュー)を活用すれば、十分にセグメントしても一定数のターゲットにアプローチすることが可能です。

2つ目のコンテクストは、ターティング、コンテンツ、地域、配信を組み合わせ、最適な生活者に最適なメッセージを届けることを指しています。「Micro-Momentsと関連性の高いメッセージを発信するほど、ブランド想起や態度変容を期待できます」と中村氏。

そして3つ目がインパクトです。いくら大規模なリーチを確保し、しっかりとしたコンテクストで配信しても、広告を見られていなければ意味がありません。昨今、ビューアビリティが広告主にとっての懸念材料の1つとなっていますが、Googleが提供しているvCPM課金は100%ビューアビリティを保証することでこの課題をクリアしています。

そしてもう1つ、インパクトの面で重要となるのが、ターゲットが自ら進んで視聴したくなるコンテンツを用意することです。「TrueViewのような選択型の広告は、強制視聴型の広告に比べて態度変容が75%向上したという調査結果もあります。広告であれコンテンツであれ、ターゲット自らに選んで見てもらうためにメッセージを出し分けることが大切です」(中村氏)。

そこでコンテンツ設計の考え方として「HHH戦略」が紹介されました(参考記事)。メインターゲットのみならず、数多くの人々に見てもらえるようなHeroコンテンツだけでなく、メインターゲットである生活者の興味関心や具体的ニーズに応えるHub/HelpコンテンツもMicro-Momentsに応える上で非常に重要なのです。

効果測定では具体的な数値目標を設定

最後に効果測定の重要性について、中村氏は「マーケティングの目的は、広告がどれだけの人に届いたかではなく、その広告を通してどれだけ態度変容したか、実際に購入したか、ということです。つまり動画の再生回数だけでなく、エンゲージメントや購入意向にどれだけ寄与しているのかをきちんと測定することが必要」との考えを示しました。

認知獲得が目的であれば「広告想起率」や「ブランド認知率」が、コンバージョン目的であれば「購入意向度」や「実際のコンバージョン数」などが効果指標となります。

「効果測定に関しては、ただ数値を見るのではなく、仮説を持って臨んでください」と提案する中村氏。
「結果を見ても、それが良いのか悪いのか判断がつかなければ意味がありません。例えば、ブランド認知度20%向上を目標にクリエイティブやターゲティングを決め、きちんと結果を出せたらそこに予算を集中できますし、上手くいかなければクリエイティブの要素やターゲティング設定を検証することができます。そうしたPDCAの取り組みがマーケティングゴールを達成する上で不可欠なのです」

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効率的に認知拡大を図る広告配信テクニック

続いてのセッションでは、Google インダストリーマネージャー 定元邦浩氏が登壇。ブランディング領域において効果的に動画広告を活用する際のテクニックが披露されました。
ポイントは「最大リーチ」「リーセンシー」の2つです。

1. メディアを横断したリーチの最大化

ブランディングにおけるリーチ規模の必要性は前セッションでGoogle中村氏から説明があった通りです。そこでまず、広告を使ってリーチを最大限に伸ばす方法の一例として、メディアを横断した配信が紹介されました。

例えばキャンペーン初日にYouTubeマストヘッドという広告メニューを使って瞬間的に大規模なリーチを図ります。その際、ここで動画を視聴した人のリマーケティングリストを作っておきます。
そして翌日からは、このリマーケティングリスト以外のユーザーにTrueViewで配信すると純粋にリーチが広がります。ここでまた動画視聴ユーザーのリマーケティングリストを作成し、最後にそもそもYouTubeを使っていない人に向けて、Googleディスプレイネットワークを配信すれば、非常に効率的にリーチを拡大させることができます。

定元氏は、投じた予算に対してどれだけのリーチを実現できたのかをきちんと追っていくことが重要だと強調。「さまざまなパターンで配信し、それぞれの予算効率を検証していけば、ターゲット層における最大リーチの効率的な取り方が見えてくるはずです。もちろん調査にはある程度の費用がかかりますが、配信しっぱなし、というのはもうやめて、広告配信においても必ず何かしらの効果測定をしていきましょう」と説きました。

2. リーセンシー目的の広告でブランドの存在を思い出させる

「リーセンシー」とは直前に接触した広告が購買行動に影響を与える効果(定義:日本民間放送連盟)を意味します。
動画広告やテレビCMを使ってキャンペーンを展開すれば認知度を一時的に上げることはできますが、その期間が終われば日々忘れられていくのも事実です。「エピングハウスの忘却曲線」によれば、人は1日経てば74%を忘れてしまうそうです。

しかしその一方で、日用品のような消費財は毎日ニーズが発生する可能性があります。そこで、ブランドを忘れられないように継続的に接触を図り、日々のブランド想起の可能性を高めるのが、リーセンシー目的の広告です。

「その一例が"冬は味ポン"です。味ポンは既に誰もが知るところであり、冬に味ポンという存在を思い出してもらうことが目的であれば、このようなメッセージで十分なのです」(定元氏)

ただし、リーセンシーはメインの広告目的ではないため、もともと広告予算がなく、高いコスト効率が求められます。それを解決する1つのテクニックが定元氏から紹介されました。「5秒程度の短尺動画広告」です。

リーセンシーの広告はブランドを思い出させることが目的なので、商品名とキャッチフレーズを入れて5秒程度で十分です。これをTrueViewで配信すると、5秒まではスキップできないため視聴率が非常に高くなります。すると品質スコアが高くなり、配信単価が大幅に安くなるのです。

「メッセージを短尺に圧縮することでコスト効率が大きく向上する可能性があるのです。今はマイクロ動画が流行り、スタンプ1つで感情を伝える時代です。ブランディング目的ならきちんとメッセージを伝える必要がありますが、予算の限られたリーセンシー目的の広告としては短尺動画もひとつの有効な手段です」(定元氏)

スマートフォンの普及を背景としたMicro-Momentsという考え方にはこれまでmovieTIMESも注目してきましたが、Micro-Momentsを作り出すためのブランディングの必要性というのは新たな気づきでした。

また、ブランディング目的の動画広告といえば、ブランドメッセージを丁寧に伝えるクリエイティブを思い浮かべる読者の方も多いと思いますが、Micro-Momentsを捉えるためのリマインドを目的とした短尺動画広告というアイデアには思わず頷いてしまいました。

後編では、ブランディング領域における動画制作の考え方を学べるセッションと質疑応答の模様をお届けします。