水没したハイブリッド車や電気自動車には触らないこと 高圧蓄電池の搭載で漏電、発火の恐れもある
台風18号の影響による大雨の影響で茨城県常総市を流れる鬼怒川の堤防が決壊して、あたり一面が水没した。また、最近はゲリラ豪雨などで道路が冠水するケースが少なくなく、テレビ画面からは、その場を動けなくなって取り残されたクルマを見ることも増えた。
日本自動車工業会では、クルマが浸水・冠水した状態ではエンジンの吸気系に水が入っている可能性があり、その状態でエンジンをかけるとエンジンを壊してしまう恐れがある。さらには電気系統がショートすることで火災が発生する恐れがある、と警告している。
エンジンをかけると発火する恐れがある!
鬼怒川での水害を受けて、国土交通省が「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーへの注意事項について」呼びかけたのは2015年9月16日。「水に浸った車両は、外観上問題がなさそうな状態でも、電気系統のショートなどにより、車両火災が発生するおそれがあります」として、対処方法を示した。
それによると、
(1)自分でエンジンをかけない(火災のほか、エンジン破損などのトラブルの原因になる恐れがある)。
(2)使用したい場合には、販売店もしくは最寄りの整備工場に相談すること。とくに、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)は、高電圧のバッテリーを搭載しているので、むやみに触らないこと。
(3)使用するまでのあいだ、電気系統の腐食によって発火する恐れがあるので、バッテリーのマイナス側のターミナルを外しておくこと。また、外したターミナルがバッテリーと接触しないように措置(ガムテープなどで覆う)すること。
としている。
日本自動車連盟(JAF)が過去の災害救援の経験から「被災による冠水車両の取り扱い」について、同じような内容で注意を呼びかけているほか、日本自動車工業会も「通行の妨げにならないように、どうしても浸水・冠水した車両を移動させる必要がある場合には、シフトレバーをニュートラルにして、押して移動させるように」と促している。
最近は町を走るHV車やPHV(プラグイン・ハイブリッド)車、EV車も増えてきた。HV車やEV車などが水害に遭った場合、むやみに触れると感電する危険があることも示唆している。
たしかに、HV車やEV車などは、ガソリン車に積まれているバッテリーよりもはるかに高圧の畜電池を搭載している。発火はもちろん、漏電に気づかずに触れることで深刻な感電事故を起こすことにもなりかねない。
PRIUSやAQUAなどのHV車を販売するトヨタ自動車は、HV車などの水害時の対応について、「冠水したHV車は何があるかわかりません。危ないので決して触らず、近くの販売店などにご相談をお願いします。不用意に冠水したHV車両には近づかないでください」と、警鐘を鳴らしている。
ホームページでも、「水没したHV車は、パワー(エンジン)スイッチをONにしないこと」や「PHV車などでは感電や漏電を防止するため、濡れた手でプラグなどを抜き差ししないこと。プラグや充電コネクタを濡らさないこと」などと注意喚起している。
「とりあえず動くか試そうとか思っちゃうとヤバい?」
「とりあえず動くか試そうとか思っちゃうとヤバいのか?」
といった声や、
「いらんこと言う素人が居ると思うけど、無視して車屋さんにまかせて下さい」
「電送系とかコンピューターダメになるとかエンジン焼きつくとかはもちろんなんだけど、『ショート→発熱→発火』がコワイのです。何があるかわからんのですよ」
「水没したハイブリッドカー、たぶん完全放電してると思うから近づくなっ!!」
などと警告する声が多い。
なかには、
「水没車の火災、3.11のとき数日〜数週間後に自然発火したように見える事例が散見されました。修理手配の前にまずバッテリーの切り離し作業を済ませてほしい」
といった東日本大震災を経験したと思われる人からも注意を呼びかける声が寄せられた。
とはいえ、自動車メーカーはHV車の発売前に水害などの被災時を想定してテストを繰り返し、クルマづくりを進めてきたはずだ。
トヨタの「レスキュー時の取り扱い」によると、「HV車、PHV車、EV車、燃料電池車(FCV)など、高電圧バッテリーを搭載した車両が部分的または完全に水没した場合、車体と高圧電回路は絶縁されているため、車体を触っても感電の心配はありません」としている。
高電圧バッテリーや高電圧ケーブルなどに直に触れない限りは大丈夫なようだが、念のため絶縁手袋などの保護具を着用したほうがいいだろう。